第八十五章「揃う六人」
まぐろ「私はまぐろよ!」
イツキ「何を言ってるんだ?えー、今回のイントネーションのコーナーはこの方、俺達の先生、ツユ先生です。」
ツユ「こんにちはー。よろしくお願いします。」
イツキ「早速ですが、ツユ先生の名前のイントネーションをお願いします!」
ツユ「ツユは、梅雨ではなく、『お湯』と同じイントネーションです。間違ってはダメですよー。」
イツキ「成程。ありがとうございます、お湯先生。さあ次回は誰になるのか……。」
黒い雪原編
第八十五章「揃う六人」
「二人分の力なら、押しきれる!」
イツキとまぐろの攻撃。
イツキはレイピアでの突き。
まぐろは剣を振り下ろし。
日光の刀に同時に競り合った。
「ぐっ……!!」
「うう……!」
受けられた。
二人でもダメなのか?
「フッ……!踏み込みがスウィートだぜ。まるでチョコレートだな。」
「…………。」
何を言ってるんだ?と思ったが、中二病を患う日光ならいつものことだと再認識して、イツキは集中しなおした。
「……まだ……諦めるわけにはいかねぇんだ!!日光先生にだって、こんなところで負けるつもりはないんですよ!!」
「それは俺だって同じだよ……。俺はてっぺん獲るんだ。」
「……ぐっ……うぅ……!!」
力を入れているのに、震えるだけで押しきれる気配がしない。
正直……もう……ダメかもしれない。
「諦めちゃダメです!!霧雨先輩!!」
「!!」
叱咤激励したのは、横で共に競り合っているまぐろだった。
「カサさんが、似たような事を言ってました……頂上獲るんだって……!」
確かに言っていた。
カサVSまぐろの試合で、カサが倒れる前に言っていた。
「私は勝ったんです……!カサに勝って、その想いを受け継いだ……!!こんなところで諦めたら、侮辱にしかならない!!」
「まぐろ……。」
「霧雨先輩だって、背負ってるものあるじゃないですか!自分で言ってたじゃないですか!!」
「……!!」
ああ、そうだ。
何故、諦めようとしていたんだ。
「ごめん、まぐろ。……そうだよな。俺が諦めちゃダメだよな。」
「はい。だから……後は任せます。」
「え。」
まぐろは笑って、剣から手を離した。
勿論、二人で競り合えていたので、まぐろの力が無くなった今、日光の刀が押しきってしまう。
まぐろは後方へと飛ばされて、イツキは前方へとバランスを崩した。
日光が刀を振りきると、懐ががら空きになった。
「今。」
ここしかない。
そう思ったイツキは、今一度踏み込んだ。
「おおおおオオオオオオ!!!!!」
その突きは日光に命中。
「がっ……!!」
日光の足は地面から離れ、仰向けに倒れた。
「はぁ……はぁ……!!」
「ぐっ……ああぁぁ……!!くそっ、退けよ霧雨……!霧雨、退けって……!!」
「嫌です……!!負けたくないから……俺は負けられないから!!!」
「俺だってよ……負けられねぇんだよ……!がああああ!!!」
暴れ始める日光。
ダメだ。今振り落とされると負ける。
「素直に負けを認めたらどうですか!」
「出来るわけねぇだろ!!約束したんだよ、アンちゃんと……!」
「アンちゃん……?って、アンコウさん……?」
「ああそうだよ……!お前らが知らないところで、俺は、俺は!!」
「煩わしいんじゃよ。」
日光の顔が少し暗くなった。誰かの影が入ったからだ。
イツキは顔を上げた。
瞬間、その影の主は拳を打ち下ろした。
「ぶあっ!!」
日光の顔面を直撃し、日光は気を失った。
「さっさと負けを認めろ、醜いったらありゃしない。」
そこには白髪の男がいた。
巨体で袴を身につけている。
「誰だよ……お前……。」
呟いたイツキを睨み付ける男。
「シンゲン。」
「は……?」
「誰だと聞いただろう。シンゲンじゃ。」
シンゲン……決勝戦で残った六人の内の一人が、そんな名だった気がする。
「てめぇ……!!日光先生を、よくも……!!」
「てめぇ?若いやつはなっとらんなぁ。名前を教えたのにな!!」
シンゲンの右足が、イツキの腹部に入った。
「がはっ!!!」
イツキは蹴り飛ばされて、受け身も取れずに地面へ背中から叩きつけられた。
「霧雨先輩!!」
まぐろが叫んだ。
「あっ……ごほっがはっ……はっ……!!」
シンゲンは歩み寄り、咳きこむイツキを見下ろすように覗きこんだ。
「その前に女だな。」
「ひっ……!」
「っ!!やめろ!!まぐろには手をだすな!!」
「これは大会だろ。戦いがルールのこの場で手をだすなというのは、いささか間違いではないのか?」
「それでもあいつには手を出すんじゃねえ!!怪我してるんだ!!」
「……。」
聞く耳を持たず、シンゲンはイツキの側を離れようとした。
「待て……!!」
シンゲンの裾を掴むイツキ。
「ガハハ!邪魔をするというのか!」
力で、イツキの手を引き剥がす。
「待てよ……!」
再び裾を掴んだ。
「無駄なことを。」
「まぐろ逃げろ!!犬槇を頼れ!!」
「えっ……で、でも、霧雨先輩が……!」
「俺はいいから……!早く逃げろ!!」
「だから、無駄だと言ったはずじゃが。」
裾を掴まれていないもう片方の足で、シンゲンはイツキの顔に踵を当てた。
「がっ!!」
「霧雨先輩!!」
イツキの体は転がっていった。
シンゲンがまぐろのもとに歩み寄った。
「まずはお前だ。」
「ひっ……あっ……。」
何故だろう、硬直して動かない。
シンゲンは拳を振り上げた。
「ではな。」
まぐろは目を瞑った。
もう終わりだ。
…………あれ?攻撃されない?
「あれ……?」
目を開けるとすぐに分かる。まぐろの前には人影があったのだ。
それは、イツキを助けるため、手助けをするために、まぐろが倒した。
……と思っていた。少女。
「南鞠ちゃん……!?」
「手は出させないよ……!おっさん……。」
一発が限界だったようだ。
南鞠はふらふらっと倒れてしまった。
「南鞠ちゃん……!」
「まぐろ!!」
「犬槇さん……!?」
「間に合って……ないか。大丈夫か!?」
駆け寄ってくる犬槇。
「どうして……!?」
「南鞠に聞いた!」
「南鞠ちゃんに……?」
「話は後だ。まずはこいつをぶっ倒さないとな。」
犬槇が剣を抜く。
「さあ、来いよおっさん。」
遂に揃った六人。
果たして戦いの行方は……?
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
戦闘描写はやはり難しい!要勉強です。
それでは、Thank You。




