第九章「鳥、猫、双子」
黒猫「珈琲はとても繊細なんです。」
イツキ「え?」
黒猫「お湯の温度や焙煎の仕方で大きく味が変わるんです。」
イツキ「は、はあ……。」
桃の国解放戦線編
第九章「鳥、猫、双子」
「お姉さんたち、なーに?」
「正義の三猫だ。少女よ、お主こそ何をしておる。」
雨の降る桃の国ヨザクラでは、青の国傭兵育成機関『海底の古城』の青十文字に所属するヒナ。
そして桃の国傭兵育成機関『夜街の街路樹』長の茶々猫、同じ三猫の白猫、黒猫が邂逅を果たした。
「お、お姉さんが……じゅる……送ってぇあげるよ……ぐへへへ……。」
「白猫……絶対に手は出さないでくださいよ。」
今は青の領地となっている桃の国。
だが、ヒナが青に所属していることを三猫は知らず、逆もまた然りなのだ。
「あのね、あのね、エトが迷子になっちゃったの!」
「エト?保護者かの?」
「違うよ!ヒナがほごしゃだよ!」
「…………ヒナ?」
「うん!ヒナはヒナだよ?」
「……。」
三猫は顔を見合わせた。
黒猫の情報で、ヒナとエトという名前だけ知っていた。
つまり……ここを統治する一人が、目の前にいるのだ。
「……まさかこんなに小さな女の子だったとはのう……。」
「……?ヒナね、ヒナね、エトを探してるんだけど、知らない?」
「いや……知らない。だが、一緒に探してみようかの。」
「ほんとに!?ありがとう、猫耳のお姉さん!」
「よいのだよいのだ。」
三猫とヒナは、共にエトを探し始めた。
・・・・・・・・・
「なあ、霧雨イツキ。」
「どうしたんです?ヒバリさん。」
「いや……こんなに堂々と戦っててもいいのか?」
「いいんですよ、陽動みたいなものになるでしょ?」
ヨザクラの一部は戦場へと化していた。
イツキ、カサ、ヒバリのチームイカバリが、群がる兵達をなぎ倒していっているのだ。
「敵戦力の分散は効果的です。大事なのはこいつらじゃなくて……青十文字の四人です。」
「……そうか。じゃあ、まだまだ暴れていこうか!」
ヒバリは刀を鞘から抜かずに、相手にダメージを与えていた。
カサは槍を扱い、大胆に立ち回っている。
すると、イツキとカサが背中合わせになった。
「カサ、調子はどうだ?」
「話しかけるな。気が散る。」
「……すまん。」
「謝る必要はない。気を抜くなよ。」
「勿論だ。今日も三葉崩しは絶好調ですから、問題ないですよっと。」
イツキの専売特許が受け流し。
三葉崩しと名付けたその受け流しの技を、イツキは得意としていた。
「……こんなもんか。」
最後の一人を気絶させると、イツキはそう呟いた。
「霧雨イツキ、怪我は無いか?」
「ん?ああ、はい。大丈夫ですよヒバリさん。そちらは?」
「問題無い。」
「それはよかった。」
イツキはカサにも視線を合わせた。
「カサは大丈夫か?」
「…………。」
「ど、どうしたんだよ、ほっぺを膨らませたりして。」
「……何でもない。私なら大丈夫だ。」
「お、おう……それならいいけど……。」
カサは少し怒っているようだった。
霧雨一行の女性は怒ると怖いので注意しなければならない。
「じゃ、じゃあ次に行こう。ヒバリさん、エトさんなら次に、どこに人を配置させます?」
「次は向こうだ。」
……ヒバリは元は古城所属だった。
エトが仕切っていると踏んだイツキは、エトをよく知るヒバリに、指示を仰いでいた。
「了解です。……あの、ヒバリさん。」
「ん?」
「……ヒバリさん、本当にこっちに来て良かったんですか?」
「こっちって……緑の味方になってってことか?」
「はい。出会って半日くらいで仲良くやってましたけど……。」
「あー……霧雨イツキはどう思う?」
「…………そうですね……。」
イツキは少しの思案の後、こう話した。
「俺は仲間が増えることは歓迎します。ですが、箱庭で犬槇が言っていたことも分かるんです。俺達はまだ貴女の事をよく知らないし、貴女だって俺達の事をまだよく知らないと思いますから。」
「……まあそうだな。」
「でも、今は仲間なんです。隣にいるのは俺達なんです。ヒバリさんが俺達を仲間だと思っていなくても、俺達はヒバリさんの隣に、確かに立っていますから。だから、もし戻りたいって言うなら、迷うと思いますけど……決めるのはヒバリさんですから。その時は仲間として止めるか送り出すかしますよ。」
「……お前、臭い台詞言うんだな。」
「なっ……!」
「でも……アタシはお前が気に入った。友達が居た。だからついてきたんだ。」
「友達ですか?」
「雨燕の事だ。……ま、その話はいつか話してやるよ。とりあえず今は、青達の相手をしないとな。」
ぞろぞろと、いつの間にか集まってきていた青の兵。
「カサ、ヒバリさん。死なないようにお願いしま…………。」
「……霧雨イツキ……?」
イツキの言葉が途中で止まる。
勿論理由があった。
「…………聞いたことある声だなーとは思ったッス。」
「…………奇遇だな。俺も今そう思ったよ。」
男が一人、道を空けた兵達の中から歩いてきたからだ。
「久しぶりッスね。イツキさん。」
「久しぶりだな。サゴ。」
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
ッスッス言う男がやっとこさ登場したわけですが……。
どうにも最近別の作品でッスッス言わせてた女の子がいましてね。ちらついてしまいますわな。
後書きまで読んでくださってありがとうございます。
Thank You。




