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王都_その5

「これまで以上に、慎重に行動しよう」

 俺はクリスとレジーナに、そう注意を促した。


 霊薬は入手以前に、その存在自体が疑問視された。

 レジーナの恩師、リフター教授は、霊薬などあり得ないと断言したのだ。

 薬学部の教授としての彼の言葉には、認めがたいが真実味を感じてしまった。

 一方で、レジーナは教授の言葉を嘘だと決めつける。

 彼女が知る教授とは思えない言動というのが、その根拠だ。

 いったいどちらが真実なのだろうか。

 仮にレジーナが正しく、教授が嘘を吐いているとしたら、その理由はなんだろう?

 少なくとも、誰彼構わず訊いて回るのは避けた方が良さそうな気配を感じる。

 だから俺達は、(から)め手から攻めることにした。


 霊薬の実在や効果が疑わしくなったのだから、先に確証のようなものを得たい。

 そのためには、まず霊薬を入手したとおぼしき貴族家当主を突き止める。

 どのような経緯で入手したのか探り、王家との繋がりを確認する。

 その先の具体的な案は、まだ思いつかない。

 王家が本当に霊薬を保管しているのなら、それを精製している人物を探し当てる。

 もしくは、霊薬の受け渡しが王城の外で行われるとすれば、その現場を押さえるのも一案である。

 そうしたら――――いや、それは後で考えよう。


 さて、貴族相手となると、必然的に俺やクリスに出番はない。貴族令嬢であるレジーナが頼りだ。

 有力貴族の令嬢である彼女は、貴族の会合などに招かれる機会が多い。

 それらの場で、さり気なく健康の話題について誘導する。

 そして王都在住の貴族家当主の現況について、話が盛り上げるようにするのだ。

 これならば、誰の注目を引かない。健康と天気は、無難な話題の双璧なのである。


 実際、女性の情報網は凄いと実感する。驚くほど大量の情報や噂話が集まったのだ。

 しかし、それらを精査した結果は、あまりかんばしいものではなかった。

 実際、病によって亡くなった当主は、かなりの数にのぼる。

 表面的には、その死に不審な点はない。レジーナの友人の父親も、最近鬼籍に入ったそうだ。

 大貴族と呼ぶに相応しい家柄だったそうだが、それでも病で亡くなっているとのこと。


 彼らは、霊薬を服用しなかったのだろうか? 服用してなお、薬効甲斐なく亡くなったのか?

 もしかするとリフター教授は、本当のことを話したのかもしれない。そう考えると、気分が滅入った。

 しかし、重篤の病だった貴族家の当主が、奇跡的に回復したという風聞も流れている。

 医師が匙を投げた病身の貴族家当主が、翌年にはすっかり元気になったという噂だ。

 霊薬との関連を尋ねる者がいたが、当人は家族の看護のおかげなどと、笑って受け流したそうだ

 この噂は出所が不明な上に、どのような病で、主が誰なのか、つまびらかにされていない。

 いかにも作り話めいていて、信用できない。

 現状、レジーナが収集した情報だけでは判断がつかなかった。


 その上、レジーナの身も心配の種になっている。

 茶会にサロンに夜会と、彼女は連日連夜、あらゆる集まりに顔を出していた。

 俺とクリスは従者として付き添うが、貴族や有力者の集まりでは彼女一人に任せるしかない。

 時間が限られているのに成果が上がらず、彼女は次第に焦りと疲労を蓄積させている。

 ふとした拍子に、レジーナが目の下の隈を化粧で誤魔化していることに気付いたのだ。


 自分の不甲斐なさに胸を突かれ、俺は禁じ手の一つを使うことを決意した。


  ◆


「王都で一番風紀の悪い場所、ですか?」

「ああ、そんな場所を知らないか?」

 俺の問いに、サーシャは微妙な表情をした。

「なんでそんなことを…………いえ、聞くだけ野暮ですね」

 話の分かる子で良かった。たぶん、上手い具合に誤解している。

「このことは、くれぐれもレジーナやクリスに内密に」

 無駄と思いつつ銀貨を握らせると、彼女は黙って頷いた


 夜中、全員が寝静まったところを見計らい、バルコニーに出て隠蔽を発動した。

 柵から身を乗り出して雨樋を伝い、こっそり街路に降り立つ。

 人目を忍んで市街地を移動すると、王都旧市街の東門に到着した。

 東門は、扉を閉めなくなって久しいと聞く。

 平和と繁栄の時代の象徴として、あえて開け放っているそうだ。

 王都を脅かすほどの外敵など存在しないという、自負心のアピールである。

 門の脇には歩哨がいたが、特に誰何されることもなく通り抜けることができた。

 そこから先に、新市街が広がっている。王都の東斜面一帯には、無数の灯火が浮かんでいた。

 特に灯りが集中している場所が、斜面の中腹に見える。

 黒い海に漂う、夜光虫の群れのようだ。そこが今夜の目的地である。

 緩やかな勾配の道をひたひたと小走りに下っていくと、次第に周囲の灯りが増していく。

 やがて、夜半にも関わらず人通りで賑わう一画に出た。

 不夜の回廊と呼ばれる、新市街で一番の繁華街だ。

 街路の両脇をずらりと酒場が軒を連ね、無数の灯火が夜の闇とせめぎ合っている。

 整然と整った印象の旧市街とは、まるで違う。猥雑で騒々しく、活気と退廃で混沌としていた。

 ふらふらと歩く酔っ払いを避けながら、酒場の軒先から店内の様子を覗いて歩く。

 どの店も扉が開け放たれ、酔い騒ぐ客達の声が溢れてくる。


 王都の夜を照らすのは、光木と呼ばれる照明が一般的だ。

 海外からの輸入品で、着火すると白く輝きながら燃焼する。その明るさは蝋燭の比ではない。

 ただ、その白い灯りの側にいると、目が痛くなるのが難点だが。

 辺境都市では贅沢品である光木だが、王都では価格統制が行われ、庶民でも気軽に入手できる。

 夜を明るく照らすことによって、犯罪を抑制しているらしい。

 光木で照らされた白い街並みは、幻想的ですらある。

 壁や石畳に、道ゆく者達の影絵が映し出されている。

 俺もまた、足元でクルクルと踊る影をお供に、不夜の回廊の奥へと進んだ。


 やがて、光木が発する鼻をツンとくる刺激臭の中に、憶えのある匂いを嗅ぎ取った。

 微かに漂う匂いの痕跡を追って、路地の暗がりへと滑り込む。

 匂いが次第に濃くなり、やがて一軒の酒場へと俺を案内した。

 外套のフードを目深に被ると、閉ざされた店の扉を押し開く。

 店内のあちこちに掲げられているのは、蝋燭の灯りだ。

 白い光木の輝きに慣れた目には、まるで洞窟の暗がり同然である。

 そこは内装こそ違うが、雰囲気はまるっきり同じだ。

 店内に立ち込める、臭い消しの香木の煙。テーブルで、カサコソと囁き合う客達。

 そこは人間に擬態する捕食者――――賞金稼ぎ達の巣窟だった。

 やはり王都にも賞金稼ぎギルドがあったようである。

 人が群れ集う場所ならば、どこにでも彼らの巣が営まれるのだ。

 カウンターに近寄ると、細面の店主にじろりと睨まれた。

 たぶん、この銀髪の男が賞金稼ぎギルドのマスターなのだろう。

「…………注文は?」

「白をくれ、甘いやつだ」

 眉をぴくりと動かしたが、マスターは黙って背後の棚からカップを取り出した。

「見ない顔だな。どこから来た?」

「東からだ」

 差し出されたカップを一息に呷る。甘ったるく、どろりとした喉越しで、酒精が強い。

 微量だが気分が高揚する成分も混じった、賞金稼ぎ愛飲の酒である。

「名前は?」

「亡霊だ」

 マスターが鼻を鳴らすと、周囲から注がれていた視線が止んだ。

 別に犬でもネズミでも構わない。人がましく名乗らなければ、それでいいのだ。

 ちょっとした儀式を終えると、カウンターにもたれ掛かって店内を見回した。

 ――看破を発動する。一人ずつ、スキルと履歴を確認していく。

 五人目で、おあつらえ向きのやつを見つけた。

「あの席の男に、一杯やってくれ」

 カウンターに銀貨を投げ、目星をつけた男に近付いて声を掛けた。

「よう、兄弟。いい晩だな?」

 カップを覗き込むように俯いていた男が、ゆっくりと顔を上げた。

 酒精で濁った眼をした、取り立てて特徴のない顔である。

「…………てめえなんか、兄弟じゃねえ」

「つれないことを言わないでくれ。田舎から来たばかりだから、挨拶しておこうと思ってな」

「失せやがれ」

 にべもなく男が吐き捨てると、ちょうどマスターがやって来てテーブルに酒を置いた。

「こいつにあまり飲ませるなよ。年中、酔っ払っているんだからな」

「余計なお世話だ」

 答えた男の声は、意外としっかりしている。

 マスターが舌打ちして去ると、俺は正面に座ってカップを掲げた。

「これからよろしくな、兄弟」

 じろりと睨まれたが、誘惑に勝てなかったらしい。男はカップに手を伸ばし、口をつけた。

 それから、刻々と時間だけが経過していく。ちびちびと酒を飲む男を、黙って観察する。

「…………何が狙いだよ」

 根負けした男が、とうとう口を開いた。

「はて、狙い?」

 俺がとぼけると、男は忌々しげに舌打ちする。

「こんな酔いどれに、なんの用事があるんだよ」

「ああ、それか。頼みたい仕事があるんだ」

「仕事だと?」

 訝しげな男に、さも内緒話があるように顔を寄せる。

 つられて前屈みになった男に手を伸ばし、胸倉を掴んで引き寄せた。

 驚いた男が叫ぶ前に、首を締め上げる。息が掛かるほどに、顔が近くなった。

「見ろ」

 殺気を込め、男を脅す。俺の中で亡霊が甦り、喉を斬り裂く感触を思い出した。

「俺を、()るんだ」

 怯えた男が、反射的にスキルを発動する。

 探るような視線に、もぞもぞとした不快な感触を覚えた。

 次の瞬間、男の目が大きく見開く。その顔が、驚愕の色に染まった。

 俺もまた、あらためて相手に看破を掛ける。

 名称:サーク

 年齢:四〇歳

 スキル:鑑定【二】

 履歴:殺人×一


 俺の看破と、サークの鑑定。互いにスキルを駆使して、相手の情報を読み合う。

 鑑定で読み取られる感触が気持ち悪い。指で脳の皴を撫でられるみたいだ。

 拘束から逃れようとするサークを、思いっきり突き放した。

 彼は椅子の背もたれにぶつかり、苦痛に呻く。

「おい、揉め事は御免だぞ」

 何事かとやってきたマスターに、無邪気を装って答える。

「ああ、すまない。ちょっとした悪ふざけだ。心配するなよ、もうこいつとはダチだから」

 なあ? と笑い掛けると、サークは痙攣のように頷いてくれた。物分かりの良いやつだ。

「…………ならいい。だが、店の中で暴れたら叩き出すからな」

 捨て台詞を吐いたマスターが、後は知らんとばかりに立ち去った。


「さて、サーク? お互いの立場は分かったな?」

 落ち着くのを待ってから声を掛けると、サークが身を縮こまらせる。

「安心してくれ。俺はもう、賞金稼ぎから足を洗っているんだ」

 優しく宥めてみたが、サークは落ち着かない様子で左右に視線を配る。

 まるで追い詰められ、逃げ道を探す小動物のようだ。ふと罪悪感を覚える、少しだけだが。

 彼には、鑑定スキルがあるのだ。その殺人履歴が、誤認討伐だとは思えない。

 まあ、詳しい事情は分からないが、今の俺には関係ない。

「さて、頼みたい仕事だけど」

 俺は懐から金貨を一枚取り出すと、テーブルに投げ出した。

「霊薬に関する情報が欲しい」

「なんだと!?」

 驚きの声を上げたサークが、慌てて口をつむぐ。

 すまない、カティア。俺の身を案じてくれた彼女へ、心の中で謝罪する。

「上手くいったら、金貨五〇枚を払おう」


 サークが、ごくりと喉を鳴らす。怯えていたはずの目が、欲望にぎらついた。


  ◆


 雨樋伝いにバルコニーから部屋に戻ると、ヘレンとトルテちゃんが待ち構えていた。

「お嬢様がお呼びです」

 手にした燭台の灯りに照らされ、ヘレンの顔が不気味に見える。

 トルテちゃんは一歩下がった明かりの外、隅の暗がりに溶け込んでいる。

 なんだか危ない雰囲気を、ひしひしと感じる。

 彼女達に前後を挟まれ、居間へと連行された。

 そこで見たのは、ぐったりと椅子にもたれ掛かるサーシャの姿だった。

 俺が居間に入ると、彼女はうんざりした顔をこちらに向けた。

「お楽しみでしたか?」

 皮肉たっぷりに尋ねるサーシャから、ソファーに座るレジーナに視線を移す。

「どうしたんだ、いったい?」

「心配性なのよ、ヘレン達は」

 レジーナは苦笑し、俺の背後に控えるヘレンとトルテちゃんを見遣る。

「お言葉ですが、お嬢様の許可なく外へ抜け出したのです。どこへ出掛けたのか、尋問すべきです」

「教えていないのかい?」

 何となく話の流れが掴め、俺はサーシャに尋ねる。

「お金を受け取った以上、守秘義務がありますから」

 意外だ。金だけちゃっかり受け取り、真っ先にレジーナに報告すると思っていたのに。

「あなたは誰に仕えているの! 外部と連絡していたのかも知れないのよ!」

 ヘレンの叱責を、サーシャがそっぽを向いて無視する。

 しかし、サーシャが告げ口していないのなら、どうしてバレたんだろう?

 ちらりと後ろを振り向けば、小柄なお手伝いさんが、無表情にこちらを見詰めている。

 俺の一挙手一投足を見逃すまいとする、冷静な目だった。


「はい、そこまで!」

 ぱんっと手を打ち、レジーナが立ち上がった。

「ヘレン、彼は雇い人ではなく、友人です。ここに滞在中は、わたしに仕えるのと同様に、彼に仕えなさい」

「お、お嬢様!?」

 驚いたヘレンが、抗議の叫びをあげる。

「頼んだわよ、ヘレン?」

「…………承知、しました」

 ヘレンの、いかにも不本意そうな声。彼女に睨まれている気がして、背中がぞくぞくした。



「出掛けるなら、一言告げてちょうだい。サーシャが吊し上げられて、大騒ぎだったのよ?」

「すまん、俺が悪かった」

 俺とレジーナは、向かい合わせでソファーに座り、酒を酌み交わしていた。

 ちなみにクリスは、ぐっすりと眠っているそうだ。

 良かった。彼女が起きていたら、もっと大騒ぎになっていただろう。

「一応口止めしたけど、どうせサーシャが君に報告するだろうと思ったから…………」

 最悪、クリスにさえバレなければ、それで良いと思ったのだ。

 もごもごと弁解すると、レジーナは納得した表情になる。

「あの子、露悪趣味なところがあるから誤解しないでね。いくら問い詰められても、黙秘していたわよ?」

 そうなのか? なんだか申し訳気分でいっぱいだ。

「それで、何をしてきたの? それとも聞かない方がいい?」

 皮肉気に笑うレジーナ。その表情に、ちょっとした違和感を覚える。

 彼女の目元が、笑っていない。底光りする瞳と、わずかに歪む口元。伝わってくる、負の感情。


 何となく察していたが、間違いないようである。

 出会った最初からずっと、彼女は俺に対して嫌悪感を抱いているのだ。


 気付かない振りをしたのは、彼女が理性的に感情を抑えていたからだ。

 俺と彼女は、同じ目的を持った同志だ。信用もしているが、それは必ずしも友人を意味しない。

 だけど、感情で左右される友情よりも、よほど確かな絆と言えるかもしれない。

「情報収集のため、人を雇った」

「――――口は堅いの、その人は?」

 かなり不満そうだが、彼女の懸念も最もだ。

「相手の弱みを握って、脅しておいた。裏切ったら命がないから、たぶん大丈夫だと思う」

 レジーナの目が、すうっと細められる。嫌悪の色が、ほのかに垣間見えた。

 たとえ俺を嫌っていたとしても、彼女は現実的に振る舞えると確信している。

 ならば信用まで損ねないように、誤魔化しは止めようと思った。

「内緒で行動して悪かった。あらかじめ告げていたら、クリスが絶対について来るから」

 彼女には、なるべく俺の汚い部分を見せたくないと、情けない理由まで白状する。

「こんな下衆な男で、失望したか?」


「…………どうしてあなたは、霊薬を手に入れようとしているの?」

 だいぶ経って彼女の口からこぼれたのは、そんな問い掛けだった。

「え? シルビアさんの病気を治すために決まっているだろ?」

 今更な質問に戸惑う俺を、レジーナは推し量るように凝視する。

「どうして? カティア様に命じられたから? 高額な報酬を約束された?」

「いや、違うよ。シルビアさんと、彼女の娘のためだから」

 レジーナが顔をしかめる。どうやら、この答えではお気に召さないらしい。

「ごめん、遠回しな訊き方だったわね。あなたはシルビア姉様の愛人なのかしら?」

「――――いいや、違う。俺は彼女の宿の客で、それ以上の関係じゃない」

 あまりにも不躾な質問だったこともあり、つい言葉に詰まってしまった。

「カティア様への忠義でなく、報酬のためでもない。愛人でもないとなると、動機が薄弱ね」

 どうして下衆な俺が、シルビアさんを救おうとしているのか、怪しんでいるのだろうか。


「あなた、わたしとシルビア姉様が従妹同士だってこと、知らなかったでしょ?」

 最初に出会った日、彼女はシルビアさんの従姉妹だと名乗った。

 顔には出さなかったつもりだが、内心の動揺を見抜かれていたらしい。

「だったら、シルビア姉様の過去も知らないのよね?」

 俺は黙って頷くしかない。

「単なる善意で動いているのだとしたら、事情を知って怖気づくかもしれない」

 醒めた眼差しで、レジーナは冷たく告げる。

「土壇場で裏切られたら困るのよ」

「なら、事情とやらを教えてくれ。何も知らない俺が、いくら言葉を連ねても信じられないだろう?」


 シルビアさんが貴族の関係者だと知った時から、複雑な事情があるかもしれないと想像はしていた。

 それを部外者だからと、知らぬふりを通したのだ。

 でも、ここで彼女の懸念を払拭しないと、足元をすくわれかねない。

 俺は逃げることを止め、真実に向き合う覚悟を決めた。


「シルビア姉様はスターシフの一族に連なり、一三の時にシルビア・ペルセンティアになったわ」

 魂の奥底まで見極めてやる。そんな眼差しで、レジーナは語り始めた。

「シルビア姉様が嫁いだペルセンティア家は、王都でも最古の家柄。その歴史は王家よりも古く、名門中の名門だった(・・)

「だった?」



「国家反逆罪に問われ、家門断絶になったわ」

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