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萌葱色の変奏曲  作者: アフロペンギン
深淵の箱庭奪還編
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第十九章「一方だけなら」

まぐろ「何だか嫌な予感がする……。霧雨先輩が大変そうな気もするし、別の灰色図書館って小説も面白い気がする……!しかも灰色図書館、もう少しで終わりそうな気がする……!!」

 深淵の箱庭奪還編

 第十九章「一方だけなら」




「な、なんで俺なんだよ!?」


 深淵の箱庭地下で、イツキは問いかけた。

 広大な罠を突破するため、刀と剣を木製の壁に刺しながら渡る……というかなり無茶な案を出した犬槇いぬまきだったが……実行するのは犬槇ではなくイツキだったのだ。


「えっ……だって、力があって比較的軽いのはお前くらいだろ。」

「ヒバリさんとか。」

「アタシか!?アタシは……ほら、力は無いからな。」

「暗に自分のこと軽いって言ってます?」

「はあ!?ぶっ飛ばすぞ霧雨イツキ!!」

「す、すみません。」


 迫力に圧されて、自然と口から謝罪の言葉が出てきた。


「行ってこいよ。どうやらアタシは、こいつに嫌われているらしい。アタシも嫌いだけど。」

「そう言うことだ。イツキ、頼む。」


 残るモチや雨燕あまつばめも、確かに見た目では非力かもしれないが……。

 仕方無い。


「分かったよ。男として……いや、漢としてやってやるよ!!」


 意気込むイツキは、犬槇と雨燕からそれぞれ剣と刀を受け取った。


「そこまでマジにならなくても……まあいいや。頼むぞイツキ。」


 と、犬槇から、剣を渡される際にそう言われた。

 無言で親指をグッと立てておいた。


「さてと……。」


 壁に刺すといっても、まずはその壁まで行かなければならない。

 無論、その間も矢や石が飛んでくる。


「ふぅ………………よし。」


 一つ息を吐き、イツキは階段を出た。

 全速力で左の壁へと駆ける。


「……!!」


 矢が飛んできた。

 右手に持っていた剣を使い、ガード。

 後ろも忘れてはならない。

 一瞥すると、すぐそこまで石が迫っていた。


「わっ!?」


 咄嗟に屈んで回避。

 危なかった……と、安心している暇はない。

 前から石が飛んできたのだ。


「石は……。無理だな。」


 矢と比較すると、少しだが石の方が速度は遅い。

 石は避けることにした。


「よし……。」


 いけると思った。

 その時だった。


「イツキ!後ろだ!」

「ぐっ……あっ……!」


 矢が……背中に刺さった。

 痛い。

 ここでは死なないとは言え、痛みは味わうのだ。


「くそっ……!」


 止まっては駄目だ。

 イツキは再び駆け出した。


「霧雨イツキ!」


 後方から声がして、振り返ろうとしたのだが……。


「向くな馬鹿野郎!一旦止まれ!」

「えっ……はい!」


 声の主はヒバリだった。

 何をしに来たというのか。


「霧雨イツキ。背中合わせだ、お前は前だけに集中しとけ。」

「でもヒバリさん、武器は……!」

「刀貸せよ。」

「あっ……はい。」


 雨燕の刀を、ヒバリに手渡した。

 こうやって話している間も、矢、そして石は飛んでくる。

 だが……。


「一方だけなら、対処しやすいです。」

「だろ?」

「ありがとうございます、ヒバリさん。」

「いいんだよ。」


 ……実は。

 実はイツキは見てしまったのだ。

 振り返ろうとしたとき、ヒバリの体には矢が数本刺さっていたのを。


「ヒバリさん……すみません。」

「何を謝ってんだ?集中して進め!……いいな?」

「はい!」


 ヒバリの助力もありながら、イツキは壁際までたどり着いた。


「ゴホッ……着いたか、霧雨イツキ。」

「ヒバリさ……」

「だからこっち見るんじゃねえ!!……ほら、刀。」

「……。」


 イツキは黙って受け取った。

 鍔が少し赤くなっていたが……気にしている場合ではない。

 イツキはその刀を、壁に、鍔まで差し込んだ。

 柄を足場にして、剣をさらに上へ差し込む。

 一度下へ降り、刀を抜いた。

 脚に力をこめて跳び、鉄棒のように剣の柄部分を握ると、体を持ち上げた。


「ぐっ……!!」


 右手の刀を再度、壁に差し込む。

 左手の剣を抜き、壁に差し込む。


「おお!これで上がっていける……!やりますね、イツキさん!」


 雨燕あまつばめもイメージが出来たようだ。

 この調子で、後は横へと進むだけだが……。


「……ヒバリさん!ありがとうございました!」


 イツキが叫ぶも、返事はなかった。

 ……心配だ。だが、振り向かない。

 下見てないで上を見ていく。


「ぐっ……!」


 腕が痛い。

 普段から懸垂でもしておくべきだったか。


「……諦めるかよ……!」

「イツキ!」

「イツキさん!」

「頑張れ~!」


 その『声』が嬉しかった。

 これだけで、頑張っていける。


「背負ってるもん、あんだよ……!」


 自らを鼓舞する。

 黒の国でもそう言った。

 リーダーとして、背負っているものが沢山あるのだ。

 もし、ここで諦めようものなら、彼らは階段すら出られない。本当に手も足も出なくなってしまう。


「……みんな!!」

「何だ、イツキ!」

「声を……聴かせてくれ……!!」

「声……!?」

「俺を応援してくれぇ……!!」

「……分かった!雨燕、モチさん、いくぞ!」

「「押忍!!」」



 三三七拍~~子!!

 あ、そ~れ!

 ピッピッピッ!

 ピッピッピッ!

 ピピッピピッピ!

 ピピッピピッ!

 はぁ~……はっ!はっはっ!

 でやぁ!!

 我々、霧雨一行応援団!

 霧雨イツキを~~……ぉぉおおオオオ!!

 応ッ援ッ致しまぁぁす!!



「すまん、やめてくれ。」

「何でだよイツキ!」

「ツッコミどころ満載なんだよ!こんなときにボケるな!!」

「イツキ!!」

「何だよ!?」

「ボケてねえよ!」

「それはそれで問題だよ!!」

「嘘だよ!!」

「だろうな!?……あっ。」


 手が滑ってしまった。

 まずい。落ちる……!


「落ちたあぁぁぁぁ!!」

「イツキ!!」


 待っていましたと言わんばかりに、矢や石が飛んでくる。

 地面はヌルヌルで、着地に失敗、足をくじいた。


「だああああ!!何なんだよもう!!」

「イツキ!走るしかねぇ!」

「結局はな!!」


 仕方無いと思い、イツキは駆けた。

 壁の左側……左の罠は避けられない。ならば……いっそ捨てよう。

 集中するのは右から飛んでくる罠だけだ。


「ぐっ……!」


 早速、左の壁から放たれた矢が腕に刺さったようだ。


「……フッ……一方だけなら、対処できるんだよ……!!……ぐあっ……!」


 ……石のせいで切れてしまったのか、頭から血が流れ出した。


「……はっ……まだまだ……だな……!」

「イツキ!!」

「イツキさん!!」

「……は……?」


 犬槇と雨燕の声。

 だがそれは、あまりにも近くで聞こえた気がした。

 振り返ろうか?

 しかしヒバリには、振り返るなと言われた。

 脚から、力が抜けた。

 上半身が地面に打ち付けられる。


「……はぁ……痛いなぁ……。」


 そう呟くと、目視した矢が、目の前の犬槇に……。


「……って、犬槇……!?」


 何故……ここに……!?


「諦めるなよ!!!」

「っ……!」

「何でお前は諦めようとしてるんだよ!!俺達の声は届いてなかったのか!?」

「犬槇……お前、心臓に……!」

「ここじゃ簡単には死なないんだろ……?なら、気に…………すんな……よ……。」


 犬槇の体は崩れ落ちた。


「イツキさん、立って……!」


 イツキの体を起こしてくれたのは、雨燕だった。


「雨燕……。」

「犬槇さんの言う通りです……!こほっこほっ……諦めちゃ駄目です…………私だって、盾にくらい……なれますから……!」


 雨燕はそう言うと、イツキの腕を肩にまわした。


「…………変な感じだな……。」

「はい?……うっ……!!」

「雨燕!!」

「気に……しないでください。」

「あはは……じゃあさ……俺も、お前の盾になるわ……。左の矢に石は、任せとけ。」

「お願いします。……本当、ヒバリさんの言う通り、一方だけなら対処できそうです。」

「まったくだ。」


 向こう側まで、あと20歩程だろうか。

 遠いなぁ……。


「……こほっ……。」


 雨燕の体が、ズルズルと落ち始めた。


「雨燕……!」

「…………行ってください。」


 顔を見ることが出来なかった。

 雨燕は下を向いていたから。


「……分かった、あり……がとう。」


 罠を解除さえすればいいのだ。

 解除さえ、すれば……。

 ここで……。

 無惨にも落とし穴が発動した。

 大きく開いた、深い深い暗闇に、イツキはただ吸い込まれるしかなかった。

 意識が遠のいていく。







「…………ああ、イツキくんも駄目だったか……後は私だけなんだねぇ~……。皆、本当に意識がないのかなぁ~。」


 笑顔でそう言う彼女の背に、黒い手が現れた。

萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。

いかがでしたか?

……ここの罠、強いです。霧雨一行を全滅寸前まで追い込むこの罠を、果たして本来の目的で捕まるはずの不審者は突破できるのでしょうか。

真相は闇の中。落とし穴だけにね。

……上手くないな。

後書きまで読んでいただきありがとうございます。

よければ次回。そして、あと1日で終了予定の『灰色図書館』もどうぞ。

Thank You。

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