第三十七章「雨燕の苦難」
雨燕「うーん……何故私はここにいるのでしょう……ツッコミがいないからでしょうか……。」
桃の国解放戦線編
第三十七章「雨燕の苦難」
木目の大部屋には、様々な種族の魔族がいた。
獣人。
ゴブリン。
オーガ。
エルフ……etc……。
「日光様。」
「なんだ、ミノリ。」
「オークがいます。」
「ああ。……それがどうかしたか?」
「くっ殺ですよ。」
「いや知ってるけど……知らないふりしたっつーか……聞かなけりゃ良かったわ……。」
「カサ様がいらっしゃれば……!!ああ、悔やまれる……!!」
「……。」
一人盛り上がるミノリ。
ここに来てからのミノリはおかしい。
いつもおかしいが、いつも以上におかしいのだ。
「なあミノリ。お前何かあったのか?」
「……興奮はしていますが?」
「ああ、そう……いつものミノリだ……。」
考えすぎだったようだ。
「そう言えば……。」
突如、先頭のタレミミが口を開いた。
「皆さんのお名前を聞いてなかったです!」
「ああ……確かに名乗ってなかったな、すまん。俺は闇と共に生きる男……まあ、ロンリーウルフと覚えておいてくれ。」
「はいです!くっそ寒いですね!」
「ああ!?」
「あ、いえ、すみませんです!私嘘がつけなくて……。ロンリーウルフさん……略して、ンフさんですね。」
「変なところで略すなよ……日光だ。日光 群彰。」
「はいです!日光さん!」
「では……次は私が。」
手を半ば挙げたのは、金髪アホ毛の少女。
「妃懦莉 ヒラメですわ。宜しくお願いしますわね。」
「こちらこそです!でも普通でつまらないです!」
「はあ!?」
「略してダリラさんですね。」
「変に略さないでくださいまし……。」
「妃懦莉さんの次は……赤い髪の貴女です!」
「私?」
手をひらりと向けたのは、紅に対してだった。
「紅よ。赤の国出身だから、黄の国とは同じ島国出身ね。」
「聞いてないです!」
「なっ!?」
「略してクレイさんですね。」
「格好いい名前ね、気に入ったわ。」
「フフフ……では次はメイドさんです!」
その瞬間、ミノリの瞳がキラリと光った気がした。
「妃懦莉 ヒラメお嬢様のメイドで、ミノリと申します。好きなものはスキャンダルです。宜しくお願いいたします。」
「……!!言い返せないです……!!」
「私を舐めてかかるとは……甘いのですよ。出直してきてください。」
「くぅ…………略すとみのさんです!」
「最後の答えを聞きそうですね。…………ああ!ツッコんでしまった……!!」
「フフフ……まだまだですね。甘いのはどちらですかね!?」
「ぐっ……!」
仲良くなれそうな二人だった。
「あっ、次はあっちに行ってみましょうです!」
「「「「はーい。」」」」
「ちょっと待てぇぇぇ!!!」
叫んだのは雨燕だった。
「はいです?」
「私は!?」
「え?」
「いや、え?ではなくて……私の自己紹介はどこへ!?」
「…………え?」
「少しの間からの疑問符ですか!?すこ~し楽しみに待っていたのに恥ずかしいじゃないですか!!」
「ああ、ごめんです。ではお願いしますです。」
「やりづらいわ!!」
・・・・・・・・・
タレミミには機関の中を案内してもらった。
まず多いのは薬品だった。
錬成術に長けたこの機関では、様々な薬品や素材が必要になってくる。
世界でも珍しい錬成術が身近にあることから、この国には魔族が集まるのかもしれない。
「あとは……長のとこだけです。行きますです?」
タレミミが問うと、日光が首肯した。
「ああ。俺達は長に会うために来たようなもんだからな。ところでタレミミよう。」
「なんですYO!」
「ちょっとストップ、黄の国のトップ、教えてほしいオ・レ・!」
リズミカルに問う日光。
「長のことです?それなら今からお会いしますですよ?」
「いや、実力の方でだ。この国一番の実力者と戦いたい。」
「うーん……長だとは思いますですよ。でも今なら、確か別の国から他にもお客様が来てますから、そちらの方も相当手練れだと思うですよー。」
「……お客様?」
なんと日光一行の他にも、誰かが『花園の踊場』へと来ているらしい。
「あっ、そういえば長と話している最中でした!それだとまだ入れないですねー。」
「待て待て、タレミミ。その客って誰だ?」
「んー?確か……や……や……女性の方ですが……すみません、名前が思い出せませんです。」
「……そうか……んじゃまあ待たせてもらうか。」
スッキリしない答えだが、仕方無い。
日光達は待つことにしたのだが……。
この『お客様』が後に波乱を呼ぶことを……彼らはまだ知らなかった。
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
雨燕はツッコミだから入れたわけじゃありませんよ。
日光とヒラメがいるのも偶然ではありませんよ。
それでは、またお会いしましょう。
Thank You。




