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前半まではアヒルの子(~どうせ後半もアヒルの子)

作者: ごんぎつね

なんで人は小説を書く間に息抜きとして小説を書いてしまうのでしょう

わかりません、貴方わかります? まぁ多分誰も読んでくれないからいないと思いますが、なので僕が断言しましょう……。

 

  

 ……ゴールデンウィークなにしよっかなぁ。

 ―僕とあの子はどうしようもなく

 釣り合わない、絶対に、永遠に。



 汚いアヒルの子という童話をご存知だろうか。

 あの話は、とても感動的で幼い僕の激情を震わしてくれた。

 けど、今の僕、高校生になった今の僕は、あの話を思い出して、なぜだか涙が出てきた。

 なぜだろうね、わからない。

 でも、いつも決まって、その落涙は洗面所のトイレや自分の部屋にある物見台、鏡が在る場所で自分を見つめていると流麗に華麗に壮美にゆらりくらりと流れていくんだ。


 

 ―「僕は……僕は、白鳥じゃないんだよッ!!! お母さん」

 高校一年の春、僕は恋をした。

 彼女は、とても美しい子で、遠慮がちに言っても内に秘めた自分の気持ちを隠せないくらいに僕には美しい以外の比喩が見つからないし見つけたくないくらいに魅力的に映えた。

 そうして、勇気を振り絞って僕は彼女をど定番の体育館裏に呼び出してある日、熱情を赴くままにぶつけた。

 すると、彼女は緊張で唇がワナワナと震えて顔もぐしゃぐしゃになった僕に、冷たい声でこう告げたんだ

 「ごめん、ちょっと何言ってるかわかんない、鏡見たことある? 笑うしかないんだけど」

 その冷たい一声を挙げて、彼女はそのまま気怠そうに学生鞄を手に取って足取り軽く体育館を通り、僕の前を去っていった。

 冷蔵庫に出したすぐの冷たいアイスを齧った時みたいな、抑えきれない抑えようのない敏感な物が僕の頭をキーンと襲い掛かって体中に行き渡りそうになったけど、なんとか僕は体育館裏でうずくまっている自分の体を起こして、外へ出た。

 外は雨が降っていた。

 ザーザーザー

 まるで行為が行われる前と後の僕の心境を如実に表したみたいで、虚実に足元を掬われそうになって、足にグッと力を入れた。

 後悔しか、後の祭りしか今の僕の心には響いていない、水溜りに一滴墨汁を零すと水溜りが徐々にたった一滴の墨汁の色素に支配されていくでしょう? あんな感じにジワジワと僕の心にはおよそこの年相応の青春という暗黒が波状の様にジワリ ジワリと広がっていっている。

 塗れ濡れて重い重い足を家路に向かわせていく、なんでかな。

 辛いのに、言葉が出てこないんだ……。

 まるでこの雨に気持ちが堰止められてるみたいに、雨が

 「まだだよ、まだダメだよ、我慢しなくちゃ」

 て主張してきてるみたいに、今僕が最も行いたい事をこの無数の天空の嘆き達がセーブしてくれている。

 でも、僕もそう思うんだ。

 今僕がここで、瞳から降り注ぐ雨と同化出来る液を流せば、何かがうやむやになって、きっとこの日の事は僕にとっては日常の唯の一コマに上書されちゃうんだろうなって、都合の良い何かに塗り替えられちゃうんだろうなって思うから、僕もここで耐える、我慢する。

 まだだ、まだ、まだまだまだ。

 歩く、歩く、歩く

 足を交互に動かすいつも通りの当たり前の動作がいつもより酷く違う、一緒な様でなんでか違うんだ、わかんないけど……説明出来ないけど、つま先に力が入らないんだ。

 こんな僕を見て、きっと誰かは笑う。

 『なぁにアイツ、女に振られて落ち込んでんの? 青春してんね』と誰かは口笛交じりに。

 『世の中を知らないとなぁ、お前がオーケーなら俺なら二股狙えるね』と誰かは格好つけた顔で。

 色んな人が僕を見て、想い思いのコトバを連ねていくだろう。

 僕がその色んな人が連ねた想い思いで重くなってしまった思いより遥かに募らせすぎて重くなりすぎた彼女への想いの方が僕にとっては重要だから気になりはしないけど。

 ダメだダメだ……。

 こんなことを呟いていたら、又誰かに

 「女女しいなぁ、寄るな鬱陶しい」とか言われてしまう。

 僕は結構、しつこい性格、らしいから。

 とぼとぼとそのままの気持ちで、家路につく


 家に入れば、温かい料理を母親が丹精込めて作っていて、エプロン姿だった。

 けど、僕はそんな母親のいつも通りの優しさに更に甘えてしまう行動を今から取ってしまう。

 リビングに上がって椅子に座った途端……

 僕は、目から涙を流してしまった。

 母は、料理の合間に、こちらに「おかえり」を言う為に振り向いてくれたけど

 振り向いてすぐに、又料理へと戻ってしまった。

 「どうしたの、今日は、眼、赤いわよ」

 いつ見たんだろう、そう思うくらいに母は僕の事をいつも一目で把握できる。

 ―「お母さん……僕はね、白鳥じゃないんだ…」

 説明になってない言葉の糸を母に紡げる、意図は僕にもわかってない。

 「アヒルの子は、白鳥でも努力してたのよぉ~」

 母は料理を作りながら僕に相槌を打ってくれる。

 

 そう、幼い頃、僕が読んでいた【汚いアヒルの子】のアヒルは高校生になって思い出してみれば、白鳥でしたというオチだった。

 あの時、思い出した瞬間、僕は世の世知辛さという物を味わったんだ。

 人間の外見という物は、生まれもった物はいくら頑張ったところで覆りようがないんだってことが分かってしまったから……。

 「努力しても、一緒だよ……僕はアヒルでしかないんだよお母さん」

 母は御膳に作り終えた料理を並べて、呆れたように僕を見て『またなのぉ』という顔を作る。

 「はぁ……お母さんはアヒルでも好きだけどねぇ」

 はいお食べ、母は僕にお箸を手渡しながら続きを述べる。

 「例えアヒルでも、必死に身体を動かして泳いでる姿を魅せつければ誰だって惹きつけられるってお母さんは、想うけどねぇ」

 そうかなぁ、そう、なのかなぁ。

 涙で乾いた瞳を拭って、母の手料理に舌鼓を打つ、今日も美味しい。

 「まぁ、あんまり気にしないで頑張ってみれば?」

 うん、そうする。

 多少マザコンを引き摺り気味な僕は、こんなことじゃダメだよねと想いながらひたすら黙々と心とは相対な白米を頬張る、美味しい。

 頬を滑り落ちていく白米は、100%純物質みたいで、綺麗だ。

 どんな悩みもどうでもよくなってくる。

 そうだ、お風呂に入ろう、そうしてベッドで眠ろう。

 今日は入浴剤でも淹れてみようかな、早めに寝てみようかな。

 その後、お風呂に入ってベッドに尽く頃

 もはや涙の名残は、原色を取り戻していた。

 ベッドに入って又悩もうとしたけど、ううん~と一度首を上から下へと曲げただけで、結局寝てしまった、この瞬間は気持ちいい、寝る前の全てを忘れられるこの感じが一日の至福、ここのおかしい所は、一日の中で一番の絶頂期が一日の終わる瞬間という、虚しい……。

 寝る刹那…一つ猛省した。

 「あ……そういえば今日の入浴剤…湖の香だったなぁ……」


 

 翌日、学校へカモンされ教室へ入ろうとすると何やら騒騒しかった。

 「あんさぁ、何調子乗っちゃってんの? いっつも猫みたいにキザった目しちゃってさぁ、女豹か? あぁアンタはどちらかといえばオオカミか、嘘つきだもん、なぁ敦子」

 「そうすねそうすね、オオカミすねぇ」

 教室に入ると、昨日僕が敢え無く敗退への末路を告げられ宣告された美女がいじめられていた。

 黙々といじめられていた。

 僕は周りがキャーキャーと楽しそうに眺望している中、彼女の元へ向かう。

 「あ? 何アンタ、ちょ(笑) ぶっさ」

 世界で一番お前だけには言われる筋合い無いと思うんだけどなぁ。

 そんなことをボヤキながら、僕は彼女に手を差し出す。

 ぶっきらぼうな割に素直に僕の手を彼女は取る。

 温度と温度が交じり合う、この感覚は、多分きっと僕が昨日彼女に宣言した答えの成功な方の道筋から導き出されて欲しかったものだけど、今更そんな事を想いだす自分がもう既に女女しいので、即座に脱却

 僕の手を取り立ち上がる彼女の開口一番

 「あぁ……昨日の、あぁ~ごめん、やっぱ無理だわ、鏡、みた?」

 諦観っていう言葉はこういう時に在るんだなってヒシヒシと胸に染みました、えぇ

 きっと今日一番、諦めというジャンルを制覇しているのは僕ですよ、異論は許しませんよ、えぇ。

 「僕はアヒルです」

 言ってやった、言ってやりました、諦視を停止させて僕はようやく邁進させます。

 「え? は? あ、あぁうん……確かに汚いね」

 どこまで傷心の道を誘うのだろうこの美女は……。

 怖い、やっぱりあの選択肢でよかったかもしれない、うん。

 挫けず、僕は続きを述べる。

 「僕は泳ぎ続けるアヒルです、どこまでも泳ぎ続けます、息継ぎすらしません、きっと途中で息絶え絶えとなるでしょう、でもきっとおそらく多分、泳ぎ続けます」

 以上…僕の朝起きた時から彼女に言いたかったことの全てだ。

 彼女は僕の言葉を聞いて、目を真ん丸とさせている。

 ふと、周りを見てみると、なぜかいつしか僕らを群衆が聴観していた。

 アレ、この状況は何なのだろう。

 まぁ状況は置いておいて僕はとりあえず彼女の返答が聞きたい。

 呆然としている、呆気にとられている

 【此奴はなんなんだ】という顔だ。

 コイツはなんなんだと言われても、コイツは人間だとしか言いようがないのだけど。

 「お前はなんなんだ……」

 お、案の定の答えが返ってきた、僕は当然こう答える。

 「アヒルです」

 今日の僕は、永久に振れない、絶対に。

 

 ―もういいや、どうせもう、いいんだ。

 既に僕は諦めている本当に僕は彼女の事を諦めすぎているのだ。

 だから今日にもう終わりを告げて、最後の言葉を彼女に告げよう。

 「あぁ、ですので、僕、これから貴方に幾度も告白していきます」

 あっという間に間が開いた瞬間に白けきってしまった周りは今散らばって各各自由に何かを弄んでいる。

 何かに飽和しきってしまった周りになんとなく目を当てる。

 未だに彼女は突っ立っている。

 数分待てば、去っていった。

 一言、言葉を残して…。

 「いや……だから、鏡見ろっての……」


 放課後、自分の机の中を覗いてみると手鏡が入っていた。

 その手鏡には、彼女の写真が貼り付けられていた。

 ……女の子はなんだかよく、わからない。

 

後書きって言われてもね、前書きで終っちゃうでしょ大体。

大体の歌は1番で終わってるし、大体のお話はプロローグが全盛期だし。

大体、プロってなんだよプロなローグってなんだよ、凄くない?

プロだよプロ…プロなローグだよ……。

それにくらべエピローグってなんだよ、冴えね…エピって何?

美味しそうですね、これでいいの? ねぇそれでいいの?

エピローグ、お前はそれで満足なの? そんな締まり方でお前はお前を終わらせていいの?

 おいエピローグ……器は、お前の器はそんなものだってのか⁉


 プロローグ「エピローグさんて、あんまり見ませんよね、影薄いっていうか……」

 エピローグ「そそそそっかなぁ、それに比べてプロローグさんて見栄え素晴らしいですよねぇ、こう第一印象だけっていうか……」


 終わりと始まりって、窮屈そうですよねぇ。

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