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【連載版】犬のように従順な私をお望みのようですが、あなたへの愛は終わりました。  作者: あまNatu


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ロキとエドヴァルド②

「まあ、諦められなかったから今こうしてるわけだしね」


 エドヴァルドからの問いに、ロキは肩をすくめた。

 キアラを好きになってもう何年が経っただろうか?

 エドヴァルドを愛し尽くすキアラを見ていられなくて、学園にくることをやめたくらいだ。

 エドヴァルドの気持ちもわからなくはない。


「ふんっ、結局君も私と変わらない。……ただキアラが傷心の時に、付け入っただけじゃないか」


「…………」


 鼻で笑われた。

 なので同じくらいの大きさで、ロキも鼻を鳴らす。

 その傷を作ったのは他ならぬエドヴァルドなのに、なぜ偉そうにできるのか。

 それにわかるのはエドヴァルドの諦めきれない気持ちであって、それ以外は理解できかねる。


 ――それをわからせないといけないらしい。


「同じ? 全くもって違うことにすら気づけないのか? お前は愚かでいっそ可愛いな」


「――なんだと?」


 エドヴァルドの額に青筋が立つ。

 だがロキは怯むことはない。

 むしろ不敵に笑い続けるばかりだ。


「お前は結局、キアラの気持ちなんてどうでもいいんだな。ただ自分の独占欲や感情を相手にぶつけているだけ。……犬のほうがまだ思いやりがある」


 キアラの犬、なんて呼ばれているらしいがそれは違う。

 犬ならばもっと従順なはずだ。

 それこそキアラのように、相手に従順になるべき。

 しかしエドヴァルドは自分の感情を最優先にしている。

 まあそういう犬も可愛いとは思うが、それは犬だから可愛いのだ。

 ただの人間の雄にそんな感情は抱かない。

 むしろ不愉快だとさえ感じる。


「お前は結局なにも変わってないし、これからも変わらない。キアラのためを思うなら、彼女を手放す選択をしたはずだ」


 ロキのように。

 愛しているからこそ、彼女の迷惑にならないように身を引いた。

 この思いでキアラを傷つけることのないように。

 だからロキとエドヴァルドは違う。

 そのあり方はあまりにも違いすぎるのだ。

 同じにしてもらっては困る。


「口だけであれこれ言ってるだけの、自己中心的な男だ」


「…………わたしは」


 先ほどまでの余裕そうな表情はどこへやら。

 エドヴァルドは顔を真っ白にすると俯く。

 ここで終わらせてもいいが、また下手に不屈の精神なんて出されては嫌だ。


「自覚なかったのか? ならもう遅いだろうな。……キアラは前に進むことを望んだ。お前は過去にしがみつくことを望んだ」


 エドヴァルドの顔を覗き込む。

 よほどロキの言葉は効いたらしい。

 顔色の悪さが見てとれた。


「いい加減にしろ。……誰かの歩みを止めるな」


「…………好きなんだ。キアラのことが」


「恨むなら誰でもない、過去の己を恨め。……お前がその気持ちに素直になって、ただ彼女のために行動できていたのなら未来は変わっていただろう」


 エドヴァルドは己の手で目を覆う。

 震える肩に、一雫落ちた涙。

 どうやら効果はあったようだ。


「でもそうはならなかった。……ならもう諦めて前に進むしかない」


「どうして……私はっ!」


懺悔ざんけするならキアラの前でしろ。……お前がするべきことは、キアラに謝って関係を終わらせると宣言することだ。……ここであれこれ言う必要はない」


 ロキが聞きたいのはそんなことじゃない。

 キアラに謝って欲しいだけだ。

 そして彼女から離れると、そう宣言してくれればいい。

 キアラとロキの未来のためにも必要なことだ。


「考える時間をやる、なんて優しいことは言わない。お前にはその時間はあったはずだからな」


 ロキはエドヴァルドから離れると彼に背を向けた。

 言いたいことは言ったし、エドヴァルドの様子を見るに伝わったはずだ。

 もうどうすることもできないのだと。

 ロキは背を向けたまま、顔だけで振り返った。

 こちらを見るエドヴァルドの長いまつ毛は濡れ、目は赤く充血していた。


「最後くらい、いい男になったらどうだ? キアラにとって、君との思い出がいいもので終われるように」


「………………」


 エドヴァルドはなにも言わなかったけれど、ロキは構わず足を進めた。

 こう言うことは第三者に言われる方がずっと堪えるのだ。

 当人同士じゃどうしたって意地が出てしまう。

 だからきっと、ロキからの話はエドヴァルドにちゃんと突き刺さったはずだ。


「まあ、なんとかなるでしょう」


 後ろでどさっ、と大きな音がした。

 膝でもついたのかなんなのかはわからない。

 振り返るつもりもないからだ。

 かわいそうだとは思う。

 彼のあれはきっと、若気の至りというやつなのだろう。

 素直になれないなんてよくあることだ。

 けれどそのよくあること、で傷つけられた方はたまったものではない。

 人間には我慢の限界というやつがあるのだから。

 なので同情も哀れみも必要ない。

 どうせ最後には、彼はキアラと別れなくてはならないのだから。


「あ、そうだ」


 忘れていたと、ロキはくるりと振り返る。

 未だ呆然としているエドヴァルドに、少し大きめな声で話しかけた。


「君の友人たちにさ、次キアラを犬なんて呼んだら許さないって言っといてくれる?」


「……脅すつもりか?」


「脅す? ……その程度で済むことを祈ってるよ」


 ロキはそれだけいうと、今度こそその場を後にする。

 まああとは彼らの行動次第だろう。

 動く時には動けばいい。

 それだけのことだ。


「さて、どうなることやら」


 このまま何事もなく終わればいいのに、と、ロキは青空を見上げた。

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