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便利屋【紅月】 お仕事編その一(後編)

前回の続き~

さて、博麗神社から人里に戻り太陽の位置を確認する。


「う~ん、巳四つ時ってところかね」


巳四つ時は大体正刻で11時くらいだったかな?

意味が分からない人はググってくれ。

これなら昼食の後にした方がいいかもな、取りあえず団子やの菊さんの所にいってみるか。



少年?移動中・・・



三色団子と菊が描かれた暖簾に大きく団子と書かれた店、ここが菊さんが経営している団子屋らしい。 店名は【菊花】

そこに入っていくと、そこそこ人が居た。


「いらっしゃ~い、好きなところに座っておくれ」


出迎えてくれたのはもういい年に見えるのに元気そうなお婆さんだ。


「すみませんがお客としてきたわけではないんです、菊さんでよろしいでしょうか? 便利屋なのですが依頼の件でお話がしたいのですけど・・・」


「まぁまぁ、あなたが例の便利屋さん? わざわざありがとうねぇ 依頼の件だったかね、お昼過ぎ頃に頼みたいんだけどいいかしら?」


見ると、先ほどよりも明らかに人が増えていた。

これからもっと増えていくだろう。

なるほど、丁度稼ぎ時だからか。


「わかりました、場所は守矢神社でよろしいでしたね。 ただ私は新参者でして、土地感が乏しいので、道案内のほうはお願いできますでしょうか?」


「それくらいなら構わないよ、それじゃあよろしくね。 ときにお前さん達、お昼は食べたのかい?」


交渉が成立し、帰ろうかと考えていると菊さんにそう聞かれた。


「いえ、まだですが」


「それならうちで食べていったら? 安くしとくよ?」


商売上手だな、もっていくタイミングが絶妙だ。

別段断る理由もないし、依頼をしてくれた訳だから食べて行くか。


「そうですね、ではお言葉に甘えて団子を二人前ください」


「まいどあり、好きな所に座ってておくれ」


そう言って店の奥に引っ込んでいった。


「なんというか、抜け目の無い人ですね」


そしてあの雰囲気、店が繁盛しているのはあのおばあさんの影響が大きいだろうな。


「と、座れなくなる前に席を確保しないと」


「あ、あそこが空いてますよ」


空いている席に腰を下ろしてから5分もしないうちに美味しそうなみたらし団子と三色団子のセットと緑茶が運ばれてきた。


「はい、ゆっくりしていってね」


「ありがとうございます」


団子を手に取り、一口頬張る。


「む、美味いな」


「おいしいですね」


団子は柔らかくもしっかりとした歯ごたえと弾力があり三色は甘さ控えめ、みたらしは醤油の味が強いがそれがクセになりそうだ。

緑茶はそれらに合わせた温度で淹れてある。

これなら、繁盛するのもうなずけるな。

団子に舌鼓を打ちつつ、結局もう一皿頼んでしまった。

まんまとおばあちゃんの術中に嵌ってしまった。

いや、だって本当においしいんだって。


そんな感じで昼食を終え、現在昼過ぎ(約1時頃)。

菊さんの団子屋は団子が無くなったということで、只今絶賛製作中とのこと。

で、便利屋の仕事をするために再度菊花を訪れた。

菊花の前には、老男女がざっと7,8人集まっていた。


「ああ、便利屋さん待ってたよ。 それじゃあ、よろしくお願いしますね」


「はい、それでは確認しますが依頼内容は守矢神社までの護衛、って事でよろしいですね?」


皆一様に頷く。


「承りました、それでは早速出発致しましょう」


本来なら黄色のフラッグでも持ってれば雰囲気出たんだろうけど無いものは仕方ないな。

守矢神社は妖怪の山という場所の8合目くらいにあるらしい。

そこを縄張りにしているのが天狗という妖怪なのだが、この天狗はすごく面倒臭い性格の者が多い。

所謂排他的というか、他者を見下して自分が尊いと信じて疑わない奴らが多いのだそうだ。

極稀に例外も居るらしいが・・・

しかし、最近は随分丸くなったようで特に守矢神社が幻想郷に来てからは認識を改める者が増えてきたらしい。

と、いう話を聞きながら山道をどんどん登ってゆく。

この道は参拝者用に整備されており、他と比べると随分歩きやすい。

俺は思った。

おじいちゃんおばあちゃんだと思って甘く見ていた。

どこかで幻想郷の老人に外の常識を当てはめていたようだ。

もう5合目、全体の半分を登っているにも関わらず休憩は一度もしていない。

偶に水分補給をしてはいるが、疲れた様子など微塵も感じさせず雑談しながら登る姿はむしろ生き生きとしている。

そんなことを思っていると、不意に菊さんが呟いた。


「それにしても、今日は妖怪一匹どころか見張りの天狗もこちらに来ないわねぇ」


菊さんの話によると、従来までは必ず見張りの天狗が一度は参拝者と接触し入山した目的を聞いて来たのだそうだ。

そりゃそうだろうな、だって俺のせいだし。


「そうなんですか? 意外と定休日だったりするんじゃないですか?」


「そうかもしれないわねぇ」


まあ、説明がめんどいから惚けておくが・・・


「おっ、見えてきたぞ」


おじいさんの言葉に視線を上の方へ向けると、確かに赤い鳥居が見えた。

もう、目と鼻の先だしそろそろいいだろうか?


「能力解除、っと」


階段を登り、鳥居を潜ると博麗神社よりも立派な社、綺麗に掃除された境内、荘厳な雰囲気を醸し出している神社がそこにはあった。


「おお、霊夢んとことはまるで違うな」




同時刻、博麗神社・・・


「ん? なんだか馬鹿にされた気がするわね」


と、霊夢のチート気味の勘が働いていたのは余談である。




「ここが守矢神社ですか・・・。 では、帰る際には声を掛けてください。 私はそこら辺をふらついていますので」


そう言って、再度鳥居を潜って階段を少し下りていく。

ある程度下りたところで、先ほどーーー能力を解除してからすぐーーーから視線を感じる方向へ声を掛けた。


「さっきから見ているけど、俺に何の用だい?」


「・・・・・・・・・・・」


「だんまりか・・・、まあ別にいいや」


「・・・どうしてわかった?」


茂みの向こうからは、椛柄の盾と大きくそりの付いた刀を持った少女が警戒心剥き出しで出てきた。

もしかしなくても天狗だろう・・・おそらく下っ端の哨戒天狗かな?

白いーー白銀といったほうがいいかな?ーー髪に同じ色の耳と尻尾が生えていることから白狼天狗だろうけど。


「どうしても何も、あれだけガン見されたら嫌でも気付くわ」


「嘘を吐くなッ! 私は数百メートル離れたところから監視していたのに人間であるお前に分かるわけ「暁だ」はっ?」


彼女は今の言葉が理解できないようだ、しょうがないもう一度言ってやるか。


「暁だ」


「お前、一体何の・・・」


「暁だ」


「だから」


「あ・か・つ・き・だ」


「・・・・・・暁」


「うむ! それと、こっちはフィリアだ」


名前って皆が思っているよりもずっと大事なモノなんだよな。

名前があるのと無いのとではえらい違う。


「それで、お前の名前は?」


「ハァ・・・なんなんですか、貴方は? 私の名前は犬走(いぬばしり)(もみじ)です。 一応言って置きますが犬じゃなくて狼ですから」


なんかもう、なにもかも諦めたような表情で項垂れる椛。


「犬走・・・? 狼なのに犬とはこれ如何に? というか、口調が変わったな」


なんというか、苦労しそうな名前だ。


「それを言わないでくださいッ!! 私だって気にしているんですからぁ! こっちが素です、さっきのは仕事用ですよ」


あらら、怒らせちゃった。 というかやっぱり弄られているんだな。


「悪かったよ、それで話は逸れたけど俺に何の用だい?」


涙目でこちらを睨みつけてくる椛を見ていると、こうもっと弄りたくなってくるが流石に自重しておくべきだな・・・今後のために。


「暁が逸らしたんじゃないですかぁ~、まぁいいです。 用件はどうやって私の目を掻い潜ったかです。 私は【千里先まで見通す程度の能力】で、この山に限らずあらゆる場所をその場で監視する事が出来るんです。 しかし、貴方達は急に守矢神社の近辺に現れた。 これの説明をして欲しいんです」


なんだ、そんなことか。


「俺の能力による、以上!」


「どういう能力なんですか?」


「教えない」


そう言うと椛はジト目で睨んできた


「どうしてですか?」


「残念ながら時間切れだからだ」


神社の方からは複数の俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

どうやら参拝も終わったようだな。


「そういう訳で俺は行かなくちゃいけない、またな椛」


最後に椛の頭に軽く手を置いて、階段を登って行った。









鳥居のところまで戻るとすでに全員帰り支度を終えて俺を待っていたようだ。

仕度っていっても特に無いが・・・。


「すみません、ちょっと天狗に絡まれていたもので。 後は人里に戻るだけですね」


「ええ、帰りもお願いしますね」




「ちょっと待ってくださいっ! もしかして・・・暁?」


「は?」


いきなり名前を呼ばれて素っ頓狂な声をあげてしまった。

振り返ると、霊夢の巫女服を青くしたような服装に身を包んでいる長い緑の髪が特徴の少女がいた。 物凄く見覚えがあります・・・


「いえ人違いでしょう、では」


ガシッ!


なるべく目を合わせずに立ち去ろうとすると、肩を思いっきり掴まれた。


「そんな訳無いじゃないですか、相棒との感動の再会なのにその態度は無いんじゃないですか?」


この神社の巫女的な立ち位置ーー実際は風祝だがそんなの知らんーーにいる俺が通っていた高校のクラスメイト、東風谷(こちや)早苗(さなえ)はぷくーっと頬を膨らませる。


「誰が相棒だよ、誰が。 しかも、とんでもない置き土産を置いていって感動の再会も何もあるか!」


俺とコイツは高校時代、町ではそれなりに有名だったのだ。

何で有名になったかは、また暇な時にでも説明するが一つだけ言っておきたい。

俺は被害者だ・・・。


「でも、ちゃんと後片付けしてくれたんですよね?」


その問い掛けに長い沈黙の後、一言だけ


「・・・まぁな」


顔を背けながら呟く。

だって・・・なぁ? 頼られたら応えるしかないだろ?


「さて、俺は仕事の途中なんだ。 またな、早苗」


「はい、今度は遊びに来てくださいね」


それに振り向かず、手だけで応える。

・・・・・暇な時にでも行ってみるか。

















行きはよいよい 帰りは怖い なんて言うけど特に問題も無く無事に人里に着くことができました。


「はい、これ依頼料ね」


「確かに、ではまたのご利用お待ちしております」


さて、これで今日の依頼は終了だ。

時間的には3時くらい?

まだ太陽は沈みそうに無い。


「ご主人様、この後はどうなさいますか?」


「そうだな、里・・・いや、湖の辺りにでも行ってみようか」


そうと決まれば、早速行ってみよう。

何か面白いモノでも見つかるかな?

ここで終わるかと思った?

残念仕事が終わっただけでした~

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