【4】 全方不注意
後日、やっぱり怪しいと思って知り合いの知り合いの鑑定人に確認をしてもらった。
信じた僕がバカだった。
何の価値もなかった。あのガラスの靴、売りに出しても殆どなんの価値も無いただの綺麗な形をしたガラスの塊だった。
確かに怪しいとは思ったが、何かしらの歴史的な価値とか何かがあるのかとか有名な職人の作品だとかそういうことがあるのかと思っていたが、別にそんなことはないらしかった。
最悪である。
後日の後日、まさかと思って二人のいたアパートを訪ねてみると、案の定だった。ボロアパートの一室はもぬけの殻で、僕の手元には何の価値もないガラスの靴が残された。
僕はここでやっと目を覚ました。
すっかり騙されていた。これで全部わかった。
わかったも何も、僕が一人で得意げに語っていたことが全部僕に帰ってくるわけじゃないか、という感じだった。人を信じるな、平気な顔で人を騙さないと生きていけない。理想だなんだは捨てちまえ。その程度のことだった。大金を失ってやっと気づくなんて。
僕は良心だなんだと阿呆な寝言をぬかしながら悪い夢でも見ていたらしい。それこそ全方不注意で死刑に処されるところだったわけだ。
ともかく目が覚めた。僕はただ悪い夢のようなものを見ていただけだ。確実に預金はぐっと減ったけれど、それは悪い夢から覚めるには悪くない対価だったのだろう。
「現実、か」と僕は呟いて僕はボロアパートを後にした。
さて、今日もまた、嘘だとかなんちゃらだとかを使ってしのぐ現実生活だ。
あとがき
書き終わってからとてもいいわけがしたくなります。苛性ソーダです。
メッセージが率直すぎると思うんです。僕の作品。それが今回顕著に出てしまって、反省しています。(言い訳である)もっと楽しいシーンに紛れ込ませられるようにしようという教訓を刻んで、次の作品に臨もうと思います。
色んな意味で読みづらかったと思うのですが、ここまで読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。
あと、企画に誘ってくれた書き手さんにも感謝。仲間に入れてくださったsyouさんにも感謝です。
ここまで読んで下さった皆さん、よろしければ、感想や評価の方、お願いします。