第十六章「雀軍師」
どうも、アフロ月です。
好きな哲学はテセウスの船です。
白桃編
第十六章「雀軍師」
「おはようございます。」
朝。
夜街の街路樹。昨日の部屋で、イツキは挨拶をした。
相手は黒猫だ。
相変わらず髪が乱れており、気だるそうな目をしている。
「おはようございます、イツキさん。珈琲でよろしいですか?」
「あっ、お願いします。」
「では少々お待ちください。」
イツキは近くの椅子に座った。
しばらくして、黒猫はカップが2つ乗った盆を持って歩いてきた。
「どうぞ。イツキさん。」
「ありがとうございます。」
内一つのカップを、イツキの前に置いた。
喧騒も無い静かな朝。
女性と二人きりというのも悪くない。
……悪くはないが苦手だ。
イツキは珈琲を一口啜った。
「……あ、美味しい。」
「そうですか?」
「はい。」
黒猫も残るカップの珈琲を啜る。
カップを置いて数秒、黒猫は苦しみだした。
「うっ……!ごほっ、ごほっ!!」
「黒猫さん!?大丈夫ですか!?」
黒猫がその場に崩れる。
イツキは慌てて駆け寄った。
「黒猫さん!?」
「こっちが……毒……でしたか……この勝負…………あなたの勝ちです……。」
「は?毒!?アンタ何やってんの!?……いやそうじゃなくて、誰か呼んできますから!」
「冗談です。」
と、黒猫はいつもの調子に戻った。
「……。」
「すみません。浮かない顔をしていたので。」
「…………いや、朝だからです……。笑えない冗談はやめてください……。」
イツキは溜め息を吐き、先ほどの椅子に再び座った。
黒猫も何事もなかったように着席した。
「……それにしても、この珈琲本当に美味しいですね。どこの珈琲なんですか?」
「これは街路樹オリジナルブレンドです。重要な収入源なんですよ。」
成程。
黒猫は確か、街路樹の経営を任されていると言っていた。
見た目に反してかなりやり手のようだ。
「また淹れてもらえますか?」
「次からはお金を取りますよ。」
「抜かりない。」
イツキは笑って、珈琲を口に含んだ。
……すると。
その静けさはドアを蹴破る音で壊された。
「うわっ!?だあちち!!」
イツキは驚いて、珈琲を服にこぼしてしまった。
そんなことはお構い無しに、二人のもとに駆け寄るのは茶々猫だ。
「茶々猫。また扉を蹴破るなんて……修復費用、結構かかるんですよ。」
「そんなことよりこれを見んか!!」
バン!!と大きな音を立てて机を叩く。
いや、叩いただけではなさそうだ。
そこには一枚の紙が置かれていた。
イツキと黒猫はそれを覗きこみ、イツキが書かれていた内容を読み上げる。
「えっと……果たし状……?今日、明朝にこの手紙を投函させてもらった。午後1時、桃の国は終わる。覚悟してネ♪…………青の雀ちゃん。……青?」
「うむ。それで……なのだが……。」
浮かない顔をする茶々猫。
そんな顔をしていると、また黒猫が毒とか言い出しそうだ。
「どうしました?茶々猫さん。」
聞くも口ごもる茶々猫。
何があったのだろうか。
「手遅れになるようなことなら、早目に言わないといけませんよ。」
「………………えたのだ。」
「えたって……何かを得たってことですか?」
「違う。その……スズメとやらを……捕らえたのだ。」
「……………………は?」
・・・・・・・・・
「焼くなり煮るなり好きにしなさい。」
「いや、そんなことしませんけど……。」
先程の部屋にスズメを呼び寄せて、椅子に座らせる。
座るなりそんなことを言うものだから、思わずツッコミを入れてしまった。
青い長髪で身長が高いスズメは手を椅子に縛られている。
「……名前は?」
とりあえずコミュニケーションをとってみよう。
イツキは名前を聞いた。
「沖里 スズメ。」
「スズメさんね……。」
意外にも答えてくれた。
「……で、霧雨。こいつをどうするんだ?」
と、日光は言う。
今この場には三猫と霧雨一行、そしてスズメがいるのだが……。
この空気、二重薔薇でイツキが味わったものに似ていた。嫌な思い出が頭によぎる。
「…………。」
「どうしたのよ、箱庭、街路樹。何もしないの?」
打って変わって強気な発言。
何がしたいのやら……。
イツキはこの空気を打破するために言葉を口にする。
「とりあえず、こうなった経緯と目的を話してもらおうかな。」
「朝。手紙を投函して帰ろうとした際に捕まりました。」
「ドジっ娘かよ……。」
「好きでしょ?」
「いや特には……。可愛く言いましたけど、悪く言うと間抜けですからね。」
「好きでしょ?」
「いや……もういいです……。それで、目的は?街路樹には何をしに来たんですか?」
「…………教えてほしい?」
少し、スズメの言葉が遅れた。
聞かれたらまずいことだったのか。
「……そうですね。教えてくれたら嬉しいです。」
「それは簡単なことよ。ここには宣戦布告をしにきたの。」
「宣戦布告……ですか?」
「イツキ様。」
と。ミノリが割って入ってきた。
返答を待たずに、ミノリはイツキに耳打ちをする。
「宣戦布告なら、どこかに部隊を配置していると思うのですが。」
「成程……そうですね。じゃあ、すぐに向かわせます。あー……じゃあ、ミノリさん。こっちをお願いしていいですか?」
「かしこまりました。」
「そして、三猫さんと……日光先生。」
対処するには街路樹の力を借りたい。
イツキは三猫と日光に向かって続ける。
「四人にも来てもらってよろしいですか?」
「……?」
四人はキョトンとして顔を見合わせた。
たまらず茶々猫が口を開く。
「さっきからなんなのだ?言うてみい。」
「……ここではちょっと。」
「…………ふうむ……致し方無いのう……。」
茶々猫は一つ溜め息を吐く。それを見てイツキは部屋から出ようとした。
その後ろに三猫と日光がついていこうとしたのだが……。
「宣戦布告なら、どこかに部隊を配置していると思うのですが。……とか?」
スズメが。
そう言った。
それに驚いたのはイツキとミノリだった。
他の者が何を言っているのか分からないといった顔をしているなか、彼等は険しい顔をスズメに向けていた。
「……聞いていたのですか?」
ミノリが聞くも、スズメは知らぬ顔で口を開いた。
「対処するなら街路樹の力を借りたい……だよね?」
一層顔を険しくするイツキ。
まさかこの人は超能力者……。
「超能力じゃないよ。」
まただ。
また読まれた。
「まただ。また読まれた。」
「い……いい加減にしてください。」
訳が分からずに、イツキはそう言うも、スズメは一切顔色を変えようとせずに続けようとする。
「訳が分からな」
「黙ってろよ!!」
イツキが怒鳴った。
一瞬で空気が重くなる。
「さっきから何なんだ!?一体何がしたいんだよお前らは!!!」
「イツキ。」
茶々猫が止めようとする。
「こっちは訳分かんねぇまま襲われて!!皆いなくなって!!大怪我して!!何度も死にそうになって!!!……お前らさ……お前ら一体…………何がしたいんだよ……!!いい加減教えてくれよ……!!!」
「教えてほしい……?」
「当たり前だろ……!?」
「じゃあ……賭けをしない?」
「遊んでいる暇なんてない。」
「まあ、聞いてよ。簡単な話だから。……この戦いに勝てば教えてあげる。」
「この戦いってのは……お前らがやってきた暴力のことかよ。」
「暴力って……少なくとも抵抗してるから戦いでしょ。っていうかそのことじゃない。私が言ってるのは……こっちの戦いのことだよ。」
スズメが言うと同時、轟音が鳴り響いた。
爆発音だ。間違いない。
「!?」
各々は慌てて音がした方向を見やる。
遠くで黒煙が見えるが……先程の爆発のせいだろう。
「白猫!!どうなっておる!!!」
茶々猫が食い気味に白猫に問う。
「分からない!今連絡をとってみるから……って、えっ!?」
「どうしたのだ!?」
白猫が端末を取り出してみるも手を震わせるだけだ。
「白猫!!!しっかりせい!!」
「……あっ、あっ、茶々猫ちゃん!連絡用端末が狂ってる……!!」
「狂っているだと……!?故障か!?」
「違うの!違うの!見たこともない文字列とかが邪魔をして……!!フリーズした!!」
「再起動は!!」
「できない!!何これ……!?」
「黒猫は!!」
茶々猫が黒猫に問うも、黒猫はただ横に首を振るだけだった。
「仕方無いのう……!イツキ、妾は爆発現場に向かう!何人かを連れてお主も付いてまいれ!」
「分かりました……!カサ、あと黒猫さん。お願いします!他のメンバーはここで待機で!!」
イツキは茶々猫、黒猫、カサの四人で爆発現場へと足を向けた。
こんにちは、そしてはじめまして。
アフロ月です。
萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
稚拙な文章で理解しがたいところがあれば、私の勉強不足です。申し訳ありません。
さてさて、白桃編も終盤ですよ。
白桃編は長くなるだろうと予想していたのですが、案外早く終わりそうで困惑しています。
まあ、気軽に読める短さも大事ですよね。
最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう。
Thank You。




