第三章「やったの?」
アフロ月です。
大人な雰囲気の萌葱色変奏曲。
…………大人な?雰囲気?
昼ドラの間違いではないのだろうか……?
白桃編
第三章「やったの?」
「不吉なサブタイだな!?」
叫ぶイツキ。何故だろうか、知らない誰かにも疑われている気がした。
まわりからの不審そうな視線で、イツキは注目を集めていた。
「いや……何でもないよ。ヒラメ、どうだ?」
手を振ってアピールする。声をかけられたヒラメは、ため息を吐いて返した。
「どうにもこうにも……まとめ終わりましたわよ。」
「お疲れ様。それで?」
「ざっと説明しますわ。」
視線がヒラメに集まり、それぞれ固唾を呑んだ。
「まず、酔っていたのはハツガさん、まぐろ、レイさん、カサ、日光さん、お前ですわ。」
「あえてスルーしてやろう、続きをどうぞ。」
「酔ったレイさんを連れて、お前とまぐろさんは部屋に戻った。その30分後くらいにお前だけ帰ってきた。サゴはここで部屋に戻り就寝。」
「ちなみにそこらへんから俺の記憶は抜けている。」
「残ったカサ、日光さん、私、ハツガさん、ミノリ、そしてお前はさらに夜を更かしていって……ミノリを残して一斉に部屋に戻っていった。」
すると、そこでカサが恐る恐る手を上げる。
「……私は少し覚えている。確か部屋を間違えたのだ。」
「あまり関係無さそうですが……どの部屋と?」
「それが分からないんだ。いたのは、イツキとまぐろと日光さんとハツガさんだ。」
イツキは首を傾げて問う。
「あれ?レイさんはいなかったのか?まぐろと一緒に寝てるはずだけど。」
「部屋割りが意味を成していない状況だった。どちらかが無意識の内に自分の部屋に戻ったということだろう。」
「なるほどね……。」
感心しているイツキだったが、あまり有益な情報では無さそうだ。
一連の流れを聞いていたヒラメは、困惑した表情を浮かべていた。
「どうにも真相が掴めませんわね……当のお二人も、少しは喋ったらどうですの?」
お二人とは、レイとまぐろのことである。これまで、レイとまぐろは一言も喋っていないのだ。
ヒラメが呼んでも反応がなく、二人はただ下を向いていた。
「こういうので一番騒ぎそうなのはレイさんだけどな……。」
イツキが呟くと、レイの体がピクッと微動した。
「あれ?レイさん。」
「ふひゃっ、ひゃい!」
試しに名前を呼んでみると、レイは何とも間抜けな返事をした。ヒラメのときは全く反応が無かったのに……やはりこの事が原因か。ヒラメが手招きをしてイツキを呼ぶと、ヒラメは耳打ちをした。
「この二人に話を聞けそうなのはお前くらいですわ。お願いできますか?」
イツキは頷き、レイの前に歩み寄った。
「レイさん。昨日の事で、何か覚えていることはありますか?」
「えっ、あっ、うん……昨日の……こと?」
照れながら上目遣いをするレイ。
「なんか女を出してきてる!?」
内心ドキッとするイツキだったが、今はそんなことを思っている場合ではない。
「えっと……何か覚えている事があればお願いします。」
レイは十数秒の思案のあと、口を開き話し始めた。
「酔ってた……のは覚えているよ。その……イツキ君……に、か、かかかか介抱されたああああああ!!!!!」
「うわっ!?」
突如叫びをあげるレイに、一同困惑。怪訝そうな顔をしていた(約1名は変わらず下を向いていたが)。
頬に汗を垂らし、イツキはレイに続きを促したのだが。
「お、覚えてるのはそこまでなのだよ……。ただ……。」
「ただ?」
「じ、自分……で……その……服を脱いだ記憶……は、無い……のだよ。」
レイとまぐろ以外の全員がイツキを見る。何度目だろうか、正直辛い。耐えきれず、イツキはまぐろに話を聞くことにした。
「ま、まぐろ!!お前は?!お前は大丈夫だよな?!」
「ふひゃっ、ひゃい!」
もの凄い勢いで後ずさるまぐろ。
「お前もかよ……それで、まぐろは覚えていることはあるか?」
「あばばばばばばば。」
「焦りすぎだろ……。」
「す、すみません……。昨日のことですよね……?」
どうやら話を聞くことは出来そうだ。イツキが首肯すると、まぐろはなぞるように話し始めた。
「昨日、霧雨先輩と一緒にレイさんを部屋に送った後眠くなってしまって……それで、少し休ませてもらいました。」
それを聞き、ヒラメは直ぐ様切り返す。
「そのとき、イツキは何をしてました?」
「何と言われましても……寝てしまったので分かりません。すぐに出ていったと思います。」
「ちっ。」
「ちっ、ってなんだオイ。」
ヒラメの舌打ちにツッコむイツキ。どれ程疑われているのか。
「えっと、続きを話しますね?」
「ああ、すまん。」
「どれくらい経ったか分かりませんが、私は目を覚まして部屋を出ました。自分に提供された部屋ではなかったので……。」
すると一同は納得の声をあげた。
「だからレイさんと違う部屋だったんッスね。」
「この部分は解決、ということでよいだろう。」
そんな中、日光は顔色を一切変えずに問う。
「神崎、部屋に行ったときにすでに誰か居たか?」
「え?」
「その後カサが来たときには、俺と霧雨。そしてハツガがいたんだろ?」
「……と、言ってましたね。私が行ったときは誰もいませんでしたよ。」
「成程な。読めたぜ。」
日光はフッと笑うと足を組み珍妙なポーズをとった。一体何が読めたのだろうか。
「どういうことですか?日光先生。」
イツキが聞くと、日光は別のポーズをとりこう言った。
「分かったんだよ。この事件の犯人がな。」
一瞬にして部屋がざわめく。
「分かったんッスか?!」
「教えろ、日光!!今すぐに!!!」
「まあそう焦るなよ。ゆっくり闇にでも飲まれようぜ。ミノリ!」
「はい。」
日光が部屋の外にいるミノリを呼び出した。
「コーヒー。」
「かしこまりました。ブラックでよろしいですか?」
「ミルクも砂糖も多めで。」
「苦いの飲めないのかよ。」
今のはミノリだ、ミノリがツッコんだ。衝撃的だったのだろう。誰も何も言えなかった。
3分後にミノリがコーヒーを持ってくると、日光はそれを一口飲んだ。
「うん、これくらいで丁度いいな。」
「……えっと日光先生?そろそろ話してもらっても?」
イツキが頬に汗を垂らしながら聞くと、日光はそうだったと言ってカップを置き話し始めた。
「部屋割りはこうだ。俺とツユ先生とカサとサゴ、霧雨と海岐華、神崎とハツガだったか?」
「はい。そっちだけ異様に多かったですよね。」
「まあ、それはあまり関係ないんだが。ここまで話を聞いてなんだが霧雨。こんなこと無意味だ。」
「え。」
「ミノリ。」
「はい。」
「犯人はお前だな?」
「ええええええ!?」
突然の指名に驚く面々。
イツキだけは「やっぱり」といった面持ちだったが。
「私……ですか?」
「ああ。これはお前が仕組んだこと。そうだろ?」
「ええ、そうですよ。」
「な、なにぃぃぃ!?」
急な自白に驚く面々。
イツキだけは先程と変わらない面持ちだったが。
「それにしてもよく分かりましたね。正直イツキ様が気付かないのは笑えました。」
「はい!?」
「日光様。言ってさしあげてはどうでしょう。」
「そうだな。霧雨。ミノリが部屋に入ってきたとき、なんて言ってた?」
「え?」
イツキは今朝の事を思いだしてみた。
「確か、おはようございますイツキ様とかなんとか。」
すると日光が大きなため息を吐いた。
「はぁ……。そのときにカサ様って言ってただろ。」
「ああ、言ってました。」
「……え。気付かねぇの?」
「……?もしかして、カサがいるはずないのに名前を言ったから?でも実際にはいましたよ?」
イツキの言葉にもう一度大きなため息を吐くと、カサを指してこう投げ掛ける。
「場所の問題なんだよ!あいつは一人暗闇にいた!なのに名前を言った!これで分かったか!?」
「暗闇?暗闇……あっ。」
どうやらピンときたようだ。
「そっか!ベッドの下はシーツで隠れているのに、カサの名前を呼ぶのはおかしい!!ミノリさん、犯人は貴女ですね!?」
「それさっき俺が言った。」
日光を無視してミノリの方に振り返る。当のミノリは見下すような目で見ていた。
「はっ。」
とどめに鼻で笑うと、ミノリは部屋を出ていった。
「な、な、な、なんなんだあの人は……みんな!!ミノリさんを追いかけるぞ!!」
「あの~……。」
恐る恐る手を挙げて、イツキを制したのは、まぐろだった。
「なんだ、まぐろ?」
「とどのつまり、私達は事を起こしたのでしょうか?」
「あ。」
そうだ。犯人捜しをしていたが、最も重要なのはやったのかやっていないかなのだ。
そう思い、イツキが日光に問う。
「どうなんですか、日光先生。」
「いや知らねぇ。俺が分かったのは犯人だけだ。」
「……。」
沈黙する二人。何とも嫌な汗が噴き出してくる。
そのまま数秒固まっていると、扉が開く音がした。見やるとそこにはミノリの姿があり、手にはビデオカメラを持っていた。
ミノリはイツキを真っ直ぐ見つめて口を開く。
「何も起こってませんよ。」
一瞬意味が分からなかったが、それを理解すると確認するように聞き返してみた。
「何も……?起こってない……?」
丁寧にゆっくりと言葉を紡ぐと、彼女は首肯した。
「カメラで録画しておいたのですが、何も映っていませんでした。」
「やっ…………やったあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!何も!!!!起きてない!!!!よかったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
イツキは雄叫びをあげた。
それは自分でも予想外の行動だったのだが……それほど嬉しかったのだろう。
ミノリにツッコミを入れたい部分は多々あるが、今は泣いているまぐろや胸を撫で下ろすハツガと手を取り合い、喜びあっていた。
「よかったです……霧雨先輩…………。」
「ああ、心配かけたなまぐろ……。ハツガもごめんな……。」
首を横に振るハツガ。
カサの方を一瞥してみると、サゴと泣いて喜びあっていた。レイは何故か少し残念そうに見えたが。
一通り喜びあうと、イツキはヒラメのもとに歩み寄った。
「何はともあれ、こうして身の潔白が証明されたんだ。解放してくれ、ヒラメ。」
「……そうですわね。疑って申し訳無かったですわ。」
頭を下げるヒラメ。それを見て、イツキは苦笑しながら許してあげた。
「あの。」
平和に終わったかに見えた事件だったが、突如水を差す者がいた。ミノリだ。
「このビデオカメラ、見てみますか?今なら5人の裸体を見ることが出来ますが。」
「今すぐに消せえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
その時のイツキの絶叫は、今朝のものとは違いとても平和染みた絶叫だった。
…………それにしても、日光先生は何が読めたんだ?結局、皆の話は真実には関係無いようなことだったし……あの人、最初から分かってたんじゃ……?
こっちの方は迷宮入りだな。
「只今帰還しました。」
片膝を突いて頭を下げる。
海底の古城奥深くに存在する部屋。そこには、今しがた帰還したカラス。そして椅子に座した海底の古城長が居た。
「負けたのか?」
長が発した質問に答えるため、カラスは顔を上げた。
「……はい……恥ずかしながら……。」
「いや、いい。働きとしては十分にやってくれた。」
「…………。」
しかしカラスは、納得のいく表情を見せなかった。それを咎めた長がカラスに問うと、こう答えた。
「……はい、長。何でもありません。」
何もない者がそういった顔はしないだろうが……詮索しても無駄だと判断したのだろう。長はそれ以上聞くことはなかった。
「……下がっていい。命あるまで待て。いいな?」
「はい。」
今一度、頭を深く下げるとカラスは部屋を出ていった。
こんにちは、そしてはじめまして。
アフロ月です。
萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
稚拙な文章で理解しがたいところがあれば、私の勉強不足です。申し訳ありません。
さあ、第三章ですが……イツキ……あんたってやつは……。
皆が喜びあっているなか、レイが残念がっていましたが、そう捉えてもよいのでしょうか。
まあ、こっちの真相も迷宮入りということで。
続く第四章では…………確かになる真実を聞いて、イツキ達は目的地を決定!!ここから動き始めていきます!!
最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう!
Thank You♪




