王都_その14
荒れ果てた庭を歩きながら、旧ペルセンティア邸を眺める。
ここを訪れるのは何度目か。
レジーナのアパートを除けば、王都で一番馴染深い場所だろう。
風雨に晒され、手入れのされぬまま黒ずんだ外壁。
窓の鎧戸は破れ、蔦が絡みついている。
刈ったはずの雑草が再び生い茂り、裾に引っ掛かって歩きにくい。
玄関にたどり着くと、閉ざされた扉を押し開く。
玄関ホールは、当然ながら荒れ果てたままである。
ここは時間の流れが停止しているみたいだ。
残骸を踏みつけながら玄関ホールを横切り、屋敷の一階奥へと続く廊下に入る。
幾つもの扉を横目に廊下を真っすぐ進んでいくと、突き当りが厨房だった。
厨房は屋敷の規模に比例して広く、設備も充実している。
食材の下拵えのため、何人もの調理人が囲んだであろう、大きな調理台。
一〇〇枚の皿でもいっぺんに洗えそうな流し台。傍らには、割れた水瓶が転がっている。
ずらりと調理器具が並んでいたはずの壁掛けには、誰かが持ち去ったのか、鍋一つない。
煤けた竈が、三基並んでいる。暖炉は調理用なのか、豚一頭丸ごと収まりそうである。
かつてこの場所で、屋敷に暮らす人々や来客の食事が賄われていたのだ。
食事の時間が迫れば怒鳴り声が飛び交い、戦場のような騒ぎだったことだろう。
しかし今は、ただ静寂だけが占める虚ろな空間である。
ぐるりと見渡せば、キール君の居場所はすぐに分かった。
厨房の一番奥、暖炉の脇に麻袋の山がある。
どこかで拾ってきたのか、大きな麻袋である。
それを何枚も被っている本人は、どうやら隠れているつもりらしい。
しかし麻袋の山がひどく震えているので、かなり目立ってしまっている。
カフェから姿を消したキール君を探すため、探査スキルを使った。
ヤツに発見される可能性も、付近にジェフティがいることも念頭にはなかった。
サークの末路が脳裏を過ぎった瞬間、半ば暴発する形で探査が発動したのである。
幸いなことに、すぐにキール君の反応を捉えることができた。
彼が一人でペルセンティアへと移動していると知り、とにかく追い掛けてきたのだ。
キール君はなぜ、こんな場所に舞い戻ったのか。
彼が、ずっと逃げ出す機会を窺っていたのだとは思いたくなかった
虜囚の身だと誤解していたのだとしたら、寂しい気持ちになる。
「キール君?」
声を掛けると、麻袋の山の震えが激しくなる。
一歩踏み出すと、床板が軋んだ。その途端、麻袋が勢いよく跳ねのけられた。
中から転がり出たキール君が、ぶつかるようにして壁にすがりつく。
俺に向けられたキール君の目を見て、少なからずショックを受けた。
初めて出会った時と同じく、完全に怯え切った眼差しである。
「何も恐がることはないんだよ?」
とにかく落ち着かせなくては。そう思い、そっと手を差し伸べた。
「ウソッ!!」
キール君が叫び、全身全霊で拒絶する。そこには失意と絶望が込められていた。
彼はへたり込んだ格好のまま、床を蹴って逃げようとする。
「嘘? 嘘なんて吐いてないよ? ほら、もう帰ろう?」
「マスター! いっしょ!」
咎めるような言葉の激しさに、身体が硬直する。
「ウソつき!!」
一拍置いて、彼の言葉の真意を悟った。
「ジェフティ―か!?」
驚きのあまり、思わず叫んだ。彼がなぜ逃げ出したのか、衝撃と共に理解する。
しかし、ジェフティ―の名前を聞かせたのは、失敗だった。
マスターと呼び、本当の名を憚るほどに、キール君は三重の蛇を恐れていたのである。
頭を抱えてうずくまったキール君が、大声で悲鳴をあげる。
鼓膜をつんざくほど甲高い絶叫は、生身の声帯が出せる音域の限界を越えていた。
そしてキール君の身体から、黒い煙が立ち昇り始めた。
彼のお仕着せがぐずぐずと崩れ、靄が生じる。
「よせ!? 止めろ!」
キール君のスキル、巫蟲【三】が発動した。
慌てて駆け寄り、押し止めようと伸ばした指先が、黒い靄に触れる。
「ッツ!?」
ビリッと刺すような痛みが走り、反射的に手を引っ込めて後退した。
指先がみるみる赤く腫れあがり、皮膚が引き攣れる。
黒い靄はさらに濃くなり、キール君を覆い隠してしまった。
状況は、さらに悪化する。
キール君を中心として、床板や漆喰の壁までもがタール状に溶けた。
タールから生じた気泡が次々とはじけ、有毒のガスを吐き出し続ける。
巫蟲スキルは留まることなく、こぼした墨のように周囲を侵食した。
じりじりと後ずさりながら、俺は焦燥感に駆られた。
このままでは、大惨事になる。
巫蟲スキルの【三】という成長度は、決して低い数値ではない。
もし屋敷全体に効果が及ぶ程だとしたら、ここら一帯に有毒のガスを撒き散らすことになる。
広がる黒い靄を避けつつ床に視線を走らせ、指先ほどの陶器の破片を見つけた。
二つの破片を素早く拾い上げ、耳の穴が傷付くのも構わず押し込んで栓をする。
治癒術を発動――――全身に癒しの力を張り巡らせた。
「キール君、今からそっちに行くからね?」
大きく息を吸い、肺一杯に空気を貯め込むと、黒い靄の中に踏み込んだ。
足元から這い上がる激痛に、叫びそうになった。
片手で口と鼻を抑えて、失明しないように瞼を閉じた。
視界を閉ざしたまま、キール君を刺激しないようにゆっくりと進む。
治癒術が警報を鳴らし、全身が危険な状態に陥っていることを知らせてきた。
巫蟲スキルの黒い靄がまとわりつき、衣服に浸透してきた。
皮膚が爛れ、ボロボロと剥がれ落ちていく。
それを治癒術が内側から癒し、全力で再生してくれた。
痛覚を遮断してくれたおかげで、意識を失わずに済んだ。
それでも、全身が溶けてしまいそうな感覚には、耐えがたい恐怖を覚えた。
――――もし、巫蟲スキルを阻止するだけなら、こんな苦労は必要ない。
剣技【滅】で黒い靄を斬り払い、スキル駆除を発動すればいい。
だけど、力技では駄目なのだ。
そんなことをすれば、心を閉ざしてしまったキール君を呼び戻せなくなる。
彼には、味方が必要なのだと思う。
何があろうと、どんなことがあろうと、彼を守り、決して裏切らない味方が。
「俺は、あの男の仲間じゃない」
ひざまずいた俺は、静かに語り掛ける。
目は見えないが、すぐ近くにキール君がいるはずだ。
彼が息をひそめ、耳を澄ましているのを、気配で感じた。
あのカフェで、俺とジェフティはテーブル越しに話し合っていた。
お手洗いから戻ったキール君は、それを目撃したのだろう。
俺とジェフティ―が仲間だと誤解し、だから逃げ出した。
「君を、あの男には絶対に渡さない」
この屋敷に閉じこもっていたのは、ジェフティから隠れるためなのだろう。
ジェフティに対するキール君の恐怖は、相当に根深いのだ。
だから俺は、頼りになる大人を演じなければならない。
キール君のスキルなど、歯牙にも掛けない強さを見せつける。
ジェフティなど恐れる必要がないのだと、信じさせなければならない。
「あの男から、絶対に君を守ってみせる」
手を伸ばした俺は、キール君の背中をそっと撫でた。
◆
落ち着きを取り戻したキール君は、スキルを停止させた。
その途端に黒い靄が晴れたのは、やはりスキルの産物だからだろう。
巫蟲スキルによる毒の靄は、キール君に害を及ぼすことはなかった。
しかし彼自身は無事だったが、お仕着せの方はほとんど駄目になっていたのである。
背に腹は代えられず、隠蔽で人目を避けながら、半裸のキール君を連れ帰った。
アパートに戻ると、大騒ぎになった。
あられもない格好で戻ったキール君のこともあるが、俺自身も酷いことになっていた。
頭の毛が、チリチリになっていた。
治癒術でも、さすがに毛髪を守ることも、再生することはできなかったようである。
痛み過ぎた髪は全て剃るしかなく、眉はヘレンに描いてもらった。
まあ、気にすることは、ない。
髪なんて、また、生えてくるのだ、きっと。
――――ほんと、お願いします。
ひとしきり嘆いた後、俺はキールの部屋を訪れた。
着替えさせられた彼はベッドの端に座り、俺の姿を―――頭部を見るとベソを掻いた。
「ごめん、なさい」
落ち込む彼の頭をポンポンと叩き、本題を切り出した。
「俺と一緒にいた男が、マスターだったんだね?」
改めて確認すると、こくりと頷くキール君。
ジェフティこと、リフター・パーシーに関する報告書の内容を思い出す。
彼は旅行が趣味で、海外で珍しい薬草を採取しているとあった。
そしてキール君もまた、海外から連れて来られた。二人の接点は、国外にあったのだ。
キール君はマスター、ジェフティに引き渡されることになっていた。
それは、なぜなのか。俺は一つの推論を得ていた。
「キール君は、薬を作れないかな?」
期待のあまり、前のめりにならないように注意する。
興奮し過ぎて、キール君を怯えさせては元の木阿弥だ。
「大切な人が、病気になったんだ。どうしても、その人を助けたいんだ」
手にしていた霊礫を差し出し、キール君に懇願する。
「特別な薬がいるんだ。これを使って」
キール君は、手の平で霊礫を受け取った。
彼はじっと霊礫俺を見詰め――――首を振った。
「無理、です」
短く、誤解しようもないほど単純な回答。
「作る、毒だけ。薬、できない」
よっぽど失望感が顔に出てしまったのだろう。
「ごめんなさい」
キール君は申し訳そうな泣き顔で謝った。
「――――いいんだよ、気にしなくて」
ジェフティが、キール君を海外から呼び寄せたのは何故か。
ひょっとして巫蟲スキルには、霊薬を精製する能力があるのかもしれない。
そんな都合の良い希望を抱いたのだ。
◆
「霊薬精製には、錬金術というスキルが必要だ。そして俺は、そのスキルを所持している」
アパートの書斎にレジーナとクリスを呼び出し、単刀直入に切り出した。
「ちょ、ちょっと!? いきなり何を言い出すのよ!」
呆気にとられたレジーナが文句をつける。
「俺が雇っている人間からの情報だ。錬金術によって、霊礫を霊薬に精製できることが判明した。そして俺はたまたま、錬金術を所持している」
無茶は承知の説明で、ごり押しするつもりだ。
納得しようがしまいが、これで貫き通す。
「いい加減にしなさい! そんな都合の良い偶然が――――」
「レジーナさん、タツは嘘を言いません」
クリスはきっぱり断言した。それからちょっと首を傾げ、訂正する。
「すぐにバレてしまうような嘘は言いません」
「クリスちゃん? なら、あなたは知っていたの?」
「いいえ。ですがタツなら、あり得る話です」
クリスがフォローしたが、レジーナは懐疑的である。
「だったら証拠を見せなさいよ」
その言葉を予想していた俺は、用意してあった霊礫を差し出した。
「いったいそれが――――」
錬金術【三】 発動。
霊礫が、閃光を発した。
手の平をひっくり返すと、白い灰がパラパラと床に落ちる。
「まさか!? 未加工の霊礫が!」
今のは以前、レジーナがやってみせたパフォーマンスだ。
「どうやったの!?」
「錬金術で霊礫から不純物を除去し、励起した」
わざと、こともなげに説明する。正直に言えば、理屈なんて半分も分からないのだ。
レジーナは目を瞠り、絶句してしまった。
「なるほど」
しかしクリスは平然と頷き、俺を見詰める。
「そのスキルには、問題があるのですね?」
「――――どうして、そう思うんだ?」
いきなり核心を突かれ、用心深く尋ねる。
「もし問題がないのなら、私達に内緒で霊薬を作っていたはずですから」
クリスが断言する。ちょっと非難がましい口調だ。
「隠し事をするのが、タツの悪い癖です」
「いったい何が問題なのよ!」
レジーナが興奮した様子でクリスを遮る。
彼女の問いに、俺はため息交じりに答えた。
「霊薬の作り方が分からないんだ」
カルドナの情報通り、リフター教授ことジェフティは、錬金術スキルを所持していた。
それを看破で読み取った俺は、アパートに戻ってからポイントを消費して、錬金術スキルを取得した。
さっそく霊礫を手にして錬金術を発動し――――途方に暮れたのである。
どうすれば霊礫から霊薬が精製できるのか、皆目見当もつかないのだ。
先ほどの霊礫のパフォーマンスを試したが、こちらは難なく成功した。
霊礫の加工と変換は、実際には大して複雑な工程ではない。
錬金術が俺の記憶を読み取り、解析して実行できた程度のことである。
しかし霊薬は実物を見たこともなければ、その精製する過程も知らない。
錬金術は、処方箋を必要とするスキルだった。
だから、ジェフティーは、リフター教授に化けたのである。
王城に招聘され、霊薬の処方箋を入手するために。
一〇年間、ただひたすら待ち続けた彼の執念に、改めて恐れを抱いた。
「…………だったら、どうしたらいいのよ!」
レジーナがヒステリックに叫ぶ。
「あと一歩なのよ! あと少しでシルビア姉様を助けられるのに!」
「やることは決まっている」
俺は二人を見詰め、宣告した。
「王城を、攻略するんだ」
◆
「お嬢様? これは何事でしょうか?」
レジーナに呼び出され、応接間の壁際に並ばされたヘレン、サーシャ、トルテ。
ソファーにはレジーナが座り、その両脇には俺とクリス、そしてキール君が並ぶ。
この位置関係に戸惑いを覚えた風のヘレンが、お手伝いさん達を代表して主人に尋ねる。
彼女の問いに答えず、レジーナが合図をすると、クリスが前に進み出た。
クリスはヘレン達に、預かっていた袋を順に手渡す。
ずっしりと重い袋には、数年は遊んで暮らせるほどの金貨が入っている。
「今まで、誠心誠意仕えてくれてありがとう」
三人が金貨入りの袋を受け取ると、レジーナは無表情に告げた。
「あなた達には本日限りで、暇を出します」
「「「お嬢様!?」」」
ヘレン、サーシャ、トルテが、悲鳴じみた声で叫ぶ。
しかしレジーナは一顧だにせず、冷たい口調で最後の指示を下す。
「さあ、今すぐこのアパートから出て行き、お兄様の許に戻りなさい」
「これで本当に良かったのか?」
ヘレン達は先ほど、意気消沈したように退室した。
彼女達は何度も解雇の撤回を求めたが、レジーナはことごとく一蹴した。
もう、あなた達の顔は見飽きた。代わりにクリスとキール君に身の回りの世話を任せる。
だからあなた達は要らない。
そんな憎まれ口まで叩いたのだ。
ヘレン達が出て行くと、レジーナはソファーの上でうずくまり、ひどく落ち込んでしまった。
錬金術スキルの秘密を明かし、最終目標を告げた直後のことである。
レジーナは即座に、ヘレン達の解雇を決断した。
本音を隠し、憎まれるように仕向けてまで彼女達を追い払う必要があったのか。
そんな俺の問いに、レジーナは寂しげな口調で答える。
「当たり前でしょう? 彼女達をわたしの贖罪の道連れに出来ないわ」
「贖罪?」
膝を抱え込んだレジーナを見下ろし、首を傾げる。
「君はどうして、そこまでシルビアさんに尽くすんだ?」
カルドナによれば、誘拐されて心が傷付いた彼女を、シルビアさんがケアしたらしい。
そのことに恩義を感じているのだろうと思ったのだが、彼女は今、贖罪という言葉を使った。
「シルビア姉様の想いを、ヴェルフが拒絶した。わたしはその場面を目撃し、叔母様達に知らせたわ」
遠い過去に思いを馳せ、彼女は語る。
「もしも、わたしが黙っていたら、今頃シルビア姉様は、王都で幸せに暮らしていたかもしれない」
レジーナが魔女達に漏らしたため、レジーナさんの初恋は実を結んだ。
しかし、ぺルセンティア家は国家反逆罪で取り潰された。
結局、シルビアさんは王都を離れる破目になり、今でも逃亡犯扱いだ。
レジーナは今まで、どれほどの重さの罪の意識に耐えてきたのだろうか。
「それに、シルビア姉様とお兄様は、結婚していたかもしれない」
「…………なに?」
「二人は、一応婚約者だったのよ。もちろんシルビア姉様の意思が尊重されるから、形式的なものだけど」
グリグリと膝に額を押し当て、悔恨の呟きを漏らす。
「わたしが余計なことをしなければ、お兄様と結婚して、シルビア姉様は幸せになれた。お兄様は、シルビア姉様を見捨てる真似をしないで済んだ」
俺も、クリスも、掛けるべき言葉がない。
「わたしは贖罪を果たさなくてはならない。でも、ヘレン達を危険に巻き込めないわ」
「…………たかが使用人に、そこまで気を使わなくても」
「ヘレン達は、ただの使用人ではないわ!」
レジーナが顔を上げ、怒りを込めて俺を睨む。
その眼差しはやはり、彼女の兄とそっくりだ。
「ヘレンも、サーシャも、トルテも! わたしの友人よ!」
レジーナの髪が、バチバチと火花を散らして逆立つ。
彼女が、本気で怒っている証拠だ。
「辛い時も悲しい時も支えてくれた本当の友人よ! それなのに、王家との戦いに巻き込めるはずがないでしょう!」
「――――だってさ? どうする?」
俺が声を掛けると、客間の扉が開いた。
廊下で聞き耳を立てていたヘレン、サーシャ、トルテが戻ってきた。
彼女達は横一列に並び、スカートの裾を摘み上げて深々と頭を下げた。
「「「お嬢様。きっとお役に立つと、誓います」」」
しばらくの間、レジーナは口をぱくぱくとさせていた。
やがて我に返ると、キッと俺を睨んで怒鳴った。
「謀ったわね!?」
「うん、謀りました」
レジーナに命じられ、ヘレン達を呼び集めた時に、ざっくりと事情を説明したのだ。
そしてレジーナの本音を引き出すから、自分達で今後のことを決めろと告げた。
結果は、悪く言えば思惑通りだ。人手が欲しい俺は、こうなると半ば予想していた。
罪悪感はもちろんあるが、
「最終的には、彼女達自身が決断したことだ」
「そうです、お嬢様。水臭いですよ?」
ヘレンが、年長者の余裕で微笑む。
「迷惑は、いつものこと」
トルテちゃんが、なにげに毒舌である。
「臨時報酬も頂きましたので、ご期待にそえる働きを致します」
レジーナから、露悪趣味だと評されるサーシャ。
先ほど渡された退職金は、ちゃっかり頂戴するつもりらしい。
「せっかく友達が、こう言ってくれるんだ。素直に力を借りよう?」
みるみる顔面が真っ赤になるレジーナ。
自分の吐いた台詞を思い出し、恥ずかしくなったのだろう。
彼女は、悪態を喚き散らした。
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ラストに向けて構想を練るため、更新に少々お時間を頂戴します。
なにとぞご容赦ください。




