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【連載版】犬のように従順な私をお望みのようですが、あなたへの愛は終わりました。  作者: あまNatu


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20/24

ロキとエドヴァルド

 そして迎えた翌日。

 ロキはエドヴァルドの教室へと出向いた。

 教室の一番後ろ。

 窓際に静かに座り本を読むエドヴァルドは、絵画のように美しかった。

 なるほど、あれがキアラの愛した姿なのかと妙に納得してしまったほどだ。

 しかしいただけないのはその周り。

 彼の机には女生徒が座り、なにやら楽しげに話しかけている。

 耳元でこそこそと話す姿は、側から見れば濃厚な関係を彷彿とさせた。

 ただエドヴァルドが全く表情に出さず、反応もしていないことだけが救いだったかもしれない。

 そうでなければ、ロキはこの後の話し合いで手加減できなかっただろう。


(……いや、そもそもできないか)


 やはり無理だ。

 キアラを傷つけた彼に優しくすることなんてできない。

 己の考えを瞬時に消し去ったロキは、教室の中にいる女生徒に声をかけた。


「エドヴァルド君、呼んでくれる?」


「あ、はい……」


 頰を赤くしながらもエドヴァルドの元へ向かった生徒。

 エドヴァルドがこちらを向き、途端に怪訝そうな顔をする。

 それがあまりにも想像通りすぎて、ロキは微笑みながら手を振った。

 さあこれで、エドヴァルドと話ができるなと鼻を鳴らしたその時。

 エドヴァルドよりも早く、ブラッドが駆けつけた。


「お兄様! どうしてこちらに!?」


「次お兄様なんて呼んだら、もう二度と君の顔を見ることはない」


 あれからシノはずっとブラッドを避けているのに、まだ諦めていなかったのかと呆れた。

 冷めた目をブラッドに向けていると、その間にエドヴァルドがやってくる。


「――なにか用か?」


「用がなきゃこないよ。……話をしようか。大切な話だ」


 きっと今の自分はとても冷たい目をしているはずだ。

 その自覚はあるがやめられそうにない。

 エドヴァルドはじっとロキを見た後、同じように冷め切った瞳を向けてくる。


「いいだろう。こっちだ」


 顎で指示をしてきたエドヴァルドは、そのまま颯爽と教室を後にする。

 そんな彼の後をついていこうとし、ちらりと教室の中を見た。

 そこには明らかにエドヴァルドに懸想けそうしている女生徒がおり、ロキは一瞬だけ力強く睨みつける。

 彼女たちの存在がキアラにとって、どれほど苦痛だったことか。

 そもそも婚約者のいる異性にベタベタするものではない。

 ……ロキだって、会いたくても会わないようにしていたのだ。

 だからこれくらいの報復はいいだろう。

 ロキのあまりにも強く殺気だった目に怯えた表情を見せた女生徒たちを置いて、すぐに廊下へと向かう。

 エドヴァルドは律儀に待っていた。


「どこに行くのかな?」


「人のいないところの方がお互い都合がいいだろう」


「――そうだね」


 よくわかっている。

 そのとおりなので黙ってついていけば、エドヴァルドは学校の屋上へと向かった。

 そこは大きな時計の裏側に出れるらしく、アーチ状に開いた穴から青々とした空が広がっている。


「いいね。屋上に出れるとは思わなかった。素敵な場所を知ってるね」


「人のいないところに行きたいことが多くてな」


 確かにあれだけ人に付き纏われていたら、たまには一人になりたいこともあるだろう。

 そこだけは哀れみを向けつつも、ロキは鼻を鳴らした。


「なんだ。寂しがりやなのかと思ってたよ。あんなにたくさんの人間と一緒にいるから」


「なんだ? 自分が人を惹きつける人間ではないことを憂いているのか?」


 ああ言えばこう言ってくるタイプらしい。

 なるほど嫌いじゃないなと、ロキはエドヴァルドと向き合う。

 一方的に痛めつけるのは好みじゃない。

 エドヴァルドには上手く言い返してもらわないと。

 そうじゃなければ、徹底的に叩きのめすことができなくなってしまう。


「俺は不特定多数を相手にするつもりはないよ。大切な人がそばにいてくれればそれでいい。……君とは違う」


「…………私だってそうだ」


「そうかい? そうは見えないけどなぁ」


 煽らなくては。

 彼に言いたいことを言わせてやるんだ。

 そうじゃないと、きっとエドヴァルドの中でわだかまりができたままになってしまう。

 それでは意味がない。


「だって君は、その不特定多数をとったんだろう? たった一人じゃなくて」


「――違う! ……私はキアラをとった」


「違うね。キアラは君の指からこぼれ落ちた。もう戻ることはないよ」


 エドヴァルドの顔が歪む。

 怒りや悲しみ、苦痛。

 さまざまな感情入り混じるその表情を、ロキは静かに見下ろした。


「……俺はキアラに婚約を申し込んだ。彼女はそれを受け入れてくれた。……あとは両家の話し合いで終わるんだ。邪魔しないでくれよ」


 とはいえ両親は昔からキアラのことを知っている。

 ロキの気持ちもだ。

 双方が納得しているのならと、すぐに動いてくれるはず。

 そしてそれはキアラの両親もだ。

 娘を大切にしているあの両親なら、きっと認めてくれるはず。

 だからあとの憂いは、このいつまで経っても諦めない【第三者】なのだ。


「己の傲慢さでキアラを手放したのは君だ。……もういいだろう? 最後くらい彼女の前でカッコつけたらどうだい? 潔く身を引いてくれ」


 婚約破棄からずっと、キアラの中でエドヴァルドの印象は最悪だろう。

 だからこそ、最後くらいは好きな人の前でいい顔をすればいいのに。


「――…………君は、そう言われて諦められるのか?」


 どうもこの男は、諦めが悪すぎるらしい。

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― 新着の感想 ―
エドヴァルドといいブラッドといいまさに類友。しつこさと話の通じなさがそっくり。ブラッドも馴れ馴れしいし乱暴者だし勘違い野郎で嫌いだわ…。シノにも早く素敵な人が現れますように。
エドヴァルドは人間性も諦めも悪いね
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