悪夢
2話目です。銀時の過去がちょっとでます。
〈バン、ダン、ダダダン!!〉
「撃て!撃て!撃て!!」 「急げ、急げ、死ぬぞ。」
銃声と怒号が聞こえる。
銀次は悪夢を見ていた。
かつて経験した、最悪の出来事。
初めて人を殺めた記憶。
数年前、銀次は、R国内で起こった内戦を鎮圧するため国の平和維持軍の治安維持部隊で活動していた。
その日も治安維持のため市街地をパトロールしていた。
内戦で治安が乱れたとはいえ、銀次達がパトロールしていたのは比較的安全な地域で、ゲリラ活動が起こった事例がない場所であり、隊員達も弱冠緊張感にかけていた。
その時、事件は起こった。
突然、銀次達の前方の車両が銃撃されたのだ、銀次達は、銃撃された方向に向け装備されていた関銃、小銃で応戦した。
「撃て!撃て!撃て!!」
指揮官の怒声、銀次も夢中で撃っていた。
時間にして数分だろうが、数時間にも感じられた、目の前は立ち上る砂ぼこり。射撃命令が解除されたと同時に車両から下車し、辺りを警戒しながら狙撃のあった方向に向かった。
そこで、見た光景に銀次は狂気した。
数分前まで子供達だったもの、銃撃してきたのは、年の頃十五、六歳の少年兵士達だった。
なぜ?このような子供達が、
銀次は、無意識に大声で叫んでいた。
「なぜ、なぜ、なぜなんだ!!」
平和維持軍としてこのような子供達が不幸にならないようにするために、
この活動に参加したはずだった。
しかし、現実は子供達を撃ち殺している。
俺は、一体何をしている?
なんのために、誰のために戦っている?
一体、俺は??
(ゆ、夢!!)
銀次は、はっと飛び起きた。
(ハア、ハア、ハア)
大量の汗が頬を伝う。
(お、俺は、)
自分の体を確認すると同時に辺りを見回した。
そう確か、橋から落ちたはず。
加藤は無事だろうか?
(加藤、無事か!!)
助手席にいる加藤に呼びかけた。
しかし、加藤の返事はない、隣にいるはずの加藤の姿はなかった。
銀次は、息を深く吸い、大きく深呼吸し、
冷静に、まず落ち着け、と自分に言い聞かせ頭を整理する。
橋を走行中何かにぶつかると思い、ハンドルをきった。
だが、間に合わずぶつかり、しかも川に落ちたはず!
しかし、奇妙な事に自分は無傷、車中も破損の様子は見られない。
自分の装備を確認し、車外へ出た。
日は昇り始め辺りは明るい。
周辺は、橋どころか川もなく、木々が立ち込める森。
銀次は、森の中にいた。
一体ここは??
その時、不意に我にかえった。
俺何か引いたんだ!!
車両前方に駆け出した。
確かに、あれは人だったはず!
前方数メートル進んだところで、それはいた。
人ではない。
いや、人どころか今まで見た事もない生き物だった。