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【連載版】犬のように従順な私をお望みのようですが、あなたへの愛は終わりました。  作者: あまNatu


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守りたい

「そういえばそろそろ課外学習だね。キアラちゃんたちはどこ行くの?」


「我々は美術館に行きます」


「あ、じゃあ一緒だ!」


 教室での一幕。

 昼休みの間に、クラスメイトの女子とそんな話をしていた。


「課外学習?」


「あ、お兄は行ってないんだっけ? 毎年やってるんだよ。何個か候補があって、生徒が選んで行くの」


「そうなんだ……」


 なにやらロキが考え込んでいるが、その間に女生徒がこっそりとキアラに耳打ちしてくる。


「もしかしてなんだけど……美術館ってエドヴァルド様のため……?」


「…………はい」


 返事をするのに少しだけ躊躇ってしまった。

 だって仕方ないのだ。

 行き先を選ぶ時はまだ、キアラはエドヴァルドにお熱だったのだから。

 彼が好きであろう美術館を、迷いなく選んだ過去の己を叱責する。

 どうせ一緒に回れるわけじゃないのに、なぜ美術館にしたんだ。


「じゃあ鉢合わせするかもね……?」


「………………はぃぃ」


 しゅんっと落ち込むキアラに、女生徒たちは必死に声をかけてくれる。


「大丈夫大丈夫! 私たちも同じところだから、うまく避けられるようにしてあげられるし!」


「そうそう! シノちゃんも一緒なんでしょう?」


 女生徒たちからの問いに、シノはこくりと頷く。


「当たり前でしょ。あの男が婚約者だったとしてもキアラと一緒に行くわけないじゃない。だから一緒に回ろうと思ってたんだ」


「本当にありがとうございます……!」


 シノには頭が上がらない。

 深々とお辞儀をすれば、そんなキアラの肩をシノは笑いながら叩いた。


「いいってことよ。それよりお兄。今回は行くの?」


「…………そうだね。行こうかな」


 学園行事ということで、学年は関係ない。

 全生徒が行くということで、もちろんロキも対象になる。

 しかし彼は過去の行事も参加していない様子だったため、今回も不参加だと思っていた。


「よろしいのですか?」


「むしろこっちこそ。……一緒に回ってもいいかな?」


「――……もちろんです!」


 ロキと一緒に回れるなんて、断る理由もないだろう。

 喜びに胸躍らせていると、そんなキアラを見たシノがんーと声を上げた。


「なら私一人で回ろうかな? お兄と二人っきりのほうがいいでしょう?」


「――」


 シノの提案にキアラは大きく目を見開く。

 確かにロキとは一緒に回ろうと思っていた。

 しかしそれはシノも一緒のつもりだったのだ。

 最初に約束していたのはシノなのだから、ここはしっかり否定しなければ。

 そう思って慌てて口を開こうとしたキアラよりも早く、ロキがシノの頭を優しく撫でた。


「馬鹿だな。シノも一緒に決まってるだろう? キアラがそんなことを気にするような子だと思ってたのか?」


「そ、そうです! 三人で回りましょう! シノも絶対一緒です!」


 キアラが力の限り答えれば、シノはぱちくりと目を瞬かせた。


「…………いいの?」


「もちろん」


「一緒に行きましょう!」


 ロキがそう言ってくれて助かった。

 キアラが何度も頷けば、シノは少しだけ照れくさそうに笑いつつ、ロキの手を軽く振り払う。


「仕方ないなぁ。まだ二人っきりは緊張するだろうし、一緒にいてあげる」


 美人の照れ顔は大変目の保養になる。

 可愛らしいシノの反応にキアラがニヤけていると、ロキが軽く肩をすくめた。


「そりゃどうも。それよりその課外学習っていつなんだい?」


「一週間後よ」


「課外学習終わったら、帰りにカフェでも行きましょう?」


「いいですね!」


 女生徒からの提案を承諾したキアラ。

 すると彼女たちは次の授業の準備をすると、手を振って己の机へと戻っていった。


「俺もそろそろ行かないと。キアラ、今日もお弁当ありがとうね」


「こちらこそ! ロキ様のお弁当とっても美味しかったです」


 ここ最近はロキとお弁当を交換している。

 なので食べ終わったお弁当箱を返せば、空になったキアラのお弁当箱が返ってきた。

 綺麗さっぱりなくなったお弁当箱に、思わず口角が上がってしまう。


「俺もなるべく一緒にいるつもりだけど、最初のほうとかはたぶん学年で別れてるよね?」


「うん。毎回最初に各学年の教師からありがたーいお言葉があるからね」


 シノの心底嫌そうな言い方に苦笑いを浮かべていると、ロキが真剣な顔でキアラを見てくる。


「……気をつけてね? 俺も早く会いに行けるようにするけど……この間のこともあるし」


 そう言うロキの視線は、キアラの腕へと向けられた。

 エドヴァルドの友人たちがきた日。

 力強く掴まれた腕には、手の痕が残ってしまった。

 いまだにうっすらと残っているそれを、ロキは気にしているのだ。


「大丈夫よ。もしあいつらがちょっかいかけてきたら、また水ぶっかけてやるから」


「俺はシノのことも心配してるんだよ」


「どーもどーも」


 ロキの心配はもっともである。

 怒りに任せて手を上げようとしたやつらだ。

 次もなにをしでかすかわかったものではない。

 なのでキアラはロキに向かって力強く頷いた。


「大丈夫です。シノのことは私が守ります!」


「ちょ!? 私がキアラのこと守るんだけど!?」


「いえ、私が責任を持ってシノを守ります」


「私のほうが強いわよ!」


「……二人とも、気をつけてね」

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