第八章「三重奏?」
アフロ月です。
趣味は筋トレですが、最近サボり気味です。
だってキツいんだもん!
……今さらですが、挿絵を入れてみました。
今回はイツキ、まぐろ、ヒラメ、ミノリの4人です。
デフォルメされているのは勘弁してください。
第八章「三重奏?」
時と場所が移り変わり、ここは4月8日。午前10時34分。
「紅さーん。紅さんはおられますかー?」
茶髪の男が、燃え盛る炎の中で一人、声をあげていた。どうやら「紅」というものを捜しているようだ。
赤の国。南に位置する小さな島国だ。そんな赤の国の傭兵育成機関「炎帝の園庭」は襲撃を受けている真っ最中だった。
勿論、海底の古城にだ。
「……ここにはいないのか。紅さん。」
もう一度。
「紅さーん。移動しますよー?知りませんからねー?」
数秒待ってみるも、やはり返事はない。
男は肩を落として歩き始めた。
10分程経った頃だろうか。
同じ場所に、今度は女がやってきた。
「犬槇!何処にいるの、犬槇!」
紅色の髪をした20代の女である。
どうやら「犬槇」というものを捜しているようだが、叫ぶも返事は無いようだ。
「こんなときに限って見当たらないんだから……。犬槇!返事しなかったら知らないからね!?置いていくよ!?」
数秒待ってみるも、やはり返事は無い。
女は肩を落として歩き始めた……のだが。
「……これ、血、かな。」
立ち止まって見てみると、地面には点々と赤い液体が滴り落ちていた。
まだ新しいので、この辺りには人がいるはずだ。
「生きていればいいんだけどなぁ……。」
ぽつりと呟き、女は再び歩きだした。
・・・・・・・・・
またもや場所が移り変わる。
北方に位置する白の国。ここでも海底の古城によって襲撃されていた。
「頭を出すなよ。ったく、こんな時代に何で銃なんだ。とっくの昔に廃れてるはずだろ。」
猛る吹雪の中、その身を塹壕に隠しながら男が言った。白の国の傭兵育成機関「雪原の洞穴」卒業生、真白井27歳は妻と二人で逃げ隠れていた。
「それは実弾銃の話でしょ?……って、それくらい知ってるよね。それより本当に大丈夫なのー?」
心配なのか、妻のモチが真白井に問う。
しかしモチの顔は、曇りない笑顔だ。
「俺といれば大丈夫。さっき約束しただろ?逃げて逃げて逃げきることが出来たら、どこか平和な場所で結婚しようって。」
「そういうの、フラグって言うんだよ~。」
確かにフラグを立ててしまったかもしれない。それでもニコニコと笑顔のままの彼女を見てると、大丈夫な気がしてきた。
「まずはここからだ。隙をみてここから出る。」
「うん、分かったよー。」
モチの返答のあと、真白井は一拍置いてこう言った。
「モチ。言いたいことがあるんだが……。」
「ダメだよー。またフラグ立てようとしてる。」
「そんなのさっき立てちゃったさ。だから今言っておかないと。」
「ん、じゃあ、なに?」
「誕生日おめでとう。今年は無理そうだから、来年にケーキで祝ってやるよ。」
「わあ、覚えててくれてたんだー!じゃあ、次は私がユキくんの誕生日を祝ってあげないとね~!」
「そうだな。」
「他の誰でもない。私がね!」
「……そうだな。」
この時のモチの笑顔は、真白井にほのかな暖かさを感じさせた。
そして……。
人生とは曲である。
誰かがそう言っていた。
時には静かに流れ、時には狂い暴れる。
そして、その者の人生が終わったとき、追憶して曲名を名付けることによって、初めて曲が完成するのだ。
曲には様々な種類がある。
組曲、二重奏、交響曲。
私の曲は……なんだろう?音楽は詳しくないからな……よく分からないや。
ああ、でも好きなのが一つだけ……たった一つだけある。
あれは……。
…………あ。あれは曲じゃないや。
どっちかと言うと、リ…
「生きてる……?しっかりしてください……!!大丈夫ですか!?」
誰かの声が聞こえた。
聞いたことの無い男の声。
気になって、ゆっくりと目を開けてみる。
っていうかゆっくりとしか開けられない。
「良かった……!すぐに応急手当しますから。」
「…………。」
声がかすれてうまく口に出せない。せっせと手当てしてくれているところを見ると、やはり私は怪我をしているのだろう。
「出来るのですか?」
「……自信は無いです。」
すると、その男の後方に一人、女がいるのが見てとれた。
スラッとしたスタイルで、少し羨ましいと思う。
薄れていく意識のなか、私の頭には走馬灯らしきものが。
家族や友人。……でも……好き
だっ
の
ん
・・・・・・・・・
各々の想いが入り交じり、戦いはさらにエスカレートしていく。
再び現代。
「そっちはどうだ、サゴ!」
「まだまだッス!」
「カサは!無理してないか!?」
「平気だ。そっちこそ、疲れているように見えるが?」
「疲れてるよ!!でもこれくらいわけねぇよ!!」
二重薔薇ノ園中心部にある城では、現在防衛戦が張られている。
攻めるのは青の国の傭兵育成機関「海底の古城」。
対して護るは女王親衛隊「歳寒三友」+α。
「よし、粗方片付いたな。」
そう言って一息つくのは、右手にレイピアを握る男、霧雨イツキだ。
そんなイツキに駆け寄る二人の男女がいた。
「お疲れ様ッス!怪我は無いッスか?」
「ああ、大丈夫だ。」
男の名は、サゴ。
15歳にして歳寒三友の梅部隊隊長を務めている。
髪がかきあげられた、元気な男だ。
その両手には扇形の形状をした短剣が片手ずつ握られている。
「傭兵志望なんだろ?それならば、これくらいどうにかしてもらわなければ困る。」
「そ、そうか。」
苦笑するイツキ。
今、イツキに話しかけた女は名をカサという。
サゴの双子の妹にして、同じく歳寒三友の梅部隊隊長を務める。分けられた前髪は乱れており、汗が凄い。滝のように出てるわ出てるわ。どうやら苦戦していたようだ。ちなみに武器は槍。
「む、イツキ。なんだその目は。」
「いや……それにしても、まさかここにも青が来るなんてな。」
「どういうことッスか?」
「深淵の箱庭も、青にやられたんだ。やっぱり知らないか?」
すると、サゴは目を見開いた。
「初耳ッスよ!!なんスかそれ!?」
「説明は後だ。とりあえずヒラメを捜そう。」
「む、了解ッス!」
「ヒラメ様……。」
そう。警報が鳴った直後、共に行動していたイツキとヒラメとミノリ。
しかし、雪崩のように来る青の軍勢と戦っている途中、彼らははぐれてしまったのだ。
それぞれ表情が曇っていると、イツキ達の前方、瓦礫の間から人影が出てきた。
最初に気付いたのはカサだった。次にサゴ。イツキは二人が声をあげたことによって気付くことができた。
「何者だ……!」
「じゃないッスよ、カサ!あれはミノリさんッス!」
「えっ…………わ、分かってたし!お兄ちゃんは黙っててよ!」
「え、ミノリさん……!?」
「イツキ様……!カサ様にサゴ様もいらっしゃいましたか!」
ミノリの元へ駆け寄る三人。
「よかった、ミノリさんが無事で。」
「此方の台詞ですよ。あなた方が生きていてくださって……嬉しい限りです。」
「ミノリさん、ヒラメは?」
「……そう。それです。」
何がそれなのか。
イツキは訝しげになり聞いてみた。
「……何ですか?悪い報せじゃなければ嬉しいんですけど。」
「正直、微妙なところです。イツキ様、貴方には是非決めていただきたいことがあります。」
強張った表情のミノリを見て、イツキは息を呑んだ。
頬に汗をたらして、聞いてみる。
「決める?何を。」
「お嬢様からの言伝てに、その答えがあります。」
ミノリは一拍置き、言葉を続ける。
「予想外の事態ですわ。イツキ、兵を出すのは難しいようです。ですので、今から言うことをよく聞きなさい。そして、自分でどうするかを判断しなさい。」
「……。」
「箱庭、シンリン村、そしてここ。今把握している戦場はこの三つですわ。もしこの戦いが終わったとしても、兵を出せる可能性は0に近い。それなら、今のうちに兵を連れ出しても構いませんわ。」
「……。」
「指示なさい、貴方のもとに集う人に。無理してここを助ける必要は無いから……今行くべき所に行くんだ、と。」
「ヒラメ……。」
イツキの口から、思わず声が漏れていた。
ミノリは息を吸い、確認するように言葉を紡ぐ。
「イツキ様。指示を。」
「……いや、ちょっと待ってくれよ……。」
「猶予は残っていません。迅速にお願い致します。」
「だからちょっと待てって……!」
徐々に鼓動が早く、大きくなっていく。息も乱れてきて過呼吸になりそうだ。
なんて簡単な問題だ。だからこそ気付けたのだが。
「だ、大丈夫ッスか?」
「……兵が出せなくなるならここを一番に終わらせるか……?いや……。」
ぶつぶつと呟くイツキ。
「仮にここを終わらせたとして、次にどうする?時間だけでいうとレイさんが危険だ。けど、ハツガやまぐろの所にはカラスがいるし……。もし、それでレイさんがダメだったら?今行けば助けられるとしたら……。」
手が震える。汗が噴き出す。少し立ちくらみもする。
責任重大だ。
ただでさえ低い皆の生存率を、イツキの判断でさらに下げることになる。
嗚呼、上に立つとはこういうことなのか。
……なんだか嫌になってきた。吐きたい。気持ち悪い。
「イツキ。」
はっ、と我に返る。
今のは……カサだ。
「……なんだ、カサ?」
「イツキ、迷ってるのか?」
「当たり前だ。……もし、この判断を間違えて仲間が死んだら……どう責任を取らなきゃならないんだ?」
「そうだ。責任を取らなければならない。だが……まだそう決まったわけではないだろう?」
「……。」
「最善と思ってとった策なら、信じた仲間は恨みはしないだろう。」
「……カサ……。」
カサは頷いた。
「まあ、私はまだ信じてないが。先程会ったばかりだし。」
「なんだよそれ……。」
すると、カサは微笑してイツキにこう告げた。
「冗談だ。ヒラメ様を思い悩み迷った。ありがとう、イツキ。君ならば信じられるよ。」
「……そうか。こちらこそありがとう。信じてくれて。」
サゴ、そしてミノリも、イツキに向かって頷いた。
どうやら二人もイツキを信じるようだ。
それに呼応するように、イツキは拳を強く握った。
「イツキ様、ご指示を。」
「どんと来いッスよ!」
「イツキ、さあ。」
「分かった。これが……今とれる最善の策だと思う。」
イツキは不安ながらも、その策を話し始めた。
・・・・・・・・・
「はぁ……はぁ……!!」
視界が霞み、額から滲み出る汗が一滴、地面へと垂れる。
城の中にある玉座。
それを守るかのように……いや、守るために少女は戦っていた。
「キッツいですわ。」
袖で汗を拭い、一言。
少女ヒラメは一人で敵と相対していた。
女王改め母親を逃がすことには成功したのだが、その脱出口である玉座の下を守らなければならないのだ。
「にしても、一人でやるなんて……少々格好つけすぎましたわね。」
苦笑するヒラメの前方には、青が8人程。
一人で相手するには少々厳しいかもしれない。
構わず、2人がヒラメへ攻撃を仕掛ける。
剣を振る単純な攻撃だったが、数の差がありすぎてどうにも自由に動けない。
ヒラメは押されぎみに剣撃をしのいだ。
「っ……はぁ……はぁ……!」
このままでは時間の問題だ。すぐにでも、殺されるか捕虜にされるだろう。
……そういった展開は好ましくないな。
そうヒラメが思っていると。
「ヒラメ様!!」
と。突如響き渡った声。
それはヒラメの専属メイド、ミノリの声だった。
どうやら応援に駆けつけてくれたらしい。
青の半分はそちらを見て、体ごと向きを変えたので、半数ずつで対処するようだ。
「ヒラメ!!」
「えっ、イツキ!?」
しかしそこには、さらにイツキが駆けつけた。
青とヒラメに少しばかり動揺がみえる。
「な、何故ここにイツキが!?」
「何故って……選んだからだよ。」
「ここを!?」
「だから居るんだろ。」
「それは……そうですけど……。」
口ごもるヒラメ。
すると不機嫌そうに、青の一人が叫んできた。
「話は終わりか?時間をとらせるんじゃねぇよ!!」
4人はヒラメに、もう4人はイツキの方へと武器を構えながら駆けてくる。
「来ますよ、ミノリさん。」
イツキは右手で、レイピアを構える。
ミノリは……。
「……ん?あれ、ミノリさん?」
視線をやると、先程までミノリがいた場所にミノリの姿が無い。どこに行ったのだろうか。
「ちょっ、ミノリさんは!?」
「ミノリ!?」
「お嬢様、お怪我はありませんか?」
ミノリはいつの間にか反対側、ヒラメのもとに駆け寄っていた。
「……って、俺4人相手ってことかよ!?」
「ごちゃごちゃうるさいなぁ!」
「そりゃすまない……な!」
「ぬわっ!?」
一人が攻撃を仕掛けてきたが、そこはイツキの十八番。得意の受け流しで敵の体勢を崩すと、死なない程度にダメージを与える。
さらに一人来るが、問題は無い。
「うわぁ!?」
「ども。」
今度は敵の勢いを利用して、後方の壁へと激突させた。
「よし、今日も三葉崩しは好調だな。」
そう呟くと、イツキはヒラメ達に向かってこう叫んだ。
「こっちは大丈夫だ!!心配しなくていいから!!」
ミノリは親指をグッと立て笑い返した。
「今度はこちらの番ですわね、ミノリ。」
「はい。」
ミノリは懐に忍ばせておいた脇差しを取り出した。
脇差しの刃の部分が黄色く光っている。
それを見かねた青から、誰からというわけではなく笑い声が聞こえてくる。
「ぶははっ!!それで戦うってのか!?」
「ええ、そうですよ。」
ミノリは淡々と返した。
「よく見ておかないと、怪我しますよ。」
「確かに小さいが、見逃すはずが無ェだろ?」
「そうですか。」
ミノリは脇差しを持った右手を掲げると、そのまま降り下ろした。
すると、バシンッと地面を叩きつける音が、青の鼓膜を震わせた。
「……なん……だそれ……?」
「ご存知ないので?これ、伸びるのですよ。鞭のようにね。」
先程までとは打って変わって、脇差しは鞭のようにしなやかに伸びている。
「高密度のエネルギー……まあ、聞いても理解出来ないでしょう。どこからでもかかってきてください。」
「う、うおおおお!!」
「ミノリさん、殺すな!!」
猪突猛進してくる4人。
指示を出したイツキ。
当のミノリは余裕の表情を見せた。
横に一振り。たったそれだけのことで、しなるその武器に当たった者から順に吹き飛ばされていった。
しかし。
「ふっ。」
4人目は軌道を見切り、ミノリの奥、ヒラメの方へと向かっていった。
「なっ……!?」
ヒラメは驚きを見せて後方へ跳んだ。だが運の悪いことに、跳んだ先には瓦礫の破片が転がっており、破片を踏んでしまったヒラメは尻餅をついてしまった。
「きゃっ!」
「もらったぁ!!」
「通っていいと言ったカ?」
背筋が凍りそうな声だった。誰の声なのか判別出来なかったが、倒れる直前に視線を向けると、それはさっきのメイドだった。
っていうか、いつの間に攻撃されたのだろう。
「何者だ……てめぇ。」
「只のメイドだ。……いいか?お嬢様に指一本でも触れてみろ。……そのときは全員、冥土送りにしてやるよ。」
……ここは笑うポイントなのか?一足先に青を片付けたイツキは、苦笑してそう思った。
こんにちは、そしてはじめまして。
アフロ月です。
萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
稚拙な文章で理解しがたいところがあれば、私の勉強不足です。申し訳ありません。
さて、第八章ですが……赤の国、そして白の国の状況が垣間見えることとなりました。
青、恐るべし。
そしてイツキは、カサとサゴの双子に出会いました。
いつか双子キャラを出したいと思っていたので、とても嬉しいかぎりです。
続く第九章では、深淵の箱庭が出てきます。
つまりあの人が出てくるかも……?楽しみにしておくのだよ。
最近に!後書きまで読んでくださった皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう。
Thank You!




