プロローグ
初めての投稿です。
誤字、脱字、表現等おかしい点あると思いますが、よろしくお願いします。
(ねむい、ネムイ、眠い。)
心の中で呟いているのは、日本共和国、陸上自衛軍、第11歩兵連隊第2中隊第4小隊に所属する2等軍曹津山銀次である。
銀次は、入隊十年目の中堅で、今演習も四人の部下を率いている。
この特殊な名前のおかげで先輩、後輩からもすぐ覚えられている。
名前の由来は父親が学生時代に好きだった漫画の主人公からとった安易なもので、次とついているのでよく次男に思われているが、長男である。
性格は、温厚でお人よし、お調子者な面もあるが、根は真面目で面倒みがよいため、後輩からは銀次さん、津山さんと呼ばれ親しまれている。
容姿は、若干ジャニー○系(年齢よりも若くみられる)。
身長は172センチくらいで高くもなければ低くもない、筋肉質で遠目で見てもがっちりしている事はわかる。
服装は、今風で決してダサい格好はしていない。会話もそこそこ上手く、女性にもてなくわない。
ただ、趣味が理解されない、銀次の趣味は格闘技とフィギュア収集で、フィギュア収集の趣味が、銀次を女性から遠ざけている。銀次曰く(フィギュアは俺の魂、別に理解されなくていいし)と考えている、残念男子である。
そんな銀次も二十八歳、結婚、結婚と両親が口うるさくなってきた、今日この頃である。
今、銀次は、四夜五日の小隊の演習中で、演習は中盤三日目の夜間行軍(部隊が目的地に向かって機動すること)を行っている。ここまで銀次はほとんど寝ていない。
今回の演習内容はかなりハードで、一日目車両での500㌔移動から始まり(もちろん銀次は運転手)移動後は直ちに演習場内に宿営地や指揮所となる場所の開設や準備、二日目は宿営地から演習場内にある市街地訓練場での、近接戦闘訓練。
ちなみに、〔近接戦闘訓練とは、少数の隊員が直接照準射撃(射手が火器に取り付けられている照準具を使って行う射撃)を駆使し、敵に対して接近して行われる戦闘である〕
今回は室内での対テロや人質救出作戦のための訓練を演習場内にあるマンションやスーパーマケットを類似して作った建物を使用し訓練した。
三日目は演習場内で約30㌔にも及ぶ行軍、四日目は演習場内での夜間の近接戦闘訓練である。
四日間ほとんどに寝ずに訓練を実施するので体力面でも精神面でもかなりキツイ。
現在時刻は午前二時を回ったところで、行軍も中盤一番辛く、苦しい時だ。
脱落者がでるのはこの時間帯が多い。
しかも、季節は十月下旬、山中にある演習場内の木々達は枯れ葉を落とし冬支度を始めている。現在の気温は1℃。体感はマイナスであろう。
行軍及び訓練は、二十五名の小隊員の内、小隊長など訓練を判定する人員を除いた二十名を四つの分隊に分けて実施している。
銀次は第四分隊の分隊長で、本田、尾山、三島、加藤の四名を率いて行軍しており、近接戦闘訓練もこのメンバーで行い、四つの分隊で一番の好評価を得ていた。
四日目の格闘訓練もこの四名で行う予定だ。
しかし、ここにきて三島、加藤の行進スピードが明らかに落ちている。
二名は今年配属されたばかり新兵でこれだけハードな訓練は始めてで、二人の体力は限界に達していた。
銀次は、二人を脱落させないように二人の武器や荷物等を自分、本田、尾山で分配して持ち二人を軽装にして行進だけに専念させ、「二人とも行けるか?あと少しだからさ」などと声をかけたりしている。
本田、尾山も厳しく罵倒したりせず優しい口調で、「三島、加藤この行軍が終わったら演習終わったようなモンだから」「演習を終わったら旨い店に飲み連れてってヤッから歩ききろうぜ」といって勇気づけている。
二名は必死に歩いていたが、一時間程歩いたところで、三島が囁き膝をつき動かなくなった。
「スミマセン、もう……」
銀次は、やむを得ず後方にいる衛生兵に装備していた無線機で連絡をとり三島を頼んだ。
三島は、悔しさからか泣いていた。
銀次は、泣く三島に「次頑張れ、気にすんな」と短く声をかけ、他の隊員のところに足早に戻った。
その後行軍を続け、要所に休憩を挟み約三時間歩き行軍は終了した。
宿営地に戻った銀次は、休むまもなく次の訓練の行動に
移るべく行動していたが、部下の分隊員達には、
「疲れただろ、次の訓練までゆっくり休んでみんなで乗りきろうぜ」
などと軽口を敲いてゆっくり休息を取らせた。
本当は銀次も、疲れて休みたいところで、(ダリいし、眠い)と思ってはいるが表情や行動をみせてしまうと自分の部下の士気に関わると考えグッと我慢している。
その疲れた身体に鞭打って銀次は、小隊長の野中の下に本日の訓練説明を受けに向かった。
そこで、示された訓練内容に銀次は、唖然とした。
野中の示した命令は、
「建物内に潜伏する敵の制圧及び捕虜となった味方の救出を及び弾薬等の補給品の奪取
その際、射撃等の火気等は使用せず敵を制圧せよ」
というものだった。
敵の制圧のみと考えていた銀次は、当初疲れもあって反応できずにいた。
「夜まで時間はある作戦開始までしっかり行動を考えて訓練を実施しろ、質問等はないか?ないなら」
野中はさらっと凶悪な命令を流そうとしていた。
我に返った銀次はすかさず、
「ちょっと待ってくださいよ!制圧に救出、しかも補給品の奪取をたった五人で厳しいですって!しかも火気の使用も禁止、三島、加藤は夜間の訓練初です。確実に失敗しますよ!
しかも、三島は訓練自体に参加できるかどうか微妙ですし。」
だが、
「アホ!やる前から無理っていうな。やってみろバカヤロウが!文句はやってから言えや、
あと三島の事は心配すんな、人質はアイツだ!しっかり救出しろよな、あとねーなら解散だ」
野中は一喝し、「じゃあ」 と軽く手を振って去っていってしまった。
あまりの事に銀次は、無言で後ろ姿を見送るしか出来なかった。
野中もただ無茶な命令を出した訳ではない、銀次達が作戦を達成することに確信があった。
銀次達は新兵を含みさらに三島がいない状態で戦力的に不利ではあるが、銀次は、近接戦闘のスペシャリストの格闘指導員、本田、尾山はレンジャー隊員であるため野中はこのような状況でもどうにかできると考えていた。
一方銀時は、重い足取りで部下たちの元に戻り作戦を説明した。
暗く沈んだ声で話す銀次に対し、まず、本田が明るく
「銀次さん凹み過ぎッスよ、完璧に成功して小隊長をビビらせてやりましょうよ!」
尾山も「作戦さえしっかり練ってばいけるっス!津山さんらしくないっス!ガンガン行きましょう」
加藤にさえ、
「津山2曹と本田3曹に尾山兵士長がいればやれそうな気がします。」
とみんなに慰められ、批判が来る事を考えていた銀次は、泣きそうになるのを我慢し、
(絶対やってやる!野中みてやがれ!!)
と心に誓って作戦の行動計画を練り始めた。
四日目午後8時 行動開始。
任務は三階建ての建物に占拠した、三名の敵性分子の制圧、要救助者一名の救出、弾薬補給品等の積載した建物横に駐車された車両の奪取。
銀次の作戦は、当初四名で突入後二名バディに分かれ、前衛、後衛で行動しながら敵を制圧していくものだ。
前衛は、本田と尾山、後衛は銀次と加藤で、使用武器は火気の使用が制限されているので、弾装はついているが弾薬がはいっていない小銃、ナイフ、拳銃(実弾の装てん無し)である。
建物一階を探索中、一名の敵と遭遇したが本田、尾山組が難なく捕獲し、二階に上ったところで、側方から襲ってきた一名の敵を銀次と加藤が捕獲した。
二名を捕獲した時点で、四人に安堵感が広がり敵は後一人ということもありちょっとした隙が生まれた。
三階に上り捕虜となっていた三島を救出しようとした際にアクシデントは起こった。
三島を見つけた際、本来なら前衛の二名に救出させ後衛は周囲の警戒を実施しなければならなかった、しかし、後衛の加藤まで救出に参加してしまっていたのだ。
そのため、死角ができ、カチャっと撃鉄を下ろす音がした時には、銀次は後頭部にに拳銃を突きつけられていた。
「動くな」
たぶん、その瞬間敵及び三名は任務失敗を思い浮かべただろう。
しかし、銀次はすばやく右に身体を反転させ左肘打ちを相手の顎にかましながら相手の手首をひねり拳銃を奪い銃口を敵に向けていた。
敵も三名の部下も一瞬何が起こったのかわかっていなかったが、
「手を頭の後ろで組んで、抵抗しないでね」
銀次がいつもの口調で話ししたため立場が逆転した事に気づいた。
銀次は捕獲した敵三名及び救出した三島を連れ建物を脱出、駐車してあった車両の補給品等を確認し、無線機で小隊長に報告。作戦は終了した。
野中は、無線でめずらしく褒めてくれ、これからの行動を示し、上機嫌からか演習終了後の休暇の話までしてくれた。
銀次たちは、小さくガッツポーズを決めて車両に乗り込み示された行動を取るべく、訓練場をあとにしようとすると、敵を務めていた、三分隊の分隊長で同期の堺が話しかけてきた。
堺は銀次に
「最後拳銃取られた時、早くてよくわからんかったばい!あと肘鉄もう少し加減してくれてもよかろうが!でもさっすが指導官やるわ!今度はやられんけんね。」
と方言を交えながら早口で、笑いながら話しかけてきた。
銀次も、
「スマンね、こっちも必死であまり加減できなかったよ。でもオマエだって気づいてたらもっとキッツイのかましたのになぁ~」
と笑いながら軽く返した。
銀次達は訓練を終えた高揚感からか、浮かれていた。
みんなは、鼻歌交じりで車両を出発させ宿営地へと急ぐ。
これから、思いもよらぬ事に巻き込まれるとは誰一人として考えてもいなかった。
銀次は、後日思い出す。家に帰るまでが遠足、いや駐屯地に帰るまでが演習だと。
車両は二台で、銀次が加藤を乗せ小型車を運転、後方の大型車に本田、尾山、三島が乗車していた。
訓練場から宿営地の移動も深夜ながらも全員ハイテンションで休暇の話題などしながら進んでいた。
銀次は加藤に、どうでもよい質問を繰り返し、加藤は生真面目に答えていた。
「加藤は休暇もらったらなにすんの?」
「休暇は本田さんと尾山さんと三島と飲みいきます。津山2曹も一緒にいかがですか?」
「うん。いいねぇ。ってか、加藤って彼女とかいないわけ?」
「いないですね」
「なに、綺麗系と可愛い系どっち?」
「可愛い系がすきですね、猫耳がついてるみたいな」
「……」(こいつ実は残念男子?)
そのような会話を繰りかしているうち、訓練場から宿営地に向かう際一番危険とされる狭い橋の上を通過していた。
橋の下は大きな川が流れており、橋から下の川までは約20メートルくらい。
橋の長さは1㌔で幅は極めて狭く車両一台が通過するのがやっとで、大型車はギリギリの車幅で日中通過するのも危険を感じる。
しかも現在は夜間で視界は悪く慎重に運転しなければ成らない。
慎重に、慎重にと自分に言い聞かせて銀次は運転している。
突然、加藤が叫んだ。
「前、前、人!!、人ッス!。」
銀次も気づいた、人らしきものが突然目の前に立っているように思えた。
思えたというのは、気づいた時にはブレーキを踏みつつハンドルを左に切っていた、
ドン、という何かに当たった衝撃音とともに小型車は橋から川に向かってダイブした。
(終わった!!)
銀次は、川に落ちる浮遊感と共に意識を失った。
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