第一章「変奏曲を戻しにいく」
スズメ「……あれ?私のイントネーション言ったっけ?言ってないよね?」
ヒナ「言ってないよ!」
スズメ「鳥の『雀』と同じイントネーションよ。沖里は『二宮』と同じよ。」
ヒナ「にのみや?」
桃の国解放戦線編
第一章「変奏曲を戻しにいく」
「カサ、そこの木材を取ってくれ。」
「盗って?盗みは駄目だ、イツキ。それではな。」
「ニュアンスが違う……。……じゃあヒラメ、そっちの木材を取ってくれ。」
「人にものを頼む姿勢がなっていませんわ!私を誰だと思ってるの!?」
「…………もういいです。」
緑の国傭兵育成機関『深淵の箱庭』。
3ヵ月前に、青の国に襲撃された校舎は損傷していた。
一時しのぎだが、壁の修復作業を簡易的に行っていた。
「はぁ……。」
溜め息を吐き、木材を手に取るのは霧雨 イツキ。
青に反抗するための組織、霧雨一行のリーダーである。
歳は18。緑色の髪をした中性的な顔の青年だ。
深淵の箱庭を占領していた青の国傭兵育成機関『海底の古城』幹部、青十文字の八頭を撤退させて、奪還を成功させた。
「霧雨先輩!次はどうしましょうか?」
とたとた早足で駆けてきたのは、神崎 まぐろ。
顔の左側を前髪で隠した、ボブカットの少女だ。
イツキとは3歳差の15歳でタッグを組んでいる。
「そうだな……あっちにいる日光先生の手伝いをしてやってくれ。金槌は持ってた方がいいと思う。」
「はい!ありがとうございます!」
イツキが傍らに置いていた金槌を手渡した。
まぐろはまたも、とたとた駆けていく。
小動物のようで可愛らしい。
イツキはその背中を見送り、作業へと戻った。
「これは……あっ、金槌。」
釘を打ち付けようと思ったのだが、終わっていないまま、まぐろに金槌を貸してしまった。
誰かに借りるしかない。
キョロキョロと辺りを見回すと……。
「イツキ様。どうぞ。」
「ああミノリさん。ありがとうございます。」
「恐縮です。」
ふわふわしたレースを頭に乗せたメイド、ミノリが金槌を貸してくれた。
揃えた前髪と三編み。
先程イツキの頼みを断ったヒラメのメイドとして、又仲間として霧雨一行に加入した。
頭は良いが、からかうのが好き。
「よく気が付きましたね。」
「見てますので。四六時中。」
「いや怖いっす。」
「お風呂も、御手洗いも見てます。ご褒美でしょう?」
「怖っ!!ってかご褒美じゃないし!」
「冗談です。……前者は。」
「今なんつった。……とにかく、ありがとうございます。」
会釈をして、イツキは作業に戻った。
・・・・・・・・・
「ふぅ…… 。」
「お疲れ様です、霧雨君。」
きりもよく、休憩をしていたイツキ。
隣には、箱庭の教諭ツユが座っていた。
灰色の髪をした真面目な女性である。
「ツユ先生も、お疲れ様です。」
「あとどのくらい時間がかかりそうかな?」
「そうですね……。損傷部分は少ないですから……まあ、一週間あればなんとかなります。……きちんとした業者に頼むのは、もっと先になりそうですけど。」
苦笑ぎみに言うイツキ。
「そっか……。これからどうするの?」
「これからというと……次の目的ですか。」
「ええ。箱庭奪還の次です。」
「白の国に行きます。モチさんをお返しして、桃の国解放ですかね。」
「…………なんだと?」
と、口を挟むのは茶々猫。
桃の国傭兵育成機関『夜街の街路樹』の長だ。
「イツキよ、それは本当なのか?」
イツキの後方にいたらしい茶々猫は、赤い髪、魔族で獣人特有の獣耳、そして脚が綺麗である。自慢の脚を見せるため、スリットを入れた着物を着ている。
「茶々猫さん。……本当です。」
「本当の本当なのか?」
「本当の本当です。油断は出来ませんが、青の戦力は確実に落ちている。この戦力で桃の国を解放するのは可能かと。」
「ふむ……。のうイツキ。桃を解放してくれるのは嬉しいが、何か理由があるのだろう?」
「船です。」
桃の国……そして『夜街の街路樹』があるヨザクラでは貿易が盛んなのだ。
「成程のう……。海から攻めるということか。」
「正確には、徒歩や馬車以外の移動手段が欲しいんですよね。内陸部って青だけですから、時間はかかりますがかなり安全に他国に渡れるかと。」
「ほう……。」
納得のいく茶々猫。
確かに船が使えることは大きいかもしれない。
無人島でも見つけようものなら、拠点にすることだって可能だ。
「まあ、桃の国に行くときは妾を連れていってくれ。」
「はい。……でも、そんなこと言わなくても全員連れていきますよ。」
「え?」
「え?」
茶々猫は何故、首を傾げたのだ?
「何ですか、茶々猫さん。」
「何を言っておるのだ。ここの守護が必要であろう。」
「……あ。そっか……。」
まだまだ問題は山積みのようだ。
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
またもや始まった新編!「桃の国解放戦線」編!
黒い雪原編が長かったので、前の深淵の箱庭奪還編がとても短く感じます!
ではでは!後書きまで読んでくださってありがとうございます!
ブックマークしてくださる方も増えてきて嬉しいかぎりです!
Thank You。




