第二十章「角材は速い」
ユキ「やっぱりだ……!これ、モチがやっちまったやつだ……!」
深淵の箱庭奪還編
第二十章「角材は速い」
「…………!?」
目を覚ましたイツキ。
地面には赤く溜まった液体。
だが、体には傷一つ無かった。
「あはは……ギャグ補正って凄いな……。」
苦笑いをするしかなかった。
…………あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。
「戻らないと……。」
罠を突破することが出来ず、イツキは最下層まで落ちていたようだ。
また鉄球に気を付けながら、進まなければならない。
「……そりゃ死にたくもなるわな。」
精神を削られていく。
もう駄目だと思わない方がいい。
皆で出るのだ。
この落とし穴を。
・・・・・・・・・
「帰ってきましたわね、イツキ!」
「お前もな、ヒラメ。」
再び罠の間へとやって来たイツキ。
登り階段へ行くと、そこにはすでに復活していた仲間達が集まっていた。
「ヒバリさん……!」
「おう。……霧雨イツキ……お前な、アタシが体張ったってのによう……。」
「すみません……でも。こうやって罠が解除されてるから、いいじゃないですか。」
「まあ……ってか、どうやって解除したんだ?」
「え。えっと……。誰ですか?これ解除したの。」
見回してみると、ふらふらっと手を振る女性がいた。
「私だよぉ~♪」
「……えっ、嘘!?モチさん!?」
「本当だよ、イツキくん。」
笑顔をふりまくモチが……。
気になる。
誰も出来なかった解除をどうやって……?
「モチさん……貴女、どうやって解除したんですか?」
「え?ボタンだから、ポチッと押したよ。」
「成程、確かにボタン操作ですからね。……じゃなくて!」
普段しないノリツッコミをしてしまった。思ったよりも動揺しているのか……。
「どうやってこっち側に渡ったんですか。」
「どうだろうねぇ~。細かいことはいいんじゃないかなぁ~?」
「…………。」
……腑に落ちないが……問いつめようとは思わないし、恐らくかわされる。
とどのつまり、聞いても無駄だと思った。
「……それじゃあ、行こうか。」
・・・・・・・・・
長い階段を上がっている途中、雨燕が話しかけてきた。
「イツキさん、少しいいですか?」
「いいけど……どうした?」
「先程……ではないですね。私と罠を解除しようとしている際、イツキさん、『変な感じだな』って言いましたよね。」
「……あー……言ってたな。無我夢中であまり覚えてないけど。」
「どういう意味ですか?」
「うん……。ここって、緑の国で、深淵の箱庭なのに、雨燕や犬槇……他国の二人があんなにも助けてくれるなんて……何か変な感じだなって思ったんだ。」
苦笑するイツキ。
すると雨燕は、微笑んだ。
「仲間ですから。」
「……そうだな。そうだよな!」
イツキは皆の前に躍り出ると、大きく息を吸った。
「みんな!罠の間はあと5つ!頑張っていこうぜ!!」
「「おおー!」」
高らかと手を挙げる、イツキと仲間達。
その時。
「ぬはっ!!」
横から飛び出た角材に、体ごと持っていかれるイツキ。
一瞬のことで、仲間達にはエコーだけが聞こえた。
「構えろ!!」
日光が叫ぶと、一行メンバーは各々武器を構えた。
「何が起きた……!?霧雨はどこだ!?」
「分かりませんわ!…………あっ!横で倒れてますわ!」
「角材やべぇな!!」
「やべぇですわね!!」
「…………ぐふっ……忘れてた……ここだった……。」
イツキの意識は遠のいていった。
「霧雨!2回目の脱落早いな!?」
「それがイツキですわ!体を張って、私達に罠の存在を教えてくれたんですのよ……!」
日光にヒラメが二人で盛り上がっていると、ミノリとハツガは腕で目元を覆った。
「イツキ様……貴方って人は……!!」
「今回の作戦のMVPはイツキ……!!」
比較的冷静な雨燕、犬槇、モチ、ヒバリは苦笑しているが、動揺はしているようだ。
「角材は速い!一気に突破するぞ!!」
駆け出す仲間達。
イツキを担ぐのは日光だ。
「おい霧雨!起きろや!」
「…………。」
「霧雨!!」
往復ビンタをかます日光。
「おぶぶぶぶぶ!!!」
「起きたか!?」
「日光……先生……何すんだ……。」
気絶するイツキ。
逆効果だったようだ。
・・・・・・・・・
「はぁ……はぁ……!」
大広間に出た一行とヒバリ。
角材の罠は突破出来たようだ。
「みんな無事か!?」
「一人いませんわ!」
「ああ!?」
大広間に辿り着いたのは、日光、イツキ、ヒラメ、ミノリ、ハツガ、犬槇、モチ、ヒバリの8人だった。
「雨燕か……あいつ……。」
肩を落とす日光に、モチが口を開けた。
「着物は、着物は走りにくいぬふぁ!!……って言ってたよぉ~。」
「またかよ!?……あいつには走らせちゃ駄目だな……。」
罠、残り4つ。
メンバー8人。
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
ギャグ補正を体感したイツキ。
恐ろしいですね。
因みにこの落とし穴と罠ですが、現実でも似たような気分を味わうことが出来ます。
ゲームでセーブをせずに進んで、ゲームオーバーになった……っていう気分と同等です。
あの虚無感が、今イツキ達が味わっているものです。
最後に、後書きまで読んでいただきありがとうございます。
次回、そして最終章の灰色図書館も是非ー。
Thank You。




