第35話 ドアマット幼女、初めての雪遊び
気がついたら、10万文字を超えていました。
10万文字突破記念SSだと思って読んで頂きたいです!
皆さま、こんにちは。
エルシャ・グリーンウッド六歳です。
雪が止みました。なんと四日も降り続いていたのです。昨夜遅くに止んで、ヘンリーが言うには、今日は午後から晴れるそうです。
四日の間に、捻挫した足はずいぶんと良くなりました。トーマスおじ様がくれた湿布が効いています。走らなければもう、痛くありません。
そして本日、雪遊びデビューです!
冬の遊びを、おばあ様にたくさん教えてもらったのです。
まずはスノーマンですかね!
実はわたし、スノーマンは絵本でしか見たことがないのです。昨年は母様の具合がよくありませんでしたし、その前のことはよく覚えていません。
おばあ様の部屋の前で作ります。窓から見ていてくれるのです。ふふ! おばあ様、起き上がって手を振ってくれています。
おばあ様は風邪を引く前より、少し元気な気がします。これもニンジン飴のおかげですかね!
えーっと、まずは雪玉を作って、コロコロ転がすんですよね? ヘンリーがわたしの周りを駆け回って、はしゃいでいます。
「うんしょ、うんしょ」
おお、すぐに大きくなりますね。
雪はたくさんありますし、どうせならとびきり大きなスノーマンを作りたいです。
ヘンリー、そこ、地面まで掘らないで下さい! 雪が汚れちゃいます!
わたしとヘンリーだけなので、『わうっ、わふ』と犬語で話します。
「わふっ!」
ヘンリーは『わかった! あっちを掘るね!』と言って、少し離れた場所を夢中で掘りはじめました。地獄を掘り当てないで下さいね。
「うんしょ、うんしょ」
スノーマンを作るには、雪玉が三つ必要です。『大、中、小』と違う大きさのものを三つ。頭、身体……足?
「ふう、三つ出来ました。あとは重ねて……あっ!」
やってしまいました……。きれいな雪を求めて雪玉を転がしているうちに、三つの雪玉がそれぞれが遠く離れた場所になってしまいました。
「困りました。これを持ち上げて運ぶのは、わたしにはちょっと……」
一応、挑戦してみましたが、一番小さい頭パーツの雪玉でやっとでした。何とか、一番大きな雪玉の近くまで運びます。
「これ……重ねるの……無理……」
肩で息をしていると、ベックさんが手押し車を持って、駆けつけてくれました。
「エルシャお嬢様。助っ人が必要ですかな?」
「失敗です……欲張って、大きいのを作りすぎました」
「はは! みんな通る道です。わしも子供の頃は毎年、同じ失敗をしましたよ」
雪国あるあるなんですね。わたしだけじゃなくて良かった!
そこからは、ベックさんと共同作業です。手押し車で身体パーツの雪玉を運び、三つ重ねて、スコップで形を整えます。
ヘンリーは……。遠くの方で雪煙が上がっていますね。雪に鼻先を突っ込んでは、撒き散らしているようです。楽しそうで何よりです。
「あとは、顔を作って、帽子とマフラーですね!」
帽子はベックさんのお古を、マフラーはソフィアさんが貸してくれました。手にはキッチンミトンを使います。
「顔はどうしますか?」
「目は炭で、鼻は松ぼっくり。口は小枝ではどうですか?」
「いいですね! 炭を持ってきます。松ぼっくりは……」
「ヘンリーに頼みましょうか……ヘンリー!」
呼ぶと、全身を雪まみれにしたヘンリーが、すぐに駆けて来ました。
「松ぼっくりを探して来てもらえますか?」
そう言ってから、『わう』と犬語でお願いします。
ヘンリーはすぐに『わふっ!』と吠えて走って行きました。“任せて!”と言っていました。
「おやおや。お嬢様はすっかりヘンリーと仲良しですな!」
ベックさんは、わたしたちのやり取りを笑って見ていましたが、ヘンリーが松ぼっくりを咥えて戻って来たのを見て驚いていました。
でも、たぶん大丈夫だと思います。普通の大人は犬と幼女が会話するなんて、言ったところで信じませんから。
顔を作って、小石をボタンにしたら完成です。ニコニコ顔の、とても立派なスノーマンです!
しばらく惚れ惚れと眺めていると、ソフィアさんが呼びに来ました。
「そろそろ中に入って下さいな。お茶の時間ですよ」
「はーい!」
お茶は、おばあ様のお部屋で頂きました。冷えた手が急にあたたまって、かゆいです。
「エルシャ、手を引っ掻いてはダメよ」
そう言って、保湿の軟膏を塗ってくれました。わたしが港町で買って来た、貝細工の軟膏入れです。ちゃんと使ってくれてるの、とても嬉しい。
午後からは、ヘンリーとソリ遊びをしようと思っていたのですが、お昼寝から起きたら太陽が出ていて、雪はすっかり溶けていました。
ヘンリーの天気予報が大当たりで、スノーマンも崩れてしまいました。しょんぼりです。
「また、降りますよ。今年は雪深くなりそうですから」
ソフィアさんの口調はため息混じりです。どうやら雪が降るのを楽しみにしているのは、わたしとヘンリーだけみたい。
そうですよね……。幼女と犬は浮かれていれば良いですが、大人はそうはいきません。
キッチンは冷え込みますし、雪掻きも大変ですから。わたしはソフィアさん用に、脛当てを編むことにしました。おばあ様に教えてもらって、かぎ針編みをマスターしたのです。
ベックさんには帽子、おばあ様には肩掛けも編みます。
「クゥーン」
「ヘンリーは、モコモコなので必要ないでしょう?」
「わう……」
欲しいそうです。仕方ないですね! ケープでも編みましょうか?
「わうっ!」
尻尾をブンブン振っています。汚したらダメですよ!
石炭ストーブの上で、ヤカンがシュンシュンと音を立てています。辺境の季節は静かに進んでゆきます。
読んで頂きありがとうございます。
物語は、ちょうど折り返したあたりです。楽しく読んで頂けると嬉しいです。




