第六十八章「それは人を幸せにする理由」
一方のイツキ。
イツキ「迷ったぁぁぁ!!!」
茶々猫「……何をやっておるのだ、あやつは。」
黒い雪原編
第六十八章「それは人を幸せにする理由」
「ひっ……!うわっ!ちょっ、ツユさん!連射やめて!」
「…………。」
「連射は駄目だって!ツユさん聞こえてる!?」
「…………余裕のくせに。」
「いや、そう見えるだけ!!必死なんだからな!?」
犬槇VSツユ。
2丁拳銃を手に連射するツユ。
犬槇は必死だと言いながら避けているものの、随分余裕に見える。
「いや本当!剣が無かったら当たってるからね!?」
そう言いながらも、発射される光線を剣で弾いている。
「騙されませんよ。」
「何でこんなに誤解されてるんだよ……。何!?俺の日頃の行いが悪いの!?」
「そういうわけでは……。」
「じゃあその手を止めてくれ!!…………ああ……当たったら楽になんのかなぁもう……。」
嫌々なのか、犬槇は絶望に伏したような顔になっていた。
「…………ツユさん。」
「はい?」
「あああああああ!!もう知らないからな!!!」
犬槇はツユに向かって駆け出した。
勿論、その間も連射されているのだが、犬槇は当たると思った光線は全て剣で弾いた。
「ほら、やっぱり余裕なんじゃないですか!」
「違うわ!!捨て身でいったら、なんとかなっただけだよ!!!」
「くっ……!」
犬槇は鋒を突きだした。
ツユは体を横にして避けた。
「ああくそっ!!」
犬槇は剣を投げ捨てた。
素手へと切り換える。
「へ……!?」
「このくらいで驚いてちゃ、やっていけねぇぞ!」
「わ、分かってます!」
犬槇の拳が数発当たった。
「くあ……ぁ!……負けない……!」
ツユは後退しながら発砲。
犬槇の腹を掠めた。
「やばっ……。痛そ……。」
犬槇も後退。
二人は距離をとった。
「……ツユさん。今外したのはわざと?」
「えっ!?も、ももも勿論でですよ……?」
「…………。」
思いの外、誤魔化すのが下手だった。
「そうだよな。ツユさん、そんなにノーコンじゃないからな?」
「そ、そうですよー!私がノーコンなわけないじゃないですか!」
「……だよなー。」
……これは本当だ。
先程から当てにきてるわけだから。
それなら何故、先程、近距離で外した?
「…………ツユさん、もしかして、対人に慣れてないとか?」
「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!バレたああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「分かりやすっ!!もう少し悟られないようにしろよ!!」
「苦手なんですよ、誤魔化すなは!!」
……あ、噛んだ。
ばか正直なんだな……。
「それでも負けるつもりはないですから!!」
「はぁ……そうですか……。それじゃあ、ツユさんは何のために優勝目指してんの?」
「え?突然なんですか?」
「いや……なんとなく聞きたくなってさ。大丈夫、剣は無いしこの距離なんだ。奇襲なんてできっこないからさ。」
「…………それもそうですね。」
ツユは一拍置いて、話し始めた。
「私は、メンバーに選出されなかった。それは勿論、私の実力不足だったからで当然のことだと思うんです。」
「…………。」
「それなら何故、私はこの一行にいるのか?それが分からなくなりました。」
「ただ居るだけだと?」
「はい。」
「……ふーん。」
「……私は……存在意義が欲しい。だから優勝して、私を認めさせるんです。」
「くだらない。」
「…………え……。」
犬槇の言葉に、ツユは不意をつかれた。
そんな犬槇は頭を掻いた。
「なんだそれ。それって、言うなればただの自己満足だろ?」
「…………そうかもしれません。すみません。」
「……謝る必要は無い。俺も、似たようなものだから。だから……くだらないって分かるんだ。」
「……犬槇さんの理由って……?」
「………。」
犬槇は言いづらそうに、困惑した表情をみせた。
困惑した表情は、犬槇には珍しくないのだが……今回のはいつものそれとは違う。
「……すみません。言いたくないならいいですよ。」
「いや、喋らせたんだ。俺も言うよ。…………俺はな、強くなりたいだけだ。」
「……強く……?」
「……あっちで、赤で襲撃されて、俺は長を失ったし、紅さんも失いそうになった。助けてくれたイツキ達には感謝してる。……でも、俺は自分の弱さが許せなかったんだ。」
「……。」
「紅さんを護る。その為に強くなる。強くなるには……こういう舞台で戦い抜くのが手っ取り早いからな。」
犬槇は苦笑した。
……先程、彼は似ていると言った。
ツユの存在意義が欲しいという理由と、犬槇が強くなりたいという理由が。
……結果的にみればそうかもしれない。
どちらにしろ「自己満足」という結果は変わらないのだ。
しかし……。
「似てませんよ。」
「……ん?」
「まったく似てませんよ。私達の理由。」
「でも……どっちも自己満足だろ?」
「自己満足でも、貴方のは全然違う。それは人を幸せにする理由だから。」
「……。」
「私のは、本当にただの自己満足。…………負け。ですよ。」
「ツユさん……。いや、貴女のその理由も、それは人を幸せにする理由だ。」
「そんなことないです。」
「そんなことあるんですよ。だって、認められる程の力があるんだ。それは結果的に、一行の力になる。貴女の理由も立派だ。」
「…………ありがとうございます。」
「………………それじゃあ、再開しましょうか。お互いが強くなるために。」
「……はい!」
・・・・・・・・・
『決着!!立っているのは犬槇だ!!乱入枠であるツユが敗れて、残るは20人!!やはりここまで残った実力は本物かぁ!!??』
「五月蝿いなぁ……正直、耳が痛いんだが……。」
「……あはは……そうですね……。」
「それじゃあ、行きます。ツユさんは早く診てもらった方がいいよ。」
「……はい。……犬槇さん。」
「ん?」
「ここで会えてよかった。」
「……ああ、俺も。」
残り20人。
こんにちは、アフロ月です。
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
スポットをあまり当てていなかった、犬槇とツユでした。
大会に出ているものたちは、それぞれ理由を抱えて優勝を目指しているのですね。
今回の話は、私はかなり好きです。……でも理由が分からない。何故だろう。
……あ、因みに一番好きな話は、レイが離脱したところです。
最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう。
Thank You。




