第十一章「白桃の緑達」
どうも。
「イツキ達の強さを詳しく教えてほしい」
というお便りをいただいていないのですが、後書きで載せようかなと思います。
白桃編
第十一章「白桃の緑達」
桃の国傭兵育成機関「夜街の街路樹」。
機関の中では設立が一番遅かった、つまり、一番に新しいのである。
方針は学校でも軍隊でもなく、ルールに囚われない自由さを尊重している。
その為か戦力は他と比べると最も劣っている機関になるのだ。
「もっと言えば、話し合いで解決しようと皆の口が上手い。街路樹がある街ヨザクラは貿易が世界一盛んだな。」
と、イツキは得意気に解説した。
「んなこと知ってる。」
「熟知しております。」
「常識の範囲内だ。」
教諭にメイドに騎士。
イツキの話に感嘆する者は一人もいなかった。
「お、俺は良かれと思ってな……!」
「行くぞ、イツキ。夜街の街路樹はすぐそこなのだから。」
「……はぁ。」
一つ溜め息を吐いて、イツキは歩みを進めた。
現在霧雨一行がいるのは、乙女椿から徒歩で約1時間の隣街「ヨザクラ」。
機関である夜街の街路樹が構えてある街だ。温暖な気温で、石造りの道が通っている。
桃の国は緑の国から見たら東南に位置しており、隣国は緑、青、紫といったところだ。
「ここは襲撃されていないようなので、手遅れにならないうちに話をしておきませんとね。」
イツキが日光に話しかけた。
「そうだな。隣国なら荒れてると思ったが……。まあ、汽車が通ってたくらいだしな。」
日光が返し、イツキを横目で見て続ける。
「しかし……お前は何でその格好のままなんだ?」
「着替えるタイミングが見つからなくって……。」
日光が指摘したイツキの格好は、頭にふわふわのレースを乗せた、所謂メイドさんの格好だった。
緑の国で追手から逃げる際に仮装したのだが……いつ着替えればよいのか見定められぬまま、ここまで来てしまっていたのだ。
カサや、似た服を着たミノリも時々一瞥してくる。
日が暮れて人気が少ないから良いものの、日中なら後ろ指をさされるに違いない。
「今日はもう休みましょう。宿探しますよ、宿。」
「へいへい。」
嫌な汗をかきながら、イツキは宿泊場所を探すよう促した。
・・・・・・・・・
揺らめく炎。
それを囲む5人の女。
その女達の目は死んでいた。生気を帯びていない、まるで死んだ魚のようだ。
「……。」
流れる沈黙。
5人の内の一人、黒髪の少女まぐろ以外はただ炎を見つめていた。
「あの……。」
沈黙を破ったのはまぐろだ。キョロキョロしていたまぐろは、誰にといったわけではなく、言葉を発した。
「これからどうします?桃の国に向かうんですか?」
そう。まぐろ達5人は、当初は桃の国へ向かう予定だった。しかし、誰が間違えたのか着いた先は白の国。
桃の国とは反対側の地へと足を踏み入れたのである。
「……。」
「レイ先輩?ヒラメさん?ハツガさん?ツユ先生?」
「……。」
「返事くらいして……って、え?まさか死んでませんよね?レイ先輩鼻水出てますから大丈夫ですよね?でも垂れ流してますけど女の子としてそれはどうなんですか?」
「……。」
まったく反応を示さない4人。まぐろはしびれを切らして、レイの肩を揺すってみた。
「レイ先輩!」
「……。」
「いや、鼻水揺らさないでください……。出しきるか、すするかしてください。」
「……。」
すると、レイは鼻水を出しきるために力を込めた。レイの体はまるでロケットのように天高く舞い、勢いを無くして頭から墜落して埋もれた。積もった雪がクッションになり、どうやら生きてはいるようだが……。
「……はぁ。なら、私が勝手に決めちゃいますよ?」
そう言った途端、残った3人は一斉にまぐろの方を向いた。
「ひっ!!」
相変わらず目は死んでいるので、その雰囲気にのみ込まれそうだった。
「……え、えとえと。決めていいんですか?」
またしても3人は一斉に、しかし今度は首を縦に振った。
「喋るくらいしたら……って、無理ですか。そうですか。」
まぐろは一つの溜め息を吐き、少し眉間に眉を寄せて言い放った。
「まず合流ですけど、今は無しで。少なくとも霧雨先輩達なら、私達が桃の国にいないことに気付けるはずです。こっちはこっちで旅を続けましょう。」
「でもそれなら、あっちに青が向かったせいで、加勢を待ってるかもしれないのだよ。」
「きゃっ!?」
いつの間にか戻ってきていたレイ。その目は生気を取り戻していた。
「驚かさないでください……。レイ先輩が言うことも一理あるんですが、逆に青は、私達が二手に分かれているとは思わないはずです。意表を突くことが出来るかと思いまして。」
「ふむ、こちらの動きが悟られていないなら動きやすく、何か行動を起こしてもばれる可能性は低いというわけだね。」
「はい!その通りです。」
「中々良い作戦ですわね。」
「グッジョブ。」
「神崎さんは頭が良いのねー。」
復活していた面々が、まぐろに笑顔を向ける(約1名表情が判別しにくかったが)。
反応を見ながらも、まぐろは口を開く。
「それで、旅を続ける上で必要なのがお金です。一応少しは持ち合わせていますが、ほとんどのお金はミノリさんが管理していましたから、かなり不自由ですよね?それだと汽車にも乗れないし、この寒さのなか、野宿を続けるのも辛い状況です。何か打開策はありませんか?」
うーんと唸る5人。数秒の後、最初に口を開いたのはハツガだった。
「働く。」
「待って下さいまし。ハツガさん、私は働きたくありませんわ。」
異議を唱えたのはヒラメだった。清んだ瞳をしているヒラメに、まぐろは苦笑した。
「あはは……でもヒラメさん。働かないと生きていけませんよ?」
「嫌ですわ!!私は一生好きなことして遊んで暮らしたいの!私の辞書に!働くなんて言葉ありませんわ!!ノットワーク!!」
熱く語るヒラメに、たじろぐまぐろ。なんだか何も言い返せなくなってしまった。
すると、ツユがヒラメに言い放つ。
「妃懦莉さん、ふざけないで。」
「ふざけていませんわ!」
「ノットワークじゃなくて、I don't want to workです!!」
「さすが先生なのだよ。」
観点がずれていたツユにレイがつっこむ。するとたちまち笑いが溢れてきた。
「……全く……。笑わせてくれますわね……。」
「本当ですね……。」
「ふふ。この調子なら、なんとかなりそうなのだよ。」
「あっはっはー。」
「ちょっ、そんな棒読みで……。」
…………白銀の世界から聞こえてくる笑い声。その声が引き寄せるのは、光か、はたまた闇か。
一歩、また一歩と確実に歩み寄る足音。雪を踏むその音に、5人は気付かなかった。
こんにちは、そしてはじめまして。
アフロ月です。
萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
稚拙な文章で理解しがたいところがあれば、私の勉強不足です。申し訳ありません。
前書きでも書きましたが、今回は霧雨一行の強さの序列をつけていきたいと思います。
日光>>ミノリ≧レイ>ハツガ≧イツキ>サゴ≧カサ>ヒラメ≧ツユ>>まぐろ
……というような感じです。
我らがイツキは、中間あたりですかね。
これは単純な総合力なので、状況により上下することはありますよ。
最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう。
Thank You。




