第十五章「試されるは精神」
ヒナ「ああ……ヒナね……ヒナね……もうだめかも……。」
ヒバリ「ショックを受けすぎだろ……。」
オナガ「ん。では次はヒナの番だね。ヒナのイントネーションは、鳥の赤ん坊『雛』と同じイントネーションだね。」
ヒナ「へへん!すごいでしょ!!」
ヒバリ「別に凄いわけじゃねえし、立ち直りが早ェな。」
深淵の箱庭奪還編
第十五章「試されるは精神」
「うぅ……ん……。」
「目が覚めましたか?」
深い闇。静けさに包まれたその場所が、一体どこなのか。彼女には分からなかった。
分かることは二つ。
「雨燕……やっぱりお前なのか……。」
「はい。」
「落ちたのか。」
「落ちました。」
隣で声をかけてくれた女が、元同僚の雨燕だということが一つ。
因みに雨燕は和服に、紺色の髪を結った女で、腰には刀を下げている。はずだ。
暗闇なのでよく分からないが。
そして……もう一つ。
「雨燕以外は目覚めてないのか?」
「はい……。」
「どんだけ落ちたか分からねぇしな。」
上を見上げてみるも、落ちてきた地上の光が見えない。相当深い穴なのだろう。
まあ、それでよく死ななかったものだが。
「ヒバリさん。」
「ああ?」
「……えっと、お久しぶりです。」
「こんな状況でよく言えるよな。」
「こんな状況でなければ言えませんよ。」
「…………お前、変わったな。前はもう少し、自信に満ち溢れていた感じだったんだが……。」
「環境が変われば、人は変わります。……あと、気持ちも。」
「戻るつもりねぇのか。」
「はい。この方々の優しさに触れて、もう、戻るつもりはありません。」
ヒバリは一つ息を吐いた。
元々心優しい性格だ。
青のやり方に合わなかったのだろう。
「間違ってるって思うのか?」
ヒバリが尋ねると、雨燕は少し息を吐いた。
「……私はそう思いました。」
「そうか。……まあ、自分が歩く道は、自分で決めるんだ。雨燕の生き方に、アタシは何も言わねぇ。」
「ありがとうございます。」
「……なぁ。」
「はい。」
「家族は元気か?」
「しばらく会っていません。だけど……私が家を出る前は元気に見送ってくれました。」
「ああそうか。……勝手に親近感をな。感じてたんだ。」
「私もヒバリさんとは似た境遇だとは思っていました。あと、仲良くできるとも。」
「まだ大丈夫かな。」
「勿論。時間はありますから……でも、その前にここから出ましょうか。」
「ああ。家族には会ってやれよ。」
「落ち着いたら。」
ヒバリと雨燕は立ち上がった。
「どうする?」
「私にもよく分かりません。とりあえずこの暗闇をどうにかしたいです。」
「任せてくれ。」
と、突如、男の声が聞こえた。
「霧雨イツキか?」
「よ、よく分かりましたね。先程会ったばかりなのに。」
反応を示したヒバリに驚くイツキ。
「ま、まあな!それで、任せてくれってのは、具体的にどうするんだ?」
「電気点けます。あ、あった。」
ぱちんという音とともに、天井からぶら下がった、いくつも連なる電灯が点いた。
「…………。」
「よし。…………あれ?ヒバリさん、どうかしました?」
「……いや、何でもねぇ……。」
・・・・・・・・・
「ヒラメー。起きてくれー。」
「美味しそうな合成獣ですわ!!」
「恐らく、小説史上初の目覚めかただな。」
トラップに引っかかった仲間のなかで、最後に目覚めたのは、金髪アホ毛のヒラメだった。
「こ、ここはどこですの!?」
キョロキョロと辺りを見回すヒラメ。
まるで地下坑道のようなその場所は、道が一本続いているだけだった。
「ここは深淵の箱庭防衛用トラップの落とし穴だ。」
「そうでしたの……って、イツキ!?どうしてここに……!?」
「俺も落ちたから。」
「情けないですわね。」
「馬鹿なことして落ちたお前に言われたくねぇよ。」
「なっ……!!」
「なっ……!!じゃなくて。他の皆、もう起きてるよ寝坊助。ここを出るんだ。」
「出れますの?」
「ああ、問題ないよ。道は覚えてるから。日光先生が。」
「イツキじゃありませんのね……。」
ヒラメは頬に汗をたらして、立ち上がった。
今一度状況を確認する。
落とし穴なのだから、ここは深淵の箱庭地下だろう。
道は一つ。
電灯があるものの薄暗い。
落ちた者はイツキ、日光、ハツガ、ヒラメ、ミノリ、犬槇、雨燕、モチ、ヒバリの9人だ。
「ヒラメも起きたし、そろそろ行こうぜ。」
と、言葉を発したのは犬槇だった。
トコトコと先へ進む犬槇。……だったが。
カチッ
「カチッ?」
足場が少し沈んで音がした。
……これは何かスイッチを踏んでしまったに違いない。
ガコン
「ガコン?」
犬槇は上を向いた。
いつの間にか開いた穴から、何やら黒い物体が落ちてきた。
「ごふっ。」
「犬槇ぃぃぃぃ!!!!!」
その黒い物体とは巨大な鉄球のことだった。
鉄球は犬槇を押し潰し、重く響きながら転がっていった。
押し潰された犬槇だったが…。
「……あれ!?俺死んでないの……?」
体もペラペラになり、それでも息が出来ることに驚く犬槇。
イツキはそっと歩み寄った。
「大丈夫か、犬槇。」
「大丈夫だけど……何これ?」
「罠だな。これのせいで簡単には出られないんだ。」
「いや、そうじゃなくて……俺は生きてるのか?」
「ここは特別な魔力が施されて、ある力が働いているんだ。……ここではギャグ補正がかかり簡単には死なない。その代わり、死にたくなるくらい精神的にくる仕掛けがあるから気を付けてくれ。」
「…………なんだそれ……。」
こうして、霧雨一行の精神の戦いが始まった。
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
そして始まる……深淵の箱庭地下に潜む魔物……それは、ギャグ補正……!!
簡単には死なないことを理由に、理不尽ともとれる罠が待ち受けていた……。
果たしてイツキらは無事に脱出出来るのか……!?
一人アウトだけどね。
最後に、後書きまで読んでくださってありがとうございます。
精進をするため、感想・意見などをお待ちしております。
Thank You。




