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朝から災難だぜ、まったく・・・

昨日は慧音の家に泊めてもらい、やはり疲れていたのかすぐに寝てしまった。

幻想郷に来てから、初めて迎える朝。

朝にしか味わう事の出来ない清々しい空気を吸いながら、俺は、青筋を浮かべた慧音の前で正座をさせられていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・」


「あれはどういうことか、説明してもらおうか?」


慧音の視線の先には昨夜俺に宛がわれた布団が敷かれている。

そして、その布団には全裸の少女が寝息を立てていた。



何故こうなったか、話は数十分前に遡る。





上白沢慧音の朝は早い。

寺子屋で教師をしているらしい彼女は、授業の準備やら里の守護者としての見回りなど朝からやることが盛りだくさんなため、自ずと早起きが習慣となっていた。

起きていつものように、慧音は朝食の準備をしていた。

いつもと違う点があるとすれば、一人分多めに作っていることだろう。

昨日は新しく外から来たという少年を家に泊めたので、彼の分の朝食も作っているのが原因だ。


「うん、いい出来だ。 そろそろ暁を起こしに行こうかな」


朝食の準備も終えて、少年が寝ている部屋の前で一応声を掛けて見る。

もしかしたら、起きているかも知れないからだ。


「おーい暁、起きているか?」


しかし、返事は無い。


「入るぞー」


襖を開けて膨らんでいる布団が目に入った。


「おーい暁、朝だぞー。 そろそ・・・ろ?」


そこで慧音は気づいた。

不自然に布団が膨らんでいることに・・・

彼の体格は服越しにしか見ていないが、ガッチリとしたものではなく太くも無いが細くも無いといった感じだった。

しかし、この布団の膨らみは明らかに人一人分の大きさではなかった。

悪いと思ってはいるものの、慧音は少しだけ布団を捲ってみた。 すると・・・


「むにゅ、ごしゅじんさま~」


昨日は居なかったはずの少女が暁に抱きつくような形で寝ていたのだ。それも、一糸纏わぬ姿で・・・

そして、暁はと言うと・・・


「くー、すぴー」


普通に熟睡していた。

朝起きると、男女が抱き合って寝ている、→昨夜何かあった、→(ry


「ふふ、ふふふフフフフフ」


慧音は小刻みに震えだし、握った掌は痙攣しているかのようにぶるぶると震えていた。

そして、寝ている暁の頭を両手でガッチリと掴み、


「フンッ!!」




グボッ!!




思いっきり頭突きをかました。















グボッ!!


そんな音と同時に額に激痛が走った。


「!!?!?!??!?!?!?!?!」


そのあまりの痛さに意識は奥底から無理矢理引き出され、しばらく悶絶していたが痛みが徐々に引いていくのと同時に涙で潤んだ瞳に映ったのは、


「・・・・・・・・・・・(ニコニコ)」


顔は笑っているが、その背後には阿修羅でも居るのではないかと錯覚するほどの威圧感が溢れ出している慧音が仁王立ちしていた。

えっ? なんかすげえ怒っている慧音が目の前に居るんだけど?

俺、なんかしたのかな?

訳が分からずに居ると、慧音が口を開いた。


「おはよう暁、気分はどうだ?」


声は昨日聞いたものと同じ。 しかし何故だろう、冷や汗が止まらない。


「おはよう慧音、ここでの朝の起こし方はこんなに痛いものなのか?」


「まだ寝ぼけているようだな、もう一発喰らうか?」


「遠慮しておきます」


あんなのもう一発喰らったら、ガチで危ない。

さっきの一撃でさえ、脳が揺さぶられてまだ平行感覚が戻らないってのにあれを二発喰らったら後遺症が残るね、絶対。


「さて、そこに正座しろ」


「ハイ・・・」




そして、冒頭に続く。




「それで、あの少女は誰なんだ? というか、何時の間に連れ込んだんだ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


さて、どう説明したものかな。

慧音は確実にアッチ方向に誤解している。

それも、全裸の少女が抱きついていたのだからどう説明しても誤解を解くまでには至らないだろう。

これは、本当の事を話した方が得策かな?


「あの子は、あの黒猫です。 名前はフィリアって言って、俺のメイドです」


慧音は俺の目を見る。


「嘘は吐いていないな、だがどうしてそのメイドが、その・・・全裸でお前に抱きついて寝てるんだ?」


慧音の顔が少し赤い。


「それは本人から聞いた方が・・・丁度起きたようですし」


後ろから、布団を剥ぐ音が聞こえる。


「んっ、にゃ~~~、あれ? ご主人様?」


起きた事を声で確認すると慧音がこちらを睨んでいるので、顔を向けないでフィリアに話しかける。


「おはよう、フィリア」


「あっ、ご主人様、おはようございます」


フィリアはそのままこちらに近づいてくる


「? ご主人様、なぜ顔を背けているのですか?」


「前から何度も言ってんだけどな・・・ とりあえず、服着てからだな」


「・・・・・あっ///」


おそらく、今フィリアの顔は赤くなっているだろう。

裸で抱きついているのに、見られるのは恥ずかしいのかね?


「着ましたよ、ご主人様」


振り返ると、黒いメイド服姿のフィリアが正座していた。

黒いミニスカメイド服に黒いニーソと猫耳・尻尾を完全装備した、その道の人が発狂する完成度を誇る自慢のメイドだ。

実際外で学生をやっていた時に文化祭でクラスメイトに見せたら、クラス全員の男子が発狂の後、全校の男子学生が俺に喧嘩を売ってきたのは記憶に新しい。

大部分の生地は黒で、エプロンやヘッドドレスやフリルは白、それを縫い付ける糸は青色で他にも細々とした部分に青色が使われている。

特徴としてメイド服の腰辺りに大きな青いリボンが結んであり、長めの端が歩くたびにひらひらと風に舞う仕様になっている。


「うん、いつもながらよく似合っているよ。 それじゃ、慧音に挨拶な」


似合っているという言葉に頬が緩みそうになるのを引き締め、慧音の方を向くと深々とお辞儀をした。


「まずは、おはようございます。 私の名はフィリア、ご主人様のメイドをしているものです」


「よろしくお願いします」と言って、もう一度深くお辞儀をする。


「あ、ああよろしく。 君には聞きたいことがたくさんあるんだがいいかな?」


その言葉に、フィリアはチラッとこちらを見る。

俺は無言で頷く。


「はい、私に答えられる範囲でしたら」


「そうか。 じゃあまず、どうして暁に抱きついて寝ていたんだ?」


「!!?」


いきなりそこを聞いてくるか?

見ろ、フィリアの顔が目に見えて赤くなっている。


「そ、そそそそそれは、答えなくてはいけないんですか!?」


顔を真っ赤にして、手をパタパタさせながらうろたえるフィリア。


「ああ、男女の付き合い方が分かっていないようなら然るべき知識を教える必要があるからな」


「うぅぅぅぅぅぅ~」


頭を抱えて、悩みだした。

相当葛藤してるな。


「うぅぅ、分かりましたよ~、言いますよ~」


フィリアの口調が戻ってる、テンパり過ぎだな。


「私は猫なんです。 だから、暖かいところと狭い場所が大好きなんですよ」


赤い顔のまま、俯いてボソボソと話し出す。


「ご主人様はとっても暖かいんです。 それになんだかふわふわした感じがして、とても気持ちいいんです。 それで猫の状態の時は、衣服を身につけていないから猫のまま眠るとこうなってしまう事が偶にあるんです」


「ふむ、ようするに猫ゆえに本能に逆らえなかった、と」


「そう解釈してもらって構いません」


朝起きると、フィリアが抱きついていたと言うのは今日が初めてという訳ではない。

正確な年月は覚えていないが、大分前からフィリアが抱きついて寝るようになっていた。

でも、全裸で寝ていたというのは極稀にしかなかったが・・・

今回に限ってそれが当たるんだもんな~、幸先がいいのか、悪いのか・・・


「それじゃあ、そのメイド服はどこから?」


「これは、能力の応用で妖力で創りだしたものです。 私の能力は【武具に姿を変える程度の能力】と言います」


この能力は、自身の妖力を使って武器や防具などに姿を変えることが出来る能力で、その応用として自身の妖力を身に纏い、それをメイド服に変換しているのだ。

ちなみに、フィリアが戦う時は体の一部を武器にして戦う。


「それじゃあ暁、お前はこの事を知っていたんだな?」


「もちろん、知っていたよ」


「どうして黙っていたんだ?」


「聞かれなかったから」


・・・・・・・・・・、部屋の中に静寂が訪れる。


「お前は外の人間ではないのか?」


「いや、俺は妖怪だ」


「・・・・・は?」


今の慧音の顔を漫画で表すなら目が点になっている事だろう。

いや、冗談抜きでそんな感じの表情をしている。


「話していなかったけど、俺は妖怪だ。 何の妖怪かはいずれ分かると思うから言わないで置くけど」


俺の衝撃告白にまるで時が止まったかのようにピクリとも動かない慧音。


「慧音? お~い」


顔の前で両手を振ってみる。 反応なし。


「ふむ、ならこれならどうだ?」


パンッ!

慧音の顔の前で思いっきり拍手を打つ。小気味いい乾いた音がすると・・・


「ひゃわっ!? あ、私は何を?」


「とりあえず朝飯、そのために起こしに来たんだろ?」


「あ、ああそうだった。 待っててくれ、今用意するから」




少年・少女食事中・・・





「「「ご馳走様でした」」」


朝食を食べ終え、食後の緑茶で一息つく。

ふ~~~~、やっぱり緑茶は心が落ち着く。

お茶は日本の心だね。


「なあ、暁」


突然慧音が真面目な顔で切り出してきた。


「何だ?」


「先に言っておく、この里で人を襲うような真似はこの私が許さない。 無論、里の外でも私が見かけたら絶対に阻止する。 で、だ・・・・・・お前は人を襲うか?」


慧音は真っ直ぐに俺の目を見てくる。 対する俺も慧音の瞳を真っ直ぐ見据える。

そのまま果たしてどのくらい経っただろう? 1分?10分?流石に1時間という事は無いと思うが見つめ合ったまま俺は口を開く。


「襲うつもりなんてねぇよ、というか生まれてこのかた人の肉なんて食った事ねぇし、だけど降りかかる火の粉は全力で消火するけどな」


「そうか、なら私から言う事は無い。 住居の方は、空き家があるからそこを使うといい。 後は、午後に一通りこの里を案内しよう」


そういうと、すっかり冷めてしまったお茶を一気に煽り湯呑みを洗う為に台所へと向かった。


「慧音は午前中は何をするんだ?」


「午前は寺子屋の授業があるんだ、もし良かったら覘いてみるか?」


「いや、せっかくだけど次の機会にしておくよ。 そこいら周辺を散歩してくる.

でも、もしかしたら顔を出すかも」


「ちょっと待て」


外に出ようとしたところで慧音に呼び止められた。


「お前は自分を妖怪と言ったが、お前からは全く妖力を感じない。 それどころか、一般人と同じ位の霊力しか感じられないのは何故だ?」


ああ、なんだそんなことか・・・


「簡単だ、そういう能力を持っているんだよ、じゃな」


簡潔にそれだけ言うと、燦々と照りつける太陽の下を悠々と歩きだす。





さてさて、何が待ち受けているのやら・・・

オリキャラ登場回どうでしたか?


感想ありましたらお願いします。

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