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電書第2巻 2/25コミックシーモア配信《連載再開しました》ドアマット幼女は屋根裏部屋から虐待を叫ぶ  作者: はなまる


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第36話 ドアマット幼女の弟子入り

2/25は猫の日だそうです。そして、『屋根裏のエルシャ第2巻』のシーモア先行配信日!∑(゜Д゜)

2巻はドアマット幼女編の完結までが収録されています。気になる方は是非!

 皆さま、こんにちは。


 エルシャ・グリーンウッド六歳です。


 わたしにお師匠様ができました。狩人のトーマスおじ様です。


 元々、スカウトされたのはヘンリーでした。正式に、『しばらく預けてみないか? わしが立派な救助犬に育ててみせる』とご挨拶を受けました。わたしが飼い主ですので。


「嬢ちゃんもついでに、薬草の勉強に来ればいい」


 わたしが飼い主ですが、わたしはおまけでした。ヘンリーは、わたしを雪山から無事に連れ帰った、実績がありますからね。


 そんなわけで、ヘンリーは二ヶ月ほどトーマスおじ様の元で、救助犬の修行をすることになりました。わたしは週に三回ほど、ヘンリーに会いに行くついでに、トーマスおじ様の教えを受けます。


 狩人のトーマスおじ様は薬師としての経験も豊富です。昔からの民間療法ですね。この方面は一度目の走馬灯で見た女性も、興味があった分野らしく知識量がとても多いです。


 女性が暮らしていた国とは植生が違うのですが、それをトーマスおじ様の知識とすり合わせるのも楽しいです。似た植物を図鑑で探したり、使い方を参考にしたりしています。


 ヘンリーはトーマスおじ様と一緒に、毎日山へ入っているようです。足あとを辿ったり、臭いを追ったり、危険な動物の気配を覚えたりしているそうです。


「えっ、お山や森には、熊や狼がいるの?」


「わう」


 19世紀のイギリスは、熊も狼も絶滅していたはずです。この世界の『現実』にはどこか、“願い”や“希望”が含まれているように感じます。何となく『さすが、陽だまりのエルシャの世界だな』と納得してしまいました。


「わう、わふん」


「へぇー、狼さんとは話が通じるのね。お友だちになれそう?」


「わう、わうっ!」


「威張っているの? ふふ。なぜかしら?」


「わふっ!」


 拗ねてますね。ケンカしちゃ、ダメですよ!


 トーマスおじ様とのお勉強は、主に加工方法です。今は雪の季節ですから、あまり採取できるものがありません。おじ様が一次加工(乾燥やお酒など)したものを、二次加工します。


 わたしの捻挫した足にも貼っていた湿布や、丸薬作り、軟膏やシロップやお茶も作ります。わたしの飴も採用されましたよ!


 トーマスおじ様は、薬草以外にもキノコや動物の内臓や木の皮、樹液、何でも使います。それらに関する本も、たくさん読ませてもらえます。


「嬢ちゃんは、覚えも早いし熱心で、手先も器用。ヘンリーとの絆もしっかりと結べているし、度胸もある。いい狩人、いい薬師になれるんだがなぁ……」


 トーマスおじ様、ベタ褒めです。でもなぜ、残念そうなんでしょう?


「嬢ちゃんは、“お嬢様”だからな。この村で狩人になるのは無理だろう? いつかは王都に帰るんだろう?」


「えっ、あの……」


 おじ様に言われて、何も答えられませんでした。わたしの、将来……。未来、先のこと……。


 驚くほど現実感がありません。


 グリーンウッド邸でドアマット幼女として暮らしていた日々から、目まぐるしく周囲の状況が変化しています。


 詰所での生活、ダグラスさんとの旅、そして港町での大事件……。辺境での生活もそこそこに、遭難騒ぎまでありました。


 でも……わたしはまだ、最初の難関すら乗り越えていないのです。


 まだ、グリーンウッド邸から……父から、逃げ切れていない。


 わたしが考えていたのは、父やキャサリン、エミリーと関わらないで暮らしたいとか、せいぜいがダグラスさんを父様と呼びたいということくらいなのです。


「すみません……。考えたことがなかったです」


「いやいや、別に謝るようなことじゃねぇよ。ただ、わしもそろそろ無理の利かねぇ歳だからな。受け継いでくれる弟子がいたらと思っちまっただけだ」


「おじ様……」


「いい若いもんが、山ん中駆けずり回りてぇなんて思うわきゃねぇわな!」


 おじ様が、明るく笑いながら言いました。


「わたしはまだ、辺境に来たばかりですが、毎日が楽しいです。でも、今はまだ……身の振り方や将来のことを、考える余裕がありません」


「……嬢ちゃん、六歳だと聞いているんだが……」


 おじ様が目を見開いて言いました。


「えっ、はい。六歳です」


「驚いたな。そんな受け答えをする六歳児は、見たことがないぞ」


「へ、変ですか……ね?」


 そう言われても、わたしの周りには子供がいなかったので、よくわかりません。エミリーとも、まともな交流があったわけではありませんから。


「わしも都会の子供も貴族の子供も、会ったことがなかったからなぁ。悪かったな! 嬢ちゃんは嬢ちゃんだ! 変でもいいじゃねぇか。なぁ、ヘンリー!」


 ヘンリーは急に話を振られた割に「わうっ!」と、とても良い返事をしてくれました。『もちろんだ!』と言っています。


「ここにいる間は、嬢ちゃんはわしの弟子だ。しっかり勉強して、手業も身につけろ。先のことは、またいつか考えればいいさ」


 わたしが「はい!」と返事をすると、ヘンリーも同時に「わふっ!」と吠えました。


「二人とも、息がピッタリだな!」


 今度こそ本当に明るい、おじ様の声が響きました。



 トーマスおじ様の家を出て振り返ると、わたしの足あとと、ヘンリーの足あとが、雪の上に並んでいました。


 わたしの足あとは小さいです。歩幅も狭く、転びそうになった跡もあります。


 まるで、未来と過去みたいです。


『運命なんかないのよ、エルシャ』


 そう言って笑ったおばあ様の声を、はっきりと思い出します。


 わたしは薬草の匂いが染み付いた手のひらを、そっと胸に当てました。


 あの日、弱っていく母様に届かなかった手が、今なら届くかも知れない。


 その想いは、苦い後悔だけではありません。ただ踏みつけられるだけだったドアマット幼女のわたしが、今この時、初めて“未来を夢みる”ことを覚えたのです。


「ヘンリー、わたし……ちゃんと歩いていける気がします!」


「わふ? わふっ!」


「いいえ、乗ります。牧場まではヘンリーの引くソリで帰りますよ。歩いて帰るのは無理です! 今のは決意表明で……」


 ヘンリーに説明しているうちに、何だか笑ってしまいました。


 いつの間にかわたしは、悲惨なドアマット幼女からは、ずいぶんと遠ざかっているのかも知れません。





読んで頂きありがとうございます。

エルシャの厳冬の地でのスローライフ、羨ましい〜。作者も牧場の羊の毛で編み物したり羊毛フェルト作ってマスコット作ったりトーマスおじ様と薬師の修行したりしたい〜!

そして、そろそろ厳しい展開のカウントダウンはじまってます。

皆さん、心の準備をして下さいね!

準備の出来た方から、☆での評価お願いします!

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