曖昧2
バタン
とドアが閉まる音で俺は目を覚ました。
さっき寝ぼけて彼女に話掛けた記憶はあるが又眠ってしまったみたいだ。
彼女は今日会社に行って吃驚するだろう。その顔を想像すると彼女には申し訳ないが
俺は幸せだ。
彼女の名前は今井真奈美25歳・昨日の夜、野中真奈美になった。俺の妻だ。
俺は野中剛・28歳、彼女と同じ会社の営業部で働いている。彼女は経理課
「あの子、顔はかわいいのに服の趣味が最悪だな」
同僚の池田が会社を出るとき耳打ちしてきた。斜め前に立ってる女の子
セミロングの茶髪・背は低く、色が白くて、目がぱっちりしている。
たしかにかわいい。でも・・・・・着ている服がねずみ色の上下なんか模様が入っている・・・・
この距離だとはっきりとは模様が解からない。彼女の趣味か?
「いくらかわいい子でも、あの服装だと誘えないな」
池田は俺の目から見てもかっこいい、でも女癖が最悪だ。
こんな鬼畜の何処がいいのか、女たちは自分から寄ってくる。
「服装は本人の自由だ。自分の好みの服を着て何が悪い」
この日から俺は彼女の事が気になりだした。
会社の中で見かけると思わず彼女の近くに行ってしまう。これはきっと好奇心だ。
「今時おばちゃんでもそんな渋い服は着ないよ」
と仲の良い友達に言われてる。やっぱりあれは彼女の趣味か?
今まで付き合ってきた女達の服装は上下ブランドで、見栄を張った奴ばかり。
俺も池田と同じで勝手に女が寄ってくる。でも本気になれる相手はいなかった。
男の事情で多少は相手にしたが・・・
仕事で疲れている時彼女の姿を見つめ、いつの日か、彼女の姿に癒されている事に気付いた。
彼女に話し掛けたいと思いながら中々きっかけが掴めない。
いつも彼女をこっそり見つめるだけ、好きな相手には、臆病になってしまう。
そんな情けない俺に池田が
「前見かけた服の趣味の悪い可愛い子、今日合コンに参加するらしいぞ。」
なんでお前がそんな事知っている?と思いながら
「俺もそのメンバーは参加出来るか?」
と聞いてみると
「俺も参加だから大丈夫だ。今日こそ頑張れよ」
さりげなく、応援の言葉をもらう。こいつ気付いてたのか?
なぜか俺は役所に行って婚姻届を貰ってきた。この紙を自分の励みにしたかった。
自分の場所は全部書きその紙をお守りのようにスーツの胸ポケットにしまう。
外回りから合コン場所に向かった俺は時間に遅れてしまった。
居酒屋に入るとすでに酔っ払った彼女、今日はいつもの悪趣味な服ではなく可愛い服装。
彼女はお酒のせいかすでに眠たそうだ。
俺はさりげなく彼女の隣に腰掛けた。今すぐ抱きしめたい気持ちを抑え隣でウーロン茶を飲む。
うとうとしていた彼女が突然
「私トイレに行ってくるね」
と友達に声を掛け立ち上がろうとする。でも足がもつれて立ち上がれない。
俺は彼女を抱き上げた。回りはなんで?と言う顔をしているが知った事ではない。
俺は彼女をトイレに連れて行きトイレの入り口の前で待っていた。
フラフラしながら出てくる彼女、酔っているなら今が告白のチャンスに思えてきた。
近くのテーブルに彼女を座らせ
「僕は貴女が好きです。貴女以上に好きになれる相手はこれから先出てくる事はありません。僕と結婚して下さい」
「はい」
酔ってる彼女は返事をしてくれた。お酒のせいか顔が赤く照れているみたいだ。
俺はこんな彼女を自分だけのものにしたくてポケットの中に入っている婚姻届を思い出した。
眠そうな彼女に無理やりペンを持たせて婚姻届に名前を書いてもろう。
承認にはあそこに居る仲間に書いてもらえばいいかと元の席に戻った。
池田と彼女の友達に承認を頼みその傍らで酔いでウツラウツラ眠そうな彼女を抱きしめていた。
彼女の友達は、
「真奈美と付き合ってるなら言ってくださいよ、そしたら合コンなんか誘わなかったのに」
なんて言いながら楽しそうだ。
池田が、困った顔で俺を見てるがスルーしておこう。俺は、
「彼女と俺の記念に今から役所に婚姻届を提出しに行く。できたらみんなにも証人になって欲しい」
と頭を下げた。みんな快く引き受けてくれ、役所の前まで付き合ってくれた。
俺は婚姻届を彼女(ほとんど寝ている)と一緒に提出すると
「今日から彼女は僕の奥さんです。」
と宣言した。
寝てしまった彼女を俺のマンションに連れ帰った。
そのままベットの上に寝かすと寝返りをした。隣にもぐりこみたいがまだやる事がある。
彼女の携帯から彼女の家に連絡を入れる。そして明日挨拶に窺う事を伝えた。
池田に電話を入れ明日仕事を休む事を伝えた。
「お前、一歩間違うと犯罪者だぞ。新聞にだけは載るなよ」
と暖かい忠告を頂いた。後は池田が会社にうまく伝えといてくれるだろう。
やっと彼女の隣にもぐりこめる。
酔ってるせいか彼女の体は熱い。服を一枚ずつ脱がす、こんなにドキドキするのは中学生以来だ。
下着だけになると一瞬悩んだが・・・脱がしてしまった。
肌の色が白い。おもわず見とれてしまう。スタイルも良い。服の趣味が悪いとか関係ないなー
なんて彼女の姿を見つめながら思ってしまう。逆に男避けになっていいか?
酔って眠ってる彼女はまったく起きない
俺は一瞬悩んだが思わず彼女の唇にキスをした。触れるだけのキス
好きな女にするキスはこんなに気持ちいいんだと感動してしまう。
囁くように
「愛してる」
と彼女の耳の近くでつぶやく。
触れるだけのキスを繰り返し舌を体中に這わせてく・・・
胸の頂点を口に含んだ時は彼女の口から
「アー・・」
と喘ぎ声が聞こえてきた気がしたが起きてはいないようなので安心した。
ここで彼女が起きてしまったら俺はレイプ犯に間違われてしまう。
それにきっと彼女はこんな行為は初めてだろうから大事にしたい。
俺は彼女の隣で自分の処理をして・・・
彼女を抱きしめながりいつの間にか寝てしまった。
彼女が居ない部屋は昨夜と違いなんか物足りない、虚しい・・
そんな事を思いながら俺はシャワーを浴びた。熱いお湯を浴びながら今日の予定を考える。
彼女の両親に挨拶に行く事になっている。こんな時は自分の両親も連れて行くのか?
入籍を勝手に済ませた訳だし・・・彼女の両親は怒り狂うかもしれない。
俺はスーツに着替えると自分の実家に車を走らせた。
家に帰ると母親に向かい土下座をし、
「母さん一生の頼みがある・・・・」
入籍に至るまでのことを説明し、
「彼女は、初めて本気で好きになった相手なんだ、これから先絶対、彼女と一緒に幸せになりたい。
順番が間違ってるけど今から彼女の実家に一緒に挨拶に行って欲しい、お願いします。」
最初は吃驚してた母親も俺の話しを聞いている間に納得したのか?
「普通それって犯罪よ。でも剛さんがそこまで本気なら母さんも協力するわ。早く孫の顔を見せてね」
父親を仕事先から呼び戻し母親と二人で説得した。
父親は俺が勤めている会社の社長だ。こんな事が世の中にばれたら大変な事になる。
俺は次男だから後を継ぐ必要はないが・・・
やっと俺の本気が父に伝わり彼女の実家に向かった。
彼女の実家に着いても中々チャイムが押せない・・・
玄関先で躊躇っているとドアが勝手に開いた。
「お電話頂いてからずっと待ってたんですよ。」
彼女に笑顔の似た母親が出てきた。
俺の母親が先に電話を入れておいてくれたんだ。母に感謝する。
「このたびは突然申し訳ありません。昨夜娘さんと入籍しました野中剛と申します。順番が違いますが娘さんを一生幸せにしますので僕に下さい。お願いします。」
俺の後ろで両親も頭を下げる。
「二人で決めた事なら私たちが反対する必要はないわよ。早く孫の顔が見たいわね。お父さん」
母親の後ろに父親が隠れるように立っていた。
部屋の中に通されこれから挙げる結婚式の話しで盛り上がる両親
結婚式の話から孫の話に、どんどん話が膨らんでいく。
俺は彼女を会社に迎えに行き、部長に挨拶をしてくる事を告げ、席を立ち上がった。
両親同士はまだ話が尽きないみたいだ。
会社に着くと経理課に向かい彼女の席を探す、彼女を見つけた。
走って彼女の元に向かい抱き上げたいが、(我慢我慢)
彼女の席に向かい、彼女の手を取り立たせた。
部長のデスクに連れて行く。部長の前で
「結婚の報告が後になってしまい申し訳ありませんでした。このたび伊藤真奈美は野中剛と入籍を済ませ野中真奈美になりました。結婚式は改めてやりますのでその時はよろしくお願いします。」
と部長に頭を下げた。隣で彼女はキョトンとした顔をしている。可愛い。(まだ我慢だ)
「おめでとう。伊藤さんなら良いお嫁さんになる。伊藤さんじゃなくて野中さんか」
部長が彼女に話掛けるが彼女は困った顔をしている。
挨拶を済ませると俺は彼女の手を取り会社を出た。会社を出た瞬間
「野中さんは私と誰かを勘違いしてます。・・・」
なんて言ってくる。俺は彼女の両親に挨拶を済ませた事と彼女にプロポーズをして受けて貰った事を伝える。彼女はまだ複雑そうな顔をしていたけどもう一度したプロポーズに答えてくれた。
俺は真奈美の手を取り胸の中に閉じ込めた。
俺はこれから彼女と幸せになる。その為にも早く子供を作る、彼女を逃がさないために・・・覚悟して・