第四章「旅立ち」
アフロ月です。
今回は世界地図を載せてみました。
…………クオリティは……まあ…………。
ば、場所とか分かってくれれば嬉しいかな!!
白桃編
第四章「旅立ち」
長く続く廊下の奥。
大きな扉に閉ざされたそこは、二重薔薇ノ園女王の間になっている。
そう入れる場所ではないが、イツキは戦いの最中に一度足を踏み入れたことがある。
「緊張するなぁ……。」
ぽつりと呟くイツキ。
すると、イツキの後方を歩いていたまぐろが横に並び話しかけてきた。
「女王様に謁見するなんて、そうそうありませんからね。私も緊張しています。」
「……だな。でも急だったよな。」
そう。匿われていた女王が帰ってきて、謁見が決まったのはついさっきのことだ。
緑の国の現状を把握するために、傭兵育成機関「深淵の箱庭」代表としてイツキ、まぐろ、レイ、日光の四人が女王に一連の経緯を話すことになったのだ。
情報を共有するということだろう。
「まぁいいじゃねえか。この国を操っているトップと会うんだろ?ワクワクするぜ。」
「操っているわけじゃないでしょうけど……失礼の無いようにしてくださいよ?」
「当たり前だろ、そこら辺はお前よりしっかりしてるよ。年上なめんな。」
「ぐっ……。」
「ああほら、着いたのだよ。」
イツキと日光が言い合っていると、どうやら部屋の前へと着いていたらしい。レイが割って入る。
「開けーゴマ!」
レイが呪文を唱える。
それを見かねたイツキは苦笑しながらこう言った。
「いや……自分で開けましょうよ。」
すると扉が自然に開いていった。
「うそぉ!?」
「嘘です。」
扉の奥から顔を出したのはミノリだ。どうやら扉を開けたのはミノリだったらしい。
「ミノリさん。ビックリさせないでくださいよ……。分かりました?」
「……。」
「嘘でもいいから返事くらいしようよ!!」
「……騒がしいですね。」
と、不機嫌そうに座る者が一人。
それは二重薔薇ノ園・現女王アンコウその人だった。
「貴方達が、ヒラメのご友人?」
「あっ……、はい。娘さんとは仲良くさせてもらっています。」
慌てて横に並び、膝をつくイツキ達。
「それは良かった。もし意地悪なんてしたら、私は怒りますからね?」
「はい。気を付けます。」
なんだろう……口調は優しいのに、妙な圧がある。殺気?殺気向けられてるの?
頬に汗を垂らしつつ、イツキは口を開いた。
「一先ず女王様、無事で何よりです。では早速説明をさせていただきますね。」
「お願いします。」
「まず最初に申し上げますが、私達が説明出来るのは深淵の箱庭と近辺の村のことだけです。」
「充分です。」
「ありがとうございます。まず深淵の箱庭ですが……被害は甚大。突然の襲撃で、混乱したのが原因かと。生き残った者が私達以外にいるのかどうか、現時点での把握は難しい状況です。」
「敵は……青なのでしょうか?」
「間違いありません。幹部クラスの敵と接触した者がおり、所属先を海底の古城と名乗っていましたから。」
「成程。」
「現在、箱庭は青の占拠下におかれていると思われます。小型のトランシーバーがあるのですが、長とも連絡が取れず……です。」
「分かりました。近辺の村というのは?」
「シンリン村のことです。村一面に氷が張られており、脱出に困難を極めました。」
「氷?異常気象か何かでしょうか?」
「当夜、寒気を感じていたので私もそう思いました。しかし事実は異なっており……気温が低くて氷が張ったのではなく、氷が張られて気温が低くなっていたのです。それは敵の一人、魔法使いの仕業でした。」
「あちらは魔法使いを有しているのですか……。ところでえっと……。」
「これは失礼。申し遅れました、霧雨 イツキです。」
「キリちゃん。聞きたいことがいくつか。」
「……キリちゃん……?……あ、い、いえ、はい。なんでしょう。」
「霧雨先輩、動揺しすぎです。」
横からのツッコミに口を尖らせるイツキ。
アンコウは構わずに問う。
「その……深淵の箱庭の概要とやらを教えてほしいのですが。」
「ああ……歴史とかそういった感じのですか?」
「はい。」
「まぐろ、お願い。」
「私ですか!?」
突然の大声に、一瞬空気が固まる。しかしそんなことは関係ない。イツキは話すように促す。
「ほれほれ、勉強だと思って。間違っていたら指摘してやるから。」
まぐろはジトーと半眼になりながらイツキを見る。やがて深いため息を吐くと、まぐろはなぞるように話し始めた。
「……まず傭兵育成機関についてですね。機関と銘打っていますが、各国によって方針は様々です。あ、機関は国ごとに一つずつあります。緑や赤のように学校のような制度をとる所もあれば、青や白のように軍隊のような制度をとっている所もあり……ます。」
「へー、そこは分かってるんだな。」
茶々をいれるイツキ。そのせいで慌てるまぐろだったが、レイがイツキを絞めて静かになったところで、まぐろは落ち着きを取り戻した。
「700年前に、一度世界が終わった事は御存知ですよね?」
「旧暦と新暦ね。ええ、頭に入れていますがド忘れしてしまいました。」
「……。あ、えっと、旧暦2250年、大規模爆発により世界の人口は少数になりました。残った127人が身を寄せ、新暦をつくり、700年の時が経った今、ここまで復興したのです。文化が入り交じり無くなっていった物も多いですが。」
「ああ、そんな感じでしたね。」
「この700年で、科学が進歩して数々の発明品を生み出しました。その例が光線銃ですね。爆発により資料が失われたこともあり、銃が廃れていった原因にもなっていますが。その他にも、廃れていった物は沢山あります。クルマ……?とか。」
そこまで来たところで、アンコウは目を輝かせた。
「ああ、今、完全に思い出しましたよ!確かその127人を治めていたのが、イブさんという方なのですよね?」
「はい!小さな女性だったらしいですね。」
「ふふん。」
鼻高に笑うアンコウ。少しヒラメに似ているところをみるとやはり親子だ。
まぐろも笑みがこぼれるが話を戻す。
「それで、やはり問題も起きます。それが魔物です。元々機関はこの魔物に対抗する傭兵を育成するために作られた場所です。今は傭兵といっても、相手が魔物とは限りませんけど。」
「こういった争いに使われることもある、ということでしょうか?」
「とんでもありません。そもそも戦争が禁じられた世の中ですから。もし争いでも起こそうものなら、その機関は、他国の機関から消されることになります。文字通り。」
「……では、今回の出来事も例外ではない。と?」
「はい。」
アンコウはふうむと唸り、腕を組んだ。
何かを思案しているようだが……。
と、何かを決めたのか、アンコウは思い立ったように口を開いた。
「ありがとう。では、こちらの情報をお伝えします。」
「あ、はい!お願いします。」
「まず、貴女の話を聞く限り他国が動くはずですが……何も情報は入ってきていません。」
「えっ……?」
息を呑む面々。さらに追い討ちをかける。
「そしてこの二重薔薇ノ園ですが……もうじきここも落とされることに……いえ、手放すことになります。」
周囲にざわめきが起きる。使用人達にも知らされていなかったのだろう。
各方面からざわめきが聞こえてくる。しかし。
「静かになさい。」
アンコウのその一言で。元の静けさに戻るのだった。
やはり何か妙な圧があるのだろう。
「3つあるなかの2つの巨大都市はすでに没落しています。残ったここを手放すことで、緑の国は青の占拠下となるでしょう。」
「ちょっと待ってくださいまし!」
横から割って入る者が一人。二重薔薇ノ園女王にしてアンコウの娘、ヒラメだ。
「お母様!私は反対です。一体どういった想いでそんなことを!?」
「これ以上被害を出さない為よ。ここを防衛するのは不可能に近い。それなら戦いを起こさない方がいいでしょ?」
「お母様はどうなるか分かりませんわ。最悪、処刑だってありえますのに。」
「バカ言わないで頂戴。亡命するに決まっているでしょう。」
その言葉を皮切りに、二人は黙った。
沈黙が流れて静けさを保つ。
そして、沈黙を破ったのはヒラメだった。
「……死なないでくださいまし。」
「バカ言わないで頂戴。死ぬわけないでしょう。」
アンコウが微笑むと、ヒラメは切なそうな表情をしながらも、首肯して下がった。
まぐろ達の方へ向きを変えるアンコウ。
「貴女達は、これからどうするの?」
「これからですか?それは……霧雨先輩に聞いてみないことには。」
苦笑するまぐろ。イツキの方を一瞥するが、未だに気を失っているようだった。
「まだ気を失っているので、聞くことができません。」
「簡単なことです。」
「きゃっ!!!」
気を失っていたはずなのだが……。いつのまにかイツキは立っていた。
「この戦いを終わらせるため。海底の古城をぶっ潰します。」
「具体的には?」
「古城長を倒す。それだけです。」
「……出来るのですか?」
「しなければいけません。」
「私情が入っているのでは?」
「優先事項は分かっています。」
「…………分かりました。お願いしますね。」
「お願いされました。」
口角を上げて不敵に笑うイツキだった。
・・・・・・・・・
十数分の話し合いの後、話がまとまりイツキ達は城を出ていくことに決まった。
大広間では、支度を終えたハツガが待っていた。
「おかえり。」
「ただいま、ハツガ。……その荷物は?」
「……。」
ハツガの後ろには、山のように積まれた荷物が置かれていた。
「さすがに、こんなに持っていけないぞ。」
「……。」
ガクリと膝から崩れ落ちるハツガ。そんなにショックだったのだろうか。中身が気になったイツキは、ハツガに聞いてみた。
「ハツガ。因みに中は?何が入ってるんだ?」
「……。」
何も答えない。……勝手に覗かせてもらおう。
「えっと……とりあえずこの鞄の中でも。」
「やあイツキ。調子はどうだ?」
カサがいた。イツキは何も見なかったことにするため、鞄をそっと閉じた。
「…………じゃあこっちのリュックは。」
「どうもッス。」
サゴがいた。イツキは何も見なかったことにするため、リュックのチャックをそっと閉めた。
イツキはハツガに歩み寄り、膝をつくと肩に手を乗せた。
「ハツガ、違う。これは違う。歩かせなさい。」
「……。」
頷いて、カサとサゴを引っ張り出すハツガ。少々強引な様子で。カサはタオルを顔に当てながら、イツキのもとに歩いてきた。
「ふぅ、蒸し暑かった。」
「じゃねえよ!!お前ら何やってんの!?」
「無論、同行するためだ。」
「それはありがたいけど……他に方法あったろ。」
「これが最適だと、ハツガに。」
「……自分でも考えような?」
「うむ、以後気を付けよう。ところで……日光は?一緒だったはずだが。」
「ああ、それが……。」
イツキは先程の出来事を回想し始めた。
「では、そういうことで。行きますよ日光先生。っていうか一言も喋りませんでしたね。」
「……アンちゃん?」
「……は?」
「え?……もしかして、ひーちゃん?」
「……ん?」
「やっぱりアンちゃんじゃないか!!元気してたか!?」
「ええ、それはもう。ひーちゃんはどう?あの約束は。」
「フッ、俺を誰だと思っている?天下のひーちゃんだぜ?」
「あのー……?」
「ってな感じで、どうやら知り合いだったらしく、今二人で話して…………あっ、帰ってきた。」
「悠久の時を待たせたな。」
「えっと……どうでした?」
「霧雨。」
「はい。」
「フッ。」
「何の笑いですか!?」
・・・・・・・・・
…………二重薔薇ノ園。後に青に落とされて占領されることとなる。
が、しかし。
彼等は自らの行いが、どう影響を及ぼすのかをまだ知らない。
こんにちは、そしてはじめまして。
アフロ月です。
萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
稚拙な文章で理解しがたいところがあれば、私の勉強不足です。申し訳ありません。
さて……第四章。ここからがこの物語の始まりです。
旅立ちを決めたイツキ達は、桃の国へ向かいます。
それにしても沢山の仲間に恵まれました。この先にも、素敵な出会いがあることを期待しましょう。
俺達の戦いはこれからだ!!
…………いやいや、終わらないよ。
続く第五章では……二重薔薇ノ園を出発した霧雨一行。
そしてイツキに訪れる謎の既視感。それは一体……。
最後に!後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう!
Thank You♪




