第二十一章「ナイスホールディング!」
レイ「あああああああ!!働きたくねぇ!!」
深淵の箱庭奪還編
第二十一章「ナイスホールディング!」
その後も散々だった。
いくつもの罠を潜り抜け、霧雨一行は心身ともに傷付きながらも、最後の罠へとやって来たのだった。
「単純で、これが一番難しい。……って言われたことがある。」
イツキがそう言った。
最後の罠は綱渡り。
距離は25メートル程だ。
「余裕ですね。」
「余裕。」
「簡単だねぇ~。」
イツキの後方にいた、ミノリ、ハツガ、モチの三人が発言をした。
……と思った矢先、イツキの脇を通り過ぎ、走って綱を渡り始めた。
「うおっ!?」
「……何を考えていますの……。」
相当な無茶だ。
……それで無事に渡りきるのもおかしいと思うが……。
「早くしましょうよ。」
ミノリが煽ってくる。
……この状況では不必要だと思う。
「分かってると思うけど、皆はあんな風に渡らなくていいからな。」
「勿論ですわ……。」
素直に忠告を聞き入れてくれたようだった。…………ヒラメは。
「上等だごらぁ!!」
「おい犬槇。」
「瞬きで渡りきってやるよ……!!」
「日光先生ー?」
「あまりなめないことです!!」
「雨燕まで?」
「やってやるぜ……!」
「ヒバリさんもかー……。」
一斉に駆け出す四人。
綱が千切れなければよいのだが。
「……。」
「「うおおおおお!!!」」
「…………。」
「「どうだぁぁぁ!!!」」
「渡っちゃったよ!!」
いつもなら、こんな時は落ちるのだが……。
「お前ら凄いな……。」
「あとは霧雨と妃懦莉だけだな!」
向こう側に渡った日光が叫んだ。
確かに、あとはイツキとヒラメの二人だけだった。
「……行こうかヒラメ。鉄棒の豚の丸焼きみたいに渡っていいからな。」
「そ、そんなのやったことありませんわ!」
「え、嘘……ヒラメは鉄棒をやったことないのか?」
「いえ、豚の丸焼きをです。」
「そっちか。じゃあ俺が先に行くから見ててくれ。」
ヒラメが首肯して、イツキは綱を渡り始めた。
体が重力で持っていかれないよう、両手両足でしっかりと縄をホールドした。
「ナイスホールディング!」
日光が褒めて……くれたのだろうが。
「別に嬉しくねぇ。」
とだけ呟いておいた。
順調に渡るイツキ。
あとは後続のヒラメがきちんと渡れていれば……。
イツキはヒラメを一瞥してみた。
「…………ヒラメ?」
「な、なんですの!?」
「進んでなくね?」
「ば、馬鹿言わないでくださいまし!」
……しかしどう見ても、ヒラメは進んでいなかった。
豚の丸焼きは出来ているのだが……。
「早くしないと、腕がもたなくなるぞ。」
「……ええい、分かりましたわ!!!」
覚悟を決めたようだ。
「…………はあっ……はあっ……!」
「何でそんなに息が荒れてるんだ!?」
「五月蝿いですわよ!さっさと進みなさい!」
「はいはい……。」
安定感はある。
油断さえしなければ大丈夫だ。
イツキは無事によじ進み、皆が待つ足場へと渡った。
「ふぅ……あとはヒラメだけか……。」
「お嬢様、ファイトです!」
ミノリの声援にヒラメは応えられるのだろうか。
……否、応えなければならない。
時間が惜しいのだ。
ここに入り、4時間程経過している。時折、無線を使いまぐろに時間を聞いているので、それは分かるのだ。
ということは、今は13時過ぎ。
上では何が起きているのか……。
「はあ……はあ……やりましたわ……!」
イツキが考えこんでいると、いつの間にかヒラメが渡ってきていた。
「頑張ったな、ヒラメ。」
ヒラメの肩に手を置くと、ヒラメは笑顔をおくった。
「ふふふ……。」
……前言撤回。
笑っているが良い笑顔ではなかった。
ともかく、これで罠は全て突破した。
この先の出口に向かえば深淵の箱庭1階に出られる。
「さて……じゃあ行こうか。」
イツキの言葉に皆は首肯した。
約一名、少し寂しげな顔をしていた。ヒバリだ。
ヒバリは青の幹部。
今は脱出のために休戦中だったが本来ならイツキ達の敵なのだ。
ここを出た瞬間、敵同士となる。
「俺は迷わないけどな。」
犬槇がそう言った。
見すかされているようだ。
「こいつは俺達の機関を襲撃した。ここでは仕方無かったけど、外に出たら俺は迷わずお前を敵とみなす。」
「構わねぇよ。アタシだって、お前なんかぶっ潰してやるからよ。」
売り言葉に買い言葉。
本当にどうにもならないのだろうか。
「……今はいい。進むぞ。」
「……了解。」
その後すぐに見えた、光が射し込む出口に向かう。
頑丈そうな扉で、開けるのにイツキ一人では無理そうだった。
「男でやるぞ。」
日光と犬槇が加勢してくれた。
思いきり力を込めて、押す。
「ぐっ……!!!」
押したが駄目だった。
びくともしない頑丈な扉はとても重く、仕方無いので人数を増やした。
ヒバリとミノリ、ハツガが加勢するも……やはりびくともしない。
「重っ!!何これ本当に開くの!?」
疑うも、だからといって開くわけではない。
まさかこんなところに伏兵がいたとは……。
「押しても駄目なら引いてみな。」
と呟いて、イツキは扉を引いてみた。取っ手があるからまさかとは思ったが……。
「…………。」
「……イツキ様。」
「……開きません。」
「……イツキ様、横は。」
「……。」
開いた。
まさか横だとは思わなかった。
「開いたよ……開いたけど……。」
さらなる問題が立ちふさがった。
「動くなよ。」
銃を構えた青の兵達に待ち伏せされていたのだ。
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
やるときゃやる霧雨一行です。
落とすか、と思いましたがだれそうなのでやめました。
次もお楽しみにー。
Thank You。




