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過去話その1

ふぅ・・・投稿できました。

楽しんでいただければ幸いです。

「今日は、仕事が入っていないのかぁ」


「はい、今朝方依頼板を見てきましたが一つも依頼はありませんでした」


朝食を食べ終え、今日の依頼の事をフィリアに聞いてみると一つも依頼が入っていないということだった。

まぁ、こんな事は別段珍しくも無い。 こっちに来て、今日で半月になるが今までにも数回こんな事はあったのだ。

里の中で完結するような用件ならば態々お金を払ってまで委託せずとも自分達でどうにでもできる。 と、言うのも里の中なら命の危険が無いからだ。

依頼屋【紅月】が受ける依頼と言うのは、基本的に何の力も持たない人が行うには、死というリスクを伴うものばかりである。

博麗神社までの配達然り、守矢神社までの護衛然り。

今日はたまたまそういう用事が無かった、ただそれだけの事なのだ。


「そっかぁ~、朝に貼られていないって事は今日貼られる可能性は低いかな、緊急のものでなければ」


「それでは今日は如何なさいますか、ご主人様?」


さて、何をしようかね?

早苗や霊夢のところに遊びに行く?

向日葵を見に行く?

チルノ達の相手をする?

...etc








それとも、妹に会いに行く?










「・・・・・・・・・・・」


かれこれ、百年は会っていない。

アイツが、幻想郷(ここ)を隔離してからだから大体そんなものだろう。

懐かしいな、生まれた頃は何かと顔を出しては相手をしてあげていたが、もう長いこと会っていない。

もしかしたら、俺の顔なんて忘れてしまっているかもな。

別に会うのが怖いわけじゃない。 忘れているなら思い出させればいいだけだし。

まったくダメな兄貴だな、俺は・・・

あんなに可愛い妹の側に居てやれなかったなんて。

まぁ、でもそれも仕方が無いことだ。

そうしなければいけなかったのだから。

まったく、ままならない世の中だよ。




「・・・ま。・・・・人・・ま」


「ご主人様!!」


「おぉ!? どうした、フィリア?」


気が付いたらフィリアの顔が目の前にあって、さらに大声で叫ばれたら誰だって驚くよな?


「どうした?じゃないです! ご主人様、急に黙り込んじゃって呼んでも聞こえていないようでしたし」


どうやら思考の渦に嵌っていたようだ。

ふむぅ・・・周りの音が聞こえなくなるって言うのは、アニメや漫画の世界に限ったことじゃなかったんだな。

ちょっとした発見だな。


「悪い悪い、ちょっと昔の事を思い出していたんだ」


「昔・・・・・私と出会う前の事ですか?」


「少し、昔話をしようか。 俺が世界を旅することになった・・・・そしてフィリアに出会うきっかけになった昔話を」













~回想~














俺は、とある貴族のような家柄の夫婦の間に生まれた。

それに気付いたのは大体物事が分かるようになってからだった。

まぁ、気付いた理由としては日常で使われる物はどれもが綺麗な装飾を施しており、着ている衣服も上質な物を使っている。

何より、家が屋敷だった。 これだけで、一般人とは程遠い。

家事は全て使用人やメイドが行っており、父や母は他の貴族達との外交に努めていた。

しかし、最大の理由は俺の親父が貴族の会合とやらでよく家を空けたり、自分も連れて行かれたりしたからだろうな。

母上は、俺が行く時だけ付いて来ていた。

ここまでならば、普通だろう。 いや、貴族と言う部分ですでに普通ではないのだがそこは割愛ということで。

しかし、俺の両親は人間ではなかった。

日本で言うところの、妖怪の子として生まれたのだ。

父も母も同じ種族の妖怪なため、必然的に俺も父と母と同じ種族の妖怪だった。

蛙の(つがい)から蛇は決して生まれない。 まぁ、当たり前の話だ。

日本の諺に、鳶が鷹を産むなんてのがあるがややこしくなるのでやめておこう。

俺の生まれ育った地は、日本ではなく西洋・・・ヨーロッパの方。

つまり、俺は西洋の妖怪なのだ。

そして、俺や両親は西洋の妖怪の中でもトップクラスのポテンシャルを誇る吸血鬼という種族だった。

さらに俺の両親は同種の中でも最上位に喰いこむ程の実力を持っており、その子供である俺も生まれながらすでに下級の妖怪に負けないほどの妖力を持っていたらしい。

そのせいで、英才教育を受けさせられたがしっかりとした土台となっているのでそこは感謝するべきだろう。

ともかく、俺は吸血鬼の中でも指折りの実力を持つ両親の長男として生まれたわけだ。

語らずとも分かるだろう、第一子が男であった両親の喜びようなんて。

俺は、そんな両親の元で健やかに育っていった。








「・・・よ、お前は私の後を継ぐのだ。 故に誰よりも強くならなくてはいけないのだ。 何故だか分かるか?」


「わかんない」


「ふむ、まぁ物心がつきはじめたばかりで理解しろと言うのも酷な話か。 よいか・・・よ、この言葉を胸にしまって置け。 そして、今日から私の戦闘技術の全てを教えてやる」


親父の特訓は厳しかった、それはもう鬼畜という言葉がそのためだけにあるんじゃないかというほどに・・・


「あなた? 何をしているのかしら?」


「む? いや、・・・に闘い方を教えてやろうkぶへらッ!!」


親父が言い終える前に、親父が居た場所には母上が腕を振り切ったポーズで立っており、ほぼタイムラグ無しで後ろから、何かが衝突したような轟音が響いた。

振り返ると親父が壁にめり込んでいた。


「まだ物心ついて間もないのに何を考えているの!? 今のうちから厳しくして、将来グレちゃったらどうするのよ!!?」


物凄い威圧感を放ちながら、捲くし立てる母上。

その表情は笑っているのだが、目がまったく笑っていなかった。

母上、親父に向かって話しているようだけど今の一撃で完全にのびてしまっているからその言葉は親父には届かないよ?

うちは親父よりも母上の方が強い。

というのも親父は戦闘技術においては母上よりも上なのだが、母上は魔術を使えるため親父よりも攻撃の幅が広いのだ。

さらに、単純な火力の問題がある。

母上の攻撃は広範囲、高火力、悪燃費という攻撃方法を多数保有している。

そこに魔術による繊細な攻撃が加われば、攻撃の幅だけならもはや一人で戦争できるほどである。

親父は、母上と違い一対一に秀でている。

吸血鬼のスピードを生かし、相手に攻撃の隙を与えずにゴリ押しするのが親父の得意な戦術だ。

一対一に秀でている親父が何故母上に勝てないのかと言うと、単純に近づけないからである。 ただそれだけ。


「まったく。・・・、これからあなたに私の魔術を教えてあげるわ。 図書館に行きましょ?」


「は~い、母様」


俺は、とたとたと母上についていく。

厳しいが自分を強くしようとしてくれる親父、優しくてとても暖かい母上、親父から戦闘技術を学び、母上から魔術や妖力の使い方を学ぶ。

偶に、他の吸血鬼の会合やら食事会に連れて行かれることもあるが、とくに何をするわけでもなく料理を食べて帰ってくるような感じだった。

しかし、何時からだったろう? 俺は、使用人やメイドが毎日やっている仕事に興味を持ち始めた。


「ねぇねぇ、何をやっているの?」


ある日、俺は掃除をしているメイドに話しかけてみた。

子供は好奇心の塊だ、それは俺も例外じゃない。 話しかけたメイドは、屈んで俺と目線を合わせて、


「私達は、旦那様や奥様の代わりにこのお屋敷のお掃除やお洗濯、お料理などをさせていただいているのですよ」


柔らかく微笑んでそう答えた。


「ふ~ん、ねぇねぇ俺にもやらせて?」


この時は別に深い意味なんて無かったのだと思う。 ただなんとなくやってみたかっただけだ。

メイド達がいつもやっている仕事はどういうものなのか知りたかったのかもしれないし、ただの気まぐれだったのかもしれない。

すると、そのメイドは困ったような笑みを浮かべた。


「ぼっちゃまがやる必要は無いのですよ? ぼっちゃまの代わりにお掃除をするのが私たちの仕事なのですから」


「別に仕事を取ろうってわけじゃないよ、ただ手伝わせてほしいんだ。 だって、代わりになんでしょ? だったら、俺ができていなくちゃ話になんないじゃん」


「それは・・・確かにそうですが・・・・」


メイドがその言葉にどう返そうか悩んでいるところに母上がやってきた。


「あら、何をしているのかしら?」


「あ、母上」


母上の存在に気付いたメイドは一礼して壁際に立つ。


「母上、俺家事をやってみたい!」


「唐突ね、どうして家事をしたいの?」


「だって、メイド達は俺や母上の代わりに家事をしてくれているんでしょ? なら、俺達ができていなくちゃおかしいと思うんだ。 それに、単純な興味もあるし!」


母上は少し考える素振りを見せて、視線を俺からそこにいるメイドに向けた。


「メイド長、この子に家事を一通り教えてあげなさい。 特に、基礎をきちんとね」


「畏まりました。 それでは、準備の方をしてまいりますので失礼します」


メイドは一礼してどこかへ行ってしまった。 ていうか、メイド長だったんだ・・・


「自主的に何かをやりたいというのはとてもいいことよ、がんばりなさい」


「は~い」


その日から、カリキュラムの中に家事の項目が加わった。 その代わり、自由時間が減ったけど其処は別にいいや。

それでまぁ、その日の掃除、洗濯、料理と一通りの家事を終えた俺は、慣れない事をやったためにメイドや使用人達の休憩室で突っ伏していた。


「あぁ~、つかれた~」


「おぼっちゃま、お疲れ様です。 おぼっちゃまは手先が器用なんですね、びっくりしました」


簡単なことしかやらなかったが、教えられたことは全てきちんとこなせた・・・・と思う。


「メイド達はすごいな~、俺がやった何倍もの仕事を毎日やっているんでしょ?」


突っ伏した状態で顔だけメイド長の方を向ける。 そのほかにもちらほらとほかのメイド達も休憩しているようだった。


「そうですね、私達はメイドですからそれが当たり前なのですよ。 旦那様や奥様、おぼっちゃまが快適に過ごせるように尽くすのが私達なのです」


そう語るメイド長はどこか誇らしげで、周りのメイド達もその言葉にうんうんと頷いている。

そっか、それが当たり前でずっとそうしてきていたのに、俺はそのままにしか受け止めていなかったんだな。

どうしてこんなに過ごし易いのか、今まで考えたことも無かった。 そういうものなんだって思って、誰のお陰かまるで考えていなかったんだな。

それに気付けたんだ、やっぱりあの選択は間違っていなかったんだな。

そう思うと、何故かおかしくなって小さく笑ってしまった。

いきなり笑った俺を不思議そうに見ているメイド達、その一人一人の顔をまじまじと見つめる。


「俺、今日家事ができてよかったよ。 皆、いつもありがとう」


子供ならではの屈託の無い、純粋な笑みを浮かべて俺は感謝した。

皆のお陰でこんな生活ができる。 母上が居て親父が居て、メイドや使用人達が居る。

今なら、親父が言っていたことも少しだけわかった気がするな。 誰よりも強くならなければならない・・・か。

で、メイド達の方を見ると皆熟れた林檎のように顔を真っ赤にさせていた。

あれ?どうしたんだろ?


「ねぇ、大丈夫? 顔が真っ赤だよ?」


「だだだだだだ大丈夫です!! それよりもおぼっちゃま、明日もお早いのですからそろそろお休みになられた方がよろしいのではありませんか?」


「あぁ、そうだね。 それじゃ、皆お休み」


「「「おやすみなさい、おぼっちゃま」」」


そして、その日はベッドに入った瞬間に眠りについた。


その頃、休憩室では・・・


「か・・・・かわいぃ~!! なにあれ!? 天使!? 悪魔なのに天使なの!?」


「私決めたわ、この体が朽ちるまでおぼっちゃまについていくわ!!」


「私、キュンッ!ってなっちゃった。 もうお持ち帰りしたいくらい!!」


「聞いて、皆! 私おぼっちゃまFCを結成することに決めたわ! 会員になりたい人はこれに署名して頂戴」


メイド達は、我先にと名前を書いていき結局全員の名前が書かれた。


「じゃあ、皆これからは影でおぼっちゃまを支えること。 そして、おぼっちゃまに害成すものは・・・・・・あらゆる手段を持って全力で排除すること。 いいわね?」


「「「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」」」


暁は無駄にカリスマを発揮していた。









それからしばらくは、平和な時間を過ごしていた。

だけど、ある日事件が起こった。

それは、俺が120歳の時、人間の外見的には12歳の時だった。


私は出来るなら、なろうの方で書き続けたいとおもいます。

皆様これからもどうかお付き合いください

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