第三十九章「夜咫乃カガミ」
父親
母親
息子
娘
一つだった家族が二つになり、争う。
なんとも悲しい話です。
……あ、今回の話はそういう話じゃないですよ!?
桃の国解放戦線編
第三十九章「夜咫乃カガミ」
「…………。」
「久しぶりね、雨燕。」
黄の国を訪れた日光一行。
機関長と話をしようとし、先客と偶然会った日光一行だったが……。
「夜咫乃……?」
ヒラメはどこかで聞き覚えのあるその名前を呟いた。
夜咫乃カガミ。
黒髪の彼女は、どことなく冷たい雰囲気をしていた。
「雨燕、知り合いか?」
日光が雨燕に問う。
「い、行きましょう、皆さん。」
「あ?おい、雨燕?」
「ダメです……目を合わせないでください……!早く行きましょう……!?」
「何を焦ってるんだよ?……まあいいや。すまんな、夜咫乃さん。」
「いいえ。」
会釈をする日光とカガミ。
そして雨燕とすれ違う時に。
「…………。」
「ひぅっ…………!!」
何かを囁かれたようだ。
「どうした雨燕。変な声出すんじゃ……って、何泣いてんだよ……。」
「…………す、すみ、すみま……せん……。」
腕が震えている。
どうやらただの顔見知りではなさそうだ。
「怖いのか?あの女が。」
「…………はい……。」
カガミの姿は無い。
雨燕は慎重に口を開いた。
「あの人は……青です。」
「!?」
青。
いくつもの国を占領し、世界の半分を物にしたと言っても過言ではない、強国。
日光達の居た緑の国も、青に占領されていた。
「アイツ、青なのか……!?だとしたら何でここに……!!」
「あーーー!!思い出しましたわ!」
「なんだよヒラメ!!」
「夜咫乃って名字、どこかで聞いたと思っていましたの。今、思い出しましたわ。古城幹部の夜咫乃カラスと同じ名字ですわ!」
「はあ!?同じ名字!?じゃあなんだ、さっきのカガミってやつは……!」
「カラスの母親……ではありませんの?」
雨燕が首肯した。
「少し急ぎませんこと?」
「ああ、そうしよう。」
日光達は早足で長のところへと向かった。
しかし、雨燕のみ足がおぼつかない。
雨燕のすぐ前に居た紅が心配してくれた。
「……大丈夫?雨燕ちゃん。」
「紅さん……は、はい……大丈夫…………じゃないかもしれません。」
「……日光!少し待ってあげて!」
紅が日光を呼び止めた。
「おおっと!こりゃすまねぇ!」
戻ってくる日光やヒラメ、ミノリ。
「悠久の時を待つから構うな。自分のペースで歩きな。」
「……ふっ……日光群彰のくせに生意気ですね……。」
「あ?行っちゃうぞ、日光群彰行っちゃってもいいのか?」
「貴方なら構いません。」
「言うじゃねえか……。」
毅然と振る舞えている様子の雨燕だが、胸中は穏やかではなかった。
そして紅。
実は彼女にも聞こえていたのだ。
雨燕に囁かれた内容を。
カガミは冷たく一言。
「裏切り者」と言っていた。
・・・・・・・・・
こちらは緑の国傭兵育成機関『深淵の箱庭』。
留守番をしていた三人の男女が、ゆっくりと満喫していた。
「先生、緑茶を頼む。」
「はい。」
「何杯目だ、親父さん……。」
イツキの親父、ツユ先生、犬槇の三人は食堂でイツキ達の帰りを待っているのだが……。
「いや……お前の賭けを聞くまでチャレンジしてるんだよ、何杯飲めるか。」
「まだ待ってたのかよ。すっかり忘れてたわ。…………あれ数日前だよな!?何杯飲んでるんだよ!?」
「知りたいか?」
「まあ……人間の限界に挑戦してるだろうからな。」
「残念だが冗談だ。人間お茶だけで生きていけるわけねぇだろ。」
「…………。」
微妙に悔しかった。
犬槇は溜め息を吐き、こう言う。
「賭けなんてしない。興味無いからな。」
「そうかよ……それにしてもまだ帰ってこないのかねぇ。」
「歩きだと行くだけでも結構かかる。往復なら尚更な。」
「知ってるわ。どれだけ渡り歩いたと思ってる。」
「……ん……?ああ、そういや旅をしてたんだったな。それこそ青の国にも行ったんじゃないか?」
「行ったことあるぜ。だがそれも10年くらい前だしあまり覚えてねえがな。」
「そうか……。まっ、気長に待とうぜ。焦っても仕方無いからな。」
「言うじゃねえか。……お前も、お茶飲むか?」
「ああ。……でも出してくれるのはツユさんだろ。」
「まあな。」
「…………。」
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
今回登場した、夜咫乃カガミさん。
間違ってもおばさんと言っては………………。
…………お姉さんと呼びましょう。
そして、カラスは母親似だと分かりますね。
……え?そもそもカラスが分からない?
深淵の箱庭編を読みなおしてきなさい!!
それでは、またお会いしましょう。
Thank You。
……『ミノリじゃんけん・性ッ!!』が流行ればいいのに。




