表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
萌葱色の変奏曲  作者: アフロペンギン
白桃編
14/607

第一章「一段落」

アフロ月です。

無事、新編に突入しました。

可愛がってください。

 白桃編

 第一章「一段落」



挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

「ま、ま、ま、まぐろおぉぉぉぉぉ!!!」

「うわっ!?霧雨先輩!!」


 緑の国巨大都市の1つ、二重薔薇ふたえばらそのの中心部に位置する城。

 箱庭脱出&救出作戦を成功させた霧雨きりさめ イツキは、城内部にある王女の部屋にやってきていた。


「ちょっ、鼻水、鼻水ついてます、やめてください。」

「あ、ああ。すまん。」


 思わず、後輩兼タッグの神崎かんざき まぐろに抱きついてしまったイツキ。苦笑するまぐろは手に力を入れて体を離した。黒髪で、左側を前髪で隠した幼い顔立ちの少女である。


「まぐろちゃん。無事で何よりなのだよ。」

「レイ先輩……。」


 海岐華みぎか レイ。イツキの元タッグであり、時代劇風の口調をした魔法使い。箱庭のナンバー2の実力を持っており、桃色の髪に三角帽子、クリーム色のロングコートを身に纏っている。

挿絵(By みてみん)


「イツキ君はばっちり、まぐろちゃんを護ってくれたかい?」

「……いや、あまり……。」

「……まぐろ。正直だな。」


 ふふっ、と笑みがこぼれるまぐろ。イツキはレイに睨まれて苦笑いをした。


「あはは……。ハツガ達もありがとう。」


 逃げるように、視線を変える。そこには灰色の髪の女性と、鎧姿の男女がソファーに座っていた。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


「飴。」

「あ、じゃあ俺はドーナッツをお願いするッス。」

「……何を言っているんだ。礼には及ばないぞ、イツキ。」

「……お、おう。」


 飴を所望する女性、名はハツガ。よくボケる盗賊でありハツガの格好は、マント、そして口まで隠れるスカーフ、機動性に長けた黒服だ。しかし今は、腹部に巻かれた包帯に目線がいってしまう。


「その傷……大丈夫か?」

「飴で治る。」

「いや無理だろ。」

「飴。」

「だから飴じゃ……。」

「飴。」

「……後で買ってやるよ。」


 ハツガは、根気に負けたイツキに頷いた。

 そんなやりとりを見て、鎧姿の男が口を開いた。


「ドーナッツッス。」

「もうその手は食わん。」

「ドーナッツッス。」

「お前殆ど無傷だろ。」

「ドーナッツッス。」

「カサ。サゴをどうにかしてくれ。」

「い、妹を出すのは酷いッスよ!」


 内心、勝ったと思うイツキだった。


「我が兄ながら情けないぞ。酷いのはどっちだ。」

「それを言うなら、カサだってイツキさんに頭を撫でてほしいッスよね?」

「なっ、ばっ、ばか言わないでよお兄ちゃん!!」


 図星なのか耐性が無いだけなのか……鎧姿の女の子カサは顔を赤くしていた。

 この二人は双子である。兄のサゴに妹のカサは共に15歳にして女王親衛隊の部隊長を務めている。サゴは髪がかきあげられた明るいシスコン少年で、カサは前髪を分けたクールな少女だ。


「俺でいいならいいけど?」

「イツキまで……!?…………そ、それなら……お言葉に甘えて……。」

「ええええ!?」


 からかっただけなのだが……いや、こっぱずかしい。


「ひゅーひゅー、やりおるねイツキ君。」

「霧雨先輩ってそんな人だったんですね……。」

「二人ともやめて!?……えっと、ありがとうな、よしよし。」

「むぅ……。」


 猫のように唸るカサ。

 ……成るように成れ。

 撫でて撫でて撫でまくったイツキ。カサは鼻血を出して倒れた。


「ぶばっ!」

「うわあああ!?すまんカサ!!!大丈夫か!?」

「……。」


 ピクピクと痙攣けいれんして白目をむいている。

 しかしその顔は妙に興奮していた。

 ……恐らく大丈夫だろう。


「イツキ様、貴方はいつの間にそんなヤリ手に……!!」

「どういう意味ですか。」


 部屋の隅に立っていたメイド、ミノリにツッコむ。

 三つ編みの似合う20代の女性で王女の専属メイドでもある。聡明なのかそうではないのかよく分からない女性だ。

挿絵(By みてみん)

 一つ息を吐き、皆の方に振り返ると、イツキはこう言った。


「聞いてくれ。」


 空気が少し重くなる。


「もしみんなと出会っていなかったら、ここに俺は立っていないだろう。」


 一拍おいて。


「ありがとう。」


 その場の空気は一気に軽くなり、皆が笑いあった。

 イツキのもとに歩み寄り、胴上げをしようとする。


「え、ちょっと待て。胴上げはやりすぎだろ?」

「いいではないかイツキ君!ほら、いくよ!せーのっ……。」

「いやここ、天井低いどへっ!!」

「わっしょーい!」

「お前ら何しやがぶっ!!」

「わっしょーい!」

「おいこらやめろっいっでぇ!!!」

「うるさいですわよ!!」


 部屋の主、妃懦莉ひだり ヒラメが怒号と共に部屋に入ってきた。皆の動きが止まり、イツキは地面に叩きつけられる。

挿絵(By みてみん)

 …………ありがとう、ヒラメ。この空気をぶち壊してくれて。

 でももう少し早く来てほしかったよ……。



 ・・・・・・・・・



「起きたんですか?日光先生。」

「ああ。……その傷どうした?」

「……なんでもないです。」

挿絵(By みてみん)

 別の部屋にある長椅子に、そのおじさんは座っていた。

 ゆっくりと、イツキはその横に座る。

 彼は日光ひびかり 群彰ぐんしょう、深淵の箱庭所属の教諭でおじさんである。


「うっ!」

「だ、大丈夫ですか、日光先生!?」

「すまない、俺の左腕に封印されてるシャドウウルフが、暴れてるんだ。」

「……はあ。」


 イツキの顔がひきつる。

 なんてことない中二病である。


「怪我してるが、こいつの制御くらいなら出来る。心配すんな。」


 心配なのは貴方の頭です。

 そうツッコミを入れたいイツキだが、そのツッコミは心の奥にそっと閉まった。


「まだ……目覚めないのな。」

「この人ですか?」

「ああ。」


 すると日光は、横のベッドで眠っている女性に目を向けた。

 横たわっているのは、灰色の髪をしている二十歳くらいの女性だ。

 イツキは何となくその女性に違和感を覚えた。


「……。」

「ん?どうした霧雨。」

「いや……何でもないです。日光先生は、お知り合いですか?」

「ツユ先生って言う新任の先生だ。ほら、入学式のときに説明あったろ?」

「すみません、俺出てないんです。部屋で新入生迎える準備してて……。」

「そうか。まあ、俺も出てないけど。」

「いや日光先生も新任でしょ!?何やってんだ!!」

「面倒だったんだよ。いいだろ、長とは知らない仲じゃねぇし。」

「それはそうですけど……。」


 そう。日光は、おじさんながら新任の先生なのである。長らく生徒として箱庭に所属していたのだが、今年から先生として勤めることになったのだ。


「……助けてくれてありがとな。」

「え?」

「ツユ先生のことだ。……俺がいながら、護れなかった。」


 歯噛みして悔しそうにする日光。そんな日光に、イツキは声をかけた。


「気持ちは分かります。俺だって、誰かがいなかったら、誰も護れなかった。……強くなるしかないんです。」

「……そうだな。」


 数拍おいて、イツキは笑顔を投げ掛けた。

 それを見た日光は、苦笑ぎみに笑い返した。


「まずは休みましょう。今夜はご馳走ですよ。」



 ・・・・・・・・・



 日も落ち、午後8時。

 大広間に集められた霧雨一行は、多大なるご馳走の前に並べられた。

 イツキの右隣のレイは、脱水症状を起こすのではないかというくらい涎を垂らしている。


「レイさん……汚いです。」

「おっと……す、すまないね。」


 イツキは半眼になりながらも、気持ちは分からなくはない、と思っていた。

 何故ならイツキも一日以上何も食してないのだ。

 それは、まぐろや日光も一緒だ。

 二人とも目が血走っている。イツキの左隣のまぐろに至っては「ご飯ご飯」とぶつぶつ呟いている始末だ。正直怖い。

 すると、一つ咳をしてヒラメが現れた。


「こほん……皆様。本日は私の為に有難う御座います。」


「お前の為じゃねぇぞ!!早く食わせろぉ!!!」

「!? レイさん落ち着いて!?」

「ガルルルル……。」


 怖い怖い怖い何が起きてるんだ何で俺の隣の女達はこんなに怖くなってるんだよやめてくれよ。


「まあ!口が悪いですわね。食事を下げますわよ。」

「失礼しました、閣下。」

「随分と持ち上げましたわね!?……まあいいでしょう。」

「いいのかヒラメ。」


 またも咳をするヒラメ。


「こほん……改めまして、今宵は私の感謝を込めまして……ご馳走を用意致しましたわ。存分に味わってくださいまし。」


 皆が涎を飲んだ。


「いつまでも待たせるわけにはいきませんわね。手を合わせてください。」


 レイ、イツキ、まぐろ、ハツガ、日光、カサ、サゴ、ミノリ、ヒラメはゆっくりと手を合わせた。

 そして噛み締めるように、こう言った。


「いただきます。」


 まずは一口。そして二口。目前のご馳走を黙々と口に入れていく。無言で食べているため、聞こえてくるのは噛む音や汁物をすする音だけだ。



 ………………そのまま十数分の沈黙が流れる。するとどこからか、嗚咽が聞こえてきた。イツキだ。


「ぐずっ……美味いなぁ……ぅ…………美味すぎるんだよ……………なんなんだよ……!!」


 様々な想いが胸に溢れ出る、箱庭襲撃から二日目の夜。


「イヅギぐん…………ご飯中にみっどもない……ではないか……ううっ……。」

「ぞぅでずよ……ぎりざめでんぱい……。」

「ふだりだって……。」

「「だって…………美味しいから……。」」


 ボタボタと涙が溢れて視界が歪む。見渡すと、一人の例外もなく泣いていた。

 手が震えてうまく口に運べない。それでも食らいついた。皿を持ち食べ物をかきこむ。ヒラメに行儀が悪いと言われそうだが……彼女は黙認してくれた。

 生きているんだ。

 生きていると実感できる。

 この感覚は……絶対に忘れてはならない。

 それが命ある者の使命だと……イツキは思った。


「……なんだよこのケーキ……甘くねぇよ……。」


 この日のデザートにはケーキが出た。赤い苺が乗っていて、久々に食べるケーキはすごくしょっぱかった。

 そのことを話すと、皆が笑った。どうやら同じ事を思っていたらしいが、ミノリだけは浮かない顔だった。













 因みに。後日聞いた話だと、ケーキには間違えて大量の塩を入れてしまっていたらしく、味が残念なことになっていたとか。

 ……言えよ。

こんにちは、そしてはじめまして。

アフロ月です。

萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。

いかがでしたか?

稚拙な文章で理解しがたいところがあれば、私の勉強不足です。申し訳ありません。

さて、新編突入、萌葱色変奏曲!

ここでは改めてキャラクターを紹介していった感じですね。

レイさんの挿し絵が間に合わなかったのは申し訳ないです(忘れていたとは言えない)。

続く第二章では…………イツキがやらかします。

乞うご期待!

最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう!

Thank You♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ