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【連載版】犬のように従順な私をお望みのようですが、あなたへの愛は終わりました。  作者: あまNatu


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しつこい

 ロキとの少し不思議な関係が始まった。

 久しぶりに出会ったロキはとても素敵な男性になっており、一目見ただけでドキドキしてしまった。

 しかしキアラは知っている。

 一目惚れに碌なことはないと。

 なので己を律してロキと接したのだが、彼はとても優しかった。

 もちろんこれから彼のいろいろを見ることになるのだが、今はそれがとても楽しみである。


「よし、シノへのお礼のピクルスたっぷり作りましたし、学園に行きましょう」


 今日もしっかりとお弁当を作ったキアラは、それを持って学園へと向かう。

 教室に入ったキアラに、クラスメイトたちが挨拶をしてくれる。


「あ、おはよう、キアラちゃん! 今日のお弁当はなに?」


「おはようございます。今日は昨夜から漬けておいた鶏肉を揚げたものです!」


「何かわからないけど美味しそう……!」


「お、メルデールさんおはよう! 今日もお弁当楽しみにしてる!」


「おはようございます」


 クラスメイトからたくさん声をかけてもらえる今が、キアラは大好きだった。

 るんるん気分で机にカバンやお弁当を置いたキアラが、椅子に腰掛けようとした時だ。


「――キアラ!」


「…………エドヴァルド様」


 エドヴァルドが廊下からキアラを呼んだ。

 何事かと彼の元へ向かえば、急に大きな包を渡される。


「えっと……これは?」


「弁当だ。君にあげようと思って」


「…………私に?」


 あのエドヴァルドがお弁当をキアラに?

 不思議に思いながらも受け取ったキアラは、パチパチと瞬きを繰り返した。


「…………エドヴァルド様が作られたのですか?」

 

 ずっしりと重たいそれを持ちながらも、キアラはおずおずとエドヴァルドに聞いた。

 もしかしたら過去のキアラがどれほど大変だったかを、彼なりに知るための行動なのではないだろうか?

 そんな【もしかしたら】が頭をよぎりほんの少しだけ期待して聞いてみれば、彼はなんてことないように首を振る。


「まさか。私が料理なんて時間を無駄にするわけないだろう? それはシェフに作らせたものだ」


 その瞬間、キアラの期待は一瞬で地に落ちた。


「…………時間の無駄、ですか」


 それを、キアラはしていたのだが。

 なんてことはない。

 彼はただ気まぐれに、犬に【マテ】ができたご褒美をあげようとしているだけだ。

 これでいいだろう?

 と言わんばかりに。

 少なくとも過去のキアラのつらさや苦しさを知ろうなんて、思っていないのかもしれない。

 ふっ、と笑ったキアラは、渡された包をエドヴァルドに返した。


「いりません」


「――どうしてだ? 弁当は弁当だろう」


「どうぞご友人とお召し上がりください。私にはもうお弁当がありますので」


 やはり期待しすぎないほうがいいのだ。

 むしろ期待した自分が悪いのだと深く反省し、包を返したキアラが教室に帰ろうとした時、エドヴァルドがその肩を掴んだ。


「キアラ! なにが気に入らないんだ。私は君のために――」


「エドヴァルド様」


 キアラは静かにエドヴァルドの手に触れ、肩から離させる。

 そして静かに、冷めた目を向けた。


「今の私とあなたは他人ですので、気安く触れる等のことはおよしください」


「――………………」


 ぴしゃりと言い切れば、エドヴァルドはまるで石像のように息すら止めて固まる。

 少しだけ罪悪感を覚えつつも、ここで手を緩めては意味がないとエドヴァルドと向き合った。


「終わらせましょう。私たちは他人になったのです」


「違う! 私は――」


「キアラ? ……大丈夫?」


 エドヴァルドがキアラの肩をもう一度掴もうとしたその時、彼の後ろから制服に身を包んだロキがやってきた。

 そしてその姿を見てポカンと口を開けた。

 


「ろ……ロキ様!? か、髪の毛が……!」


「え? ああ、どうかな? シノからキアラと一緒にいるなら見た目も気にしろって言われて……」


 結いあげられるほど長かった髪が、綺麗さっぱり切られていたのだ。

 見目麗しい容姿の男性が登場したことにより、教室から覗き見していたクラスメイトたちがざわついた。


「誰あのイケメン!?」


「キアラちゃんの新しい婚約者……?」


「え、ならエドヴァルド様に脈ないじゃん」


「なのにあんなに必死に縋りついて……捨てられないようにするあいつのほうが犬じゃん……」


 なんてクラスメイトたちが話している内容までは、キアラには届いていなかった。

 それよりも髪をバッサリと切ったロキに驚いてしまったのだ。


「こ、後悔はないんですか……?」


「え? 髪に? ないない。面倒で伸ばしてただけだから」


 短くなった前髪をひとつまみ持ち上げたロキは、そのままキアラの元にやってくる。


「どう……かな? 似合ってるといいんだけど」


「もちろんです! お似合いです! 美です!」


「よかったぁ。キアラに嫌われたらどうしようかと思ってたんだ」


 ほっと息をついたロキは、そのままちらりとエドヴァルドを見る。

 ロキはエドヴァルドよりも十センチは背が高いようだ。

 そんなロキは、呆然としているエドヴァルドの額を、人差し指で軽く押した。


「君、しつこいよ」


「――な!」


「好きな人に迷惑かけるのはやめな」


 それだけ言うと、ロキはキアラの手を取ってその場を後にする。

 ちらりと後ろを振り返れば、悔しそうな顔をするエドヴァルドがそこにいた……。

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