第五章「既視感と朝食」
どうも。
口の中を火傷したアフロ月です。
朝食は大事ですが、熱い物は急いで食べないようにしましょう。
白桃編
第五章「既視感と朝食」
「ふあ……ぁ……霧雨先輩……おはようございます。」
「おう。おはようまぐろ。」
二重薔薇ノ園を出て2日。
草原を通る河辺で、今しがた起きたまぐろは欠伸をかいていた。
「早いですね……何してるんですか?」
「剣の素振り。腕を鈍らせるわけにはいかないからな。」
イツキが答えると、まぐろは一つ息を吐いた。感嘆の息というやつだ。
野宿をしていたイツキ達は緑の国の隣国、桃の国に向かっているのだが……まずはそうなった経緯を話すべきだろう。
2日前。二重薔薇ノ園で、イツキ達は城を出る前に話し合いをしていた。
それは日光のある一言からだった。
「誰がどんな役割で行くんだ?」
そう。メンバーが多くなったことで、役割分担等が必要になってくる。
女王のアンコウが、あえて一人で亡命するという何ともワイルドな発想をしたものだから、ヒラメやミノリも霧雨一行に加わることになった。
現在のメンバーは、
霧雨 イツキ。
神崎 まぐろ。
海岐華 レイ。
日光 群彰。
ハツガ。
ツユ。
妃懦莉 ヒラメ。
ミノリ。
カサ。
サゴ。
の10人だ。
ちなみにツユはまだ眠っている状態なのだが……置いていくのは危険な為、おぶって同行させることにした。
一先ずは……リーダーだろう。口を開いたのはイツキだ。
「まずはリーダーですが……ま、まあ?誰もいないなら、俺、やっても?いいですけど?」
「はいはいはい!私がやるのだよ!!」
「何言ってんだ!!一番年上の俺だろ!!風もそう言ってる!!」
「私。」
「私よ私!お兄ちゃんもそう思うでしょ!?」
……これは時間がかかりそうだ。
するとまぐろが、
「やめてくださいよ……こういうのは、自分からじゃなくて選出するものでしょ?」
と言った。
たちまち静かになり、納得の声が聞こえてくる。
「言われてみればそうなのだよ……。せーので指差すことにしようではないか!」
「それは名案だ。……ああ、シャドウウルフもそう言っている。」
頷きあい、それぞれ誰がリーダーに相応しいかを心の中で決めた。イツキが確認をとると、息を深く吸った。
「せえぇぇぇの!!!」
バッと一斉に胸中の人物を指差す。結果は……。
「……えっと……これは、俺でいいのか?」
「そうみたいですね。」
結果は、3票を獲得した……イツキだ。
因みに日光が2票で、カサ、レイ、ハツガ、まぐろが1票他0票といった感じだ。
この結果に異議を唱えたのは、レイだった。
「なっ……イツキ君がリーダーなのかね?理由は!理由はなんなのさ!」
レイが、イツキを指名したまぐろに詰め寄った。
「うわっ!レイ先輩近いです!!……えっと、レイ先輩や日光先生の暴走を止められるのは、霧雨先輩しかいないと思いまして……。」
「ミ、ミノリさんはどうしてなのだよ!!」
「面白そうだからです。」
「それならいいや。」
「いいの!?レイさんの言葉に俺は納得できない!」
突然納得するものだから、驚いてしまうイツキ。意表を突かれてしまった。
とりあえずは、イツキがリーダーということで良いだろう。次に決めるべき事は……。
「じゃあ、みんな。」
イツキが見渡すように言うと、皆はイツキを見つめた。
「今からチーム分けをする。」
「チーム分けですか?」
まぐろが首を傾げると、イツキは首肯した。
「ああ。正直10人は動かしづらいから、何人かに分けたチームを作る。それなら乱戦にならずに連携も取りやすくなる。指示も出しやすい。」
「でも行動するのは10人なんですよね?」
「勿論だ。それにチームで分けておけば別行動も取りやすくなるし。早速決めるぞ……戦力は均等に、関係性も考慮して……。」
イツキが手を顎に当てて悩んでいると、日光が不敵に笑い口を開いた。
「なるほど、神の選別か。これは面白い。」
「その理屈だと俺は神かよ。」
・・・・・・・・・
「そんなこんなで決まったな。」
イツキはこの一行を3つのチームに分けた。
・Aチーム
イツキ
まぐろ
レイ
・Bチーム
日光
ハツガ
ツユ
カサ
サゴ
・Cチーム
ヒラメ
ミノリ
「まあ、大体が人間関係で構成したんだけどな。」
軽く苦笑するイツキ。
「な、なんで私はミノリと二人なのです?」
ヒラメが不思議そうにイツキに問う。するとイツキはこう答えた。
「ツユ先生をおぶったままじゃあ、まともに戦えないだろ?それならってことで二人に護衛を任せた。双子なら連携もとりやすいだろ。」
少しアンバランスな気もするが……ヒラメは渋々了解してくれた。
「じゃあ次に目的だ。さっきアンコウさんが言ってたけど、何も動きが無い他国の様子が気になる。とりあえず隣国の桃の国に行ってみようと思う。」
「おー。それは良い考えだと思うのだよ。」
笑ってレイが賛同する。さらにレイは言葉を続けた。
「もしかしたら、一緒に戦ってくれる仲間が見つかるかもしれないからね。」
レイの言葉に納得する面々。最初の目的は決まりだ。
「まずは、桃の国に向かう。最終的には海底の古城をぶっ潰す。みんな、覚悟はいいか?」
皆は微塵の迷いなく、一斉に首肯した。
・・・・・・・・・
「あとどれくらいで、桃の国に着くのでしょうか?」
回想していたイツキは不意を突かれる。
「えっ、あ、そうだな……。今日中には着くと思うぞ。」
「やった!やっとですね!」
イツキの返答に、少し顔を明るくするまぐろ。箱庭の生徒になれば2日かけて歩くなんて当たり前の様にあることなのだが……まぐろにとっては初めての経験で、恐らくイツキ達より体感では長く感じていることだろう。
「霧雨先輩。今度、剣を教えてください。」
「ああ。でも今度とは言わず、今どうだ?」
「え!?い、いいんですか?」
「いいんです。」
「ありがとうございます!」
再び顔を明るくしたまぐろは、テントの中にトコトコと走っていった。なんというか……笑顔が可愛い。悲しいときでも、釣られてこっちまで笑ってしまいそうだ。
テントの中からブロードソードを取り出したまぐろは、トコトコとイツキに向かって走ってくる。
懐かしいなぁ……数年前もこんなことあったっけ。
………………………………懐かしい……?数年前…………?
「……?どうかしました?霧雨先輩。」
呆然としていたイツキに対してまぐろが問う。
「……なぁ、まぐろ。俺達、前にどこかで会わなかったか?」
「え?」
キョトンと目を丸くするまぐろ。
「小さい時とかさ。入学してくる前にどこかで。」
たじろぐまぐろ。必死で考えているようだ。やがてまぐろは呟くようにこう言った。
「……会ったことは、ないと思います……。」
「本当に?」
「ひゃっ、顔近いです!本当です!少なくとも、私は覚えていません。」
「そうか……。」
では先程の感覚は一体……?
「おう、神崎。封印が解かれたんだな。」
「え?あ、おはようございます。日光先生。」
イツキが考えこんでいると、上流の方から一人の男が歩いてきた。
日光 群彰。深淵の箱庭教諭にして中二病を患ったおじさんである。
「霧雨も。千年の眠りはどうだった?」
「はい。おかげさまでぐっすりでした。」
「ならいい。もうすぐ朝飯だから呼びに来たんだ。残さず喰らい尽くせよ。」
「ありがとうございます。」
用件を告げると、日光は上流の方へ戻っていった。
イツキはまぐろの方に振り向き、一緒に行こうと誘った。
「うーん……剣はまた今度ですね。」
「そ、そうだな。」
お互いに苦笑して、二人は荷物を片付けはじめた。
・・・・・・・・・
「………………。」
河辺に設えられた簡易テーブルに佇む霧雨一行。
誰一人として口を開かないのだが、卓上の皿の上の物体を見れば、誰だってそうなるだろう。
「……きょ、きょれはにゃんですか?」
顔を引きつかせるものだから、折角発言したまぐろの言葉は何とも幼稚なものとなった。
「きょれ」もとい「これ」というのは皿に乗った物体のことだろう。紫色の液体に雑草のような物が入っており、さすがにこれを朝食とは言えない。それほど見た目は強烈なのだ。
「今日の当番って、確かヒラメだったよな?」
イツキは今にも消えそうな声でヒラメに聞いてみた。
「……。」
返事は無い。
「料理が苦手なら苦手だと言ってほしかったなー……。」
心無い言葉に、ヒラメは屈んでうずくまった。
「……。」
「あっ!?ごめんヒラメ!!」
「おい霧雨!妃懦莉泣いてるじゃねえか!」
「うそ!?そんなつもりじゃ……。」
「クソ野郎クソ野郎クソ野郎クズクズクズクズクズクズ殺ってやる殺ってやる殺ってやる…………!!!!!」
ヒラメの隣でイツキを睨み付けているミノリ。しかも危険極まりない事を口走っている。
「霧雨。ここは土下座だ。…………いや、ブリッジだ。ブリッジで謝れ。」
「なんでブリッジ!?頭の下げかたなら他にもあるよね!?」
日光には賛同しかねる。だがしかし、謝らなければいけないのは事実である。
「……顔を上げてくれ、ヒラメぶおあっ!!!」
イツキが屈んで声をかけたのが誤りだった。その言葉通りにヒラメが顔を上げたものだから、イツキに頭突きを決める形になってしまった。
「……。」
今度はイツキが屈んでうずくまってしまった。
すると、どこからともなく笑い声が聞こえてきた。
「ふふ……あっはっはっはっ!!ざまぁありませんわ!!!!!」
笑いは笑いでも、ヒラメの高笑いだった。
「人を馬鹿にした罰ですわ!!あっはっはっ!!醜い豚に死をぉぉぉぉぉ!!!」
「いや、妃懦莉。性格変わってない?」
……桃の国へはまだまだかかりそうだ。
こんにちは、そしてはじめまして。
アフロ月です。
萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
稚拙な文章で理解しがたいところがあれば、私の勉強不足です。申し訳ありません。
さて、第五章……。
霧雨一行のリーダーはイツキに決まりました。
もしまぐろだと神崎一行。
レイだと海岐華一行に、なっていたということです。
……案外、レイはチーム名を付けそうですけどね。
「妖艶なる魔女の騎士団」。
「箱庭ノ暁隊」。
……た、楽しくなってきやがった。
続く第六章では、やってきましたクローバー。ゲーセン、ケーキ、スクール水着。
何がなんだか分からないでしょうが、次を読んだら分かります!
最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう!
Thank You♪




