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セカンドライフは平凡でっ!  作者: けろ助
入学編
6/15

邂逅 ※オスクリタ視点

俺は物心つく前からオスクリタ・グリード以外の記憶があった。

ーーー英雄の魔導士"セレン"だったものが。



今世での俺は、皮肉なことにも前世で最も嫌っていたグリード家に生まれてしまった。

この家は前世(むかし)の頃と変わらず、相変わらずクズどもが集まっていた。そんな家の奴らに利用されるのを防ぐため、前世の記憶があることは誰にも話さないでいた。


今世での生活はとても退屈だ。


家族(クズども)に命令されたことを淡々とこなすだけの日々だった。

家族以外の交流というと、家の名と俺の容姿に釣られて、群がってくる奴らとしかなかった。そんな奴らと仲良くする気も起きず、ずっと無視していたがな。

そんな生活を続けていたためか、俺は笑うことを忘れた。ーー前世の幼い頃、あいつ(・・・)に出会う前のように。


前世の時よりも裕福な家に生まれたもいうのに、"ソル"がいたあの頃の方が幸せだった。ーーー人から避けられていた俺にずかずかと遠慮なしに歩み寄って、初めての友人となり俺にいろいろな感情の出し方を教えてくれた"ソル"。

もし俺と同じように生まれ変わっているのならば、また会いたい。


そして、これは贅沢すぎる望みだが、できることならば再び俺の友人になってもらいたい。


だが、人生はそう上手くいかないもので、ソル(の生まれ変わり)と出会うことなく、15年もの月日が流れた。

そして、15歳になった俺は高等学校に通うことになり、ヴァクストゥーム学園に進学することが既に家によって決定されていた。

前世からの能力を引き継いでいるため、高い魔力と知識をもっていたため、簡単に魔法科にて首席を取った。そのせいで、入学式で魔法科の新入生代表として挨拶することになってしまった。



入学式の会場では初っ端から嫌な奴に会ってしまった。そいつは、ウェーブのかかった金髪に碧い瞳をもっていて、割と整った顔立ち(俺はそれほど美しくないと思う)の女子生徒だ。


この女は、俺と同じように試験で満点を取り、騎士科の新入生代表となった"カーミラ・エンヴィー"だ。カーミラはその類稀な剣の腕と金髪碧眼の容姿から英雄"ソル・オネスト"の生まれ変わりと言われているが、本物を知っている俺からしたら似ているのは、髪と瞳の色程度だ。

本物はウェーブなんてかかってない、綺麗なまっすぐな髪だし、常に前だけを見つめている瞳をしている。それに胸だってこんなでかくなく、まな板のように平らだ。

そして最も違う点は、その性格だ。ソルはカーミラとは違って、いつも明るく、豪快で、ーーー馬鹿がつく程お人好しな奴だった。


「あら、久し振りですね、グリード様」


カーミラは、俺の顔を見るなりいきなり話しかけてきた。

ここは無視したいところだが、そんなことでこいつの不況を買って良いことはないので、無表情のまま最低限の受け答えをした。


「そうだな。エンヴィー嬢」

「ふふ、相変わらず冷たい人ね。

そういえば、貴方はもうこの学校でペアを組む人を決めているのかしら?」

「いや、俺は別に誰と組んでも構わないから、決める気は元からない」


確かにこのヴァクストゥーム学園では、騎士科と魔法科の者がペアを組むことが義務づけられている。が、俺は誰と組もうともどうでもいいのだ。そんな俺みたいな生徒がいるため、期日までにペアを決められなかった者は、学園側によって強制的に選ばれることになっている。俺はその制度を利用しようとおもっていたのだ。


俺の返答を聞いたカーミラが、唇を大きく歪めた。ーとても醜い微笑みだった。


「あら、奇遇ですね。私も誰と組むかは決めていませんでしたの。

このままお互いペアを決めなければ、新入生代表同士組むことになりますわね」

「まぁ、そういうことになるな。そろそろ時間なので先に行かせてもらう」


これ以上、この女の醜い笑みを見たくなかったので、適当に言い訳をして、この場を後にした。


どんな奴と組んでも構わないと思っていたが、あの女と組むのはさすがに抵抗があるな。


先程述べたように、ペアを選ばないままでいると、学園側に決められる。その時に決める基準は、能力がつり合う者同士ということだ。当然、新入生代表である俺には、同じ代表のカーミラを選ぶことだろう。

適当に誰かとペアを組めばいい話だが、 俺に親しい者はいないし、組んだとしてもカーミラが何かしらの邪魔をしてくることだろう。

カーミラとペアなんて想像するだけで虫酸が走るが、たかだか三年間だけなので我慢すればいいことだ。



そんなことを考えている最中でも、時間は流れていくもので、入学式にて俺が挨拶をする番になってしまった。

俺は壇上にいき、前から用意していた言葉を坦々とつむいだ。そんな中、俺の容姿からか熱のこもった視線を多く感じるが、一つだけ変わった視線を感じた。


その視線に気づいた瞬間、俺の心臓が鳴った。


この視線を俺は知っている……?


不思議とそのように感じ、視線の主を探した。


すぐにその人物は見つかった。それは、金髪碧眼の女子生徒だった。俺と目があった瞬間、慌てて目を逸らされてしまったが、その一瞬で気づいた。


その女子生徒は、かつての俺の友である英雄の女騎士"ソル・オネスト"だと。


長年探し続けていた者が見つかった俺は、久し振りに笑った。


つい先程まで、カーミラとペアを組んでも構わないと思っていたが、今は違う。ーー俺のペアとなるのは、ソル以外いない。


今度は俺がお前を守る番だ。



オスクリタは別にヤンデレとかではないです。……………今のところは。

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