第十六章「四つん這いでスタンバイ」
カラス「僕のイントネーションは、鳥の『烏』と同じだね。」
エト「あっ、てめぇ!!」
カラス「イントネーションを言う前にごたごたと話しているからダメなんだよ。」
エト「ぐっ……!!」
深淵の箱庭奪還編
第十六章「四つん這いでスタンバイ」
犬槇は脱落、置いていくことにした。
……残りは8人。
イツキ、日光、ヒラメ、ミノリ、ハツガ、雨燕、モチ、ヒバリは無事……防衛用トラップから脱け出せるのか…………。
「気を付けろ!スイッチは押し込まない限り大丈夫だ。一歩ずつ確かめながらいくぞ!!」
「「おお!」」
斯くして、霧雨一行の防衛用用トラップ脱出劇が始まった。
一歩ずつ確かめながら、薄暗い坑道を歩いていく。
『皆さん!?聞こえますか!?』
「……ん?神崎からか。」
「まぐろ?」
すると、日光の無線機に、まぐろからの通信がはいった。
通信部隊として、しっかりと仕事を果たしているようだ。
「こちら日光。どうした、神崎。」
『あ、日光先生……!良かった、通じて……。大丈夫なんですか!?』
「心配すんな。俺達ならセーフティだ。命あるまで待機。増援部隊にもそう伝えてくれ。」
『えっ……あっ、はい!了解しました!』
「じゃあな。」
日光は通信を切り、無線機を腰へ戻した。
「……ん?」
日光はイツキに見られていることに気が付いた。
「なんだ霧雨。」
「あ、いえ……何か、真面目だなって。」
「どういう意味だ。」
「だって日光先生ですから。」
「だからどういう意味だよ!!」
カチッ
「「あっ。」」
少し離れた場所から、ガコンという音が聞こえた。
続いて重く響く音が近付いているのが分かり……。
イツキは後ろを振り向いた。
鉄球だ。
「鉄球がきたぞぉぉぉぉぉ!!!走れ!!」
迫りくる鉄球から逃げ出す8人。
ダッダッダッダッダッダッダッダッダッカチッダッダッダッカチッカチッダッダッダッダッダッダッ……
狭い坑道なので、横に避けることも出来ない。
スイッチなど関係なしに駆けていく。
音が響きながら走っていると、先頭を走っていたハツガが、横穴を見つけた。
「早く。」
「ナイスハツガ!……あれ?」
と、イツキは違和感を感じた。
何か忘れているような……。
「ミノリさん!!スイッチ、全部で何回踏みました!?」
後ろを走っていたミノリに問う。
「犬槇様で1。この鉄球で1。逃げる途中に3なので、計5回です。」
「流石ミノリさん!って、言ってる場合じゃねえ!ハツガ!」
「何?」
横穴に入っていたハツガに向かって叫ぶ。
「その穴はフェイクだ!出ろ!!」
「え。」
横穴は突如として閉じ……閉じこめられた中には、水が放出された。
「…………あらま。」
・・・・・・・・・
「はぁ……はぁ……くっ……ハツガ……!」
本物の横穴を見つけて、難を逃れたイツキ達。
この短時間で2人も犠牲になるとは……。
「はぁ…………あれ……?一人足りないような……。」
落ち着いた直後、人数が足りないことに気が付いた。
イツキ、日光、ヒラメ、ミノリ、モチ、ヒバリ……。
「そうだねぇ~……。雨燕ちゃんがいないねぇ~。」
モチが口に出したのは、着物女の雨燕。
「雨燕……あいつまさか……。」
「着物は、着物は走りにくぶふっ!!……って言ってたよぉ~。」
「…………雨燕、お前ってやつは……。」
3人も犠牲になるとは……。
頭を抱えるイツキ。
残りは6人だ。
・・・・・・・・・
「階段があった!ここから上にいけるはずだ!」
先頭のイツキが大声を出すと、皆は歓喜に満ち溢れた。
横穴を出てかれこれ1時間も歩いていたからだ。
階段を上がると、少し開けた場所に出た。
「……明るいな。」
「比較的な。」
イツキが呟くと、日光が答えた。
一人言のつもりだったのだが……まあいいだろう。
「ここの罠は何ですの?」
「えっと……確か……。」
ヒラメの問いに対して、顎に手を当てたイツキ。
するとそのすぐ前を、何かが掠めた。
「…………。」
その何かが飛んでいった方を見やると、木製の壁に矢が刺さっていた。
「……一回下りるぞ!!」
6人は慌てて階段へと戻った。
「矢!?矢が飛んできますの!?」
「そうだ……ここはからくりの間!矢だったり、石だったりが飛んでくるし、落とし穴で1階に逆戻りもあり得る!さらに地面はヌルヌルだから気を付けろ……!」
「説明的ですわね、有り難いですけど……。それにしても、ここの方は落とし穴が好きですわね……。」
ヒラメが呆れているが、呆れたからといって解決するわけではない。
溜め息を一つ吐くと、ヒラメは突破策を思案し始めた。
「お嬢様。ここは私と日光様に任せてください。」
「え?」
口を開いたのはミノリだった。
ヒラメを始め、皆は驚いている。
「ミノリ、何か良い方法を思いつきましたの?」
「はい。」
ミノリはゴニョゴニョとヒラメにその方法とやらを囁いた。
「……といった感じです。」
「……成程。それでいきましょう。日光!」
「なんだよ。つうか俺を話し合いに参加させろよ。」
「ミノリの上に乗るのです。」
「……はあ!?」
そこには四つん這いでスタンバイするミノリがいた。
「いや、乗れって、どうするんだよ。」
「ミノリの背中に立ってくださいまし。」
「……何だかよく分からないが、すまん、ミノリ。」
「ん……んん……。」
「喘ぐなよ!!乗りにくいわ!!」
一体何が始まるのか……。
イツキ、モチ、ヒバリは息を呑んだ。
「んっ……あっ……ぁぁ……!!」
「だからわざと喘ぐなって!!」
……イツキは唾も飲んだ。
「準備完了ですわ!!」
気がつくと、四つん這いのミノリの背中に日光、ヒラメが立っているという……奇妙な陣形が出来ていた。
「ミノリさん、一体何が起きるんですか。」
「見ててくださいイツキ様。」
イツキは脚に力を込めて四つん這いで駆け出した。
まるでゴキ……いや、やめておこう。
「とうっ!!」
そして、ミノリはヌルヌルを利用して滑り始めた。
なんて勢いがあるんだ。
「成程……!流石ミノリさん!」
「そうか?」
ヒートアップしていたイツキに対し、冷静なヒバリ。
しかしこれはいけるかもしれない。
「いいですわよミノリ号!」
「恐縮です。」
「確かにこれは速いぜ……!おっと、右からストーンが飛んできた!!」
「日光ガード!!」
ヒラメが日光を掴み、石の飛んでくる右側に寄せた。
「ごふっ!!」
石は日光の顔に直撃した。
「何すんだ妃懦莉!」
「これぞ、死なないことを利用した日光ガード!さあ、私の盾になってくださいまし!」
「ふざけんな!!ちょっ、矢はやめろって!うぎゃあああああああ!!!」
「…………。」
階段で待機していたイツキ、モチ、ヒバリの3人はその光景に言葉を失っていた。
流石ミノリさん。むごい。
「あ。」
パカッと軽快な音を立てて、地面は大きな口を開けた。
「落とし穴です、お嬢様。」
「分かってますわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………。」
「俺の役回りって……。」
闇へと吸い込まれる3人を、待機組はただ見ているしかなかった。
「……そっか……あいつらボケキャラだった。」
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
やられ具合が半端ない仲間達だぜ!
物語はまだまだ続くぜ!
Thank You。




