第十二章「うめくは雲雀と魔女と傘」
ヒナ「コーナーの担当が決まらないよ?」
エト「だな。もういっそ俺がやればいいんじゃないか?」
カラス「そんなわけにはいかない。」
オナガ「ん。そうだね。」
エト「誰かいいやつ、いねぇのかよ。」
???「…………アタシがやる。」
エト「お前は……!!」
深淵の箱庭奪還編
第十二章「うめくは雲雀と魔女と傘」
「姐さん、お疲れ様です!」
「ああ。」
「……姐さん?」
深淵の箱庭廊下、長の部屋へ向かう途中に、ある女性とすれ違った。
姐さんと呼ばれたその女性は、長ランという長い学ランを着ていた。
上のボタンを留めずに開けていたので分かったが、胸にサラシを巻いていた。
寒くないのだろうか。
……いやいや、今はそんなことを思っている場合ではない。
ただ……綺麗な紫色の髪にスタイルが良かったなぁ……。
「……今のが噂の姐さんか。」
「ふん……やはり反抗組織のリーダーだな。姐さんの事まで知っているなんて。姐さん……ヒバリさんは赤の国に居たんだが、お前の為に戻ってきたんだよ。」
本当は名前を聞いたことがあるくらいで、ヒバリの事は知らない。
鎌をかけてみたのだ。
「俺の為?」
「ああ。」
「でも、俺と話があるのは八頭だろ?」
「姐さんも同席するんだよ。」
「……へぇ……。」
幹部クラスが二人いるのか。
いや、まだいるかもしれないが……関係無い。
俺はやるべきことをやるだけだ。俺にしか出来ないことをやるだけだ。
「待て。」
……と、後方から女性の声がした。
この声……先程の……。
「……何でしょう姐さん。」
イツキは振り返りそう言った。
「ああ?誰が姐さんだ。アタシのことはヒバリさんと呼びな。霧雨イツキ。」
「俺の名前を知ってるんですか?」
「カラスやスズメに聞いた。」
「ああ、成程。」
「じゃあこっちの用だ。お前さっき……アタシの胸見たろ。」
「……はい?」
この女は何を言っているんだ?いや、確かに見たが。
「チラ見です。」
「……。何でだ?」
「何が。」
「何でチラ見なんだよ!!!」
「えっ!?」
「見るなら堂々と見ろよ!!そんなに女の魅力が無いのか!?ああ!?」
「あれ!?どこ!?どこでキレてるの!?」
「アタシに女の魅力があるかどうか聞いてるんだよ!!!」
イツキの胸ぐらを掴むヒバリ。
……これはどう言えばいいのか……。
あまりの迫力にちびりそうだ。
「えっと……普通に可愛いと思いますけど。顔綺麗ですし、髪も触りたいくらいです。」
「……それで?」
「それで!?……えー……ぶっちゃけ好みです。」
頬に汗をたらすイツキ。
あまりの迫力に嘘をついてしまったが……。
ヒバリは衝撃を受けた顔をしていた。
「かっ……わいい……うえに……好みだぁ……?」
「は、はい……。」
「…………そうか。アタシの魅力が分かったんならよし。そこのお前、さっさと連れていけ。」
「あっ、はい!いくぞ、霧雨イツキ。」
「おう……。」
イツキは男に付いて歩いていった。
ヒバリは暫くその背中を見送り歩いていった。
角を曲がったところで、ヒバリは壁を殴った。
「……はぁ……動揺すんな、動揺すんな……!!」
変に汗をかいてしまう、何故だ何故だ!?
足どうした!?何で浮き足立つ!?
はははん!アタシが!?こんなことで!?
おい心!!乙女になるんじゃねえよ!!
……それから数分、ヒバリは壁に向かってぶつぶつと呟いていた。
完全に不審者である。
・・・・・・・・・
「……むっ……。」
「……?どうかしたのかい、カサちん。」
「いや……何だか胸騒ぎがしたのだが……。」
「そうなの?」
「しかも随分不安になる……!な、なんだこれは……!?」
「カサちん!?」
・・・・・・・・・
「ぎゃあああああああああああああ!!!!!」
「ひゃっ!どうしたんですか、レイさん!どこか痛めましたか……!?」
「胸があぁぁぁぁぁ!!!胸が不安で包まれるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!イツキくーーーーん!!!!!」
「お兄ちゃんの名前叫んでる!?ちょっ、レイさん!?」
新暦700年7月4日。
その日、何億といる人類の中。
妙な胸騒ぎを訴える者が数人いたそうな……。
・・・・・・・・・
「うーん……。」
「お嬢様?どうかなさいました?」
「いえ……何でもありませんわ。それより、妙ですわね。」
「お嬢様も気付かれていましたか。確かに妙です。……見張りが見当たらないなんて。」
北の階段へと向かう隠密部隊。
ヒラメを心配しつつもミノリは不安に感じていた。
「何故誰も見張りがいないのか……。ゴミ置きで見た方々以外には一切見ておりませんよね……。」
「あれだろ。」
と、日光が割ってはいった。
「なんでしょう日光様?」
「俺たちが怖くて出てこれないんだろ。」
「…………。」
「それですわ!」
「成程……!」
「それしかない。」
日光の言葉に、ヒラメ、ミノリ、ハツガの三人は納得した。
で、あれば……こそこそと隠れながら移動する必要などない。
「おらおらぁ!!ビビってんのかぁ!?」
廊下中央を堂々と歩く四人。
「ミノリぃ!よくサングラスを持ってましたわねぇ!」
「勿論っすよお嬢様ぁ!こんなこともあろうかとね!」
「やる。」
「がっはっはっ!!おい青!!威勢がいいのは口だけかよ!?」
「ですわぁ!!」
「お嬢様ぁぁ!!ボキャブラリーどうしやしたぁ!?」
「やめてくださいましミノリ!!」
「やる。」
……もしもここで通信部隊が通信していたら。
……もしも隠密部隊にツッコミキャラを加入させていたら。
こんなことは起きなかったかもしれない。
突如として廊下に開く穴。
「ええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…………………。」
四人は無情にも深い闇へと吸い込まれていった。
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
新キャラの姐さ……ヒバリさんが出てきました。
硬派な女性といった印象を受けたイツキでしたが……心が乙女でした。
じゃ、次も会おうぜ!
Thank You。




