表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電書第2巻 2/25コミックシーモア配信《連載再開しました》ドアマット幼女は屋根裏部屋から虐待を叫ぶ  作者: はなまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/35

第22話 ドアマット幼女、祖母との邂逅

 皆さまこんにちは。


 エルシャ・グリーンウッド六歳です。


 乗り合い馬車の終点の村で馬を借りて、おばあ様の家へ向かっています。ダグラスさんと二人乗りです。ちょうどお医者様が往診に向かうと聞いて、道案内がてらの同行をお願いしました。


 お見舞いには果物か乳製品が良いと、走馬灯の知識で見た覚えがあります。ダグラスさんに提案してみたら、『祖母殿の家は、牧場と果樹園を営んでいるんだろう?』と言われました。


 そうでした。両方とも家業なのです。悩んだ末にお花屋さんで、遅咲きの白いダリアの鉢植えを買いました。華やかでとてもきれいです。


 馬の背中は思っていたよりも高く、(くら)は硬いです。高い目線での景色は新鮮ですが、もうお尻が痛い……。


 40分ほどポクポク行くと、果樹園と牧場が見えて来ました。その奥に木造の平屋があります。挿絵の通りの光景に、心臓がドクンと鳴りました。


 一応、わたしとダグラスさんが訪れることは手紙で知らせてあります。たぶん、わたしたちよりは先に届いているはずです。


 ダグラスさんがドアをノックし、出迎えてくれたのはエプロンをした五十代くらいの女性でした。


「王都の警ら隊、ダグラスです。グリーンウッド伯爵家について、話を聞きに来た。夫人はご在宅だろうか?」


「はい……、お待ちしておりました。遠いところから御足労さまです。どうぞ、お入り下さい」


 女性は祖父母に長く仕えていた元メイドで、元庭師の夫と共に、おばあ様とこの家で暮らしているそうです。名前はソフィアさんです。


 先にお医者様の往診を済ませてしまうことになり、わたしとダグラスさんは、応接室へと通されました。


「あなたがエルシャお嬢様ですね。奥様はずっとお嬢様を心待ちにしておられましたよ」


 ソフィアさんが少し涙ぐんで言いました。わたしは胸がいっぱいになって、頷くことしか出来ません。その後も色々考えてしまって、ずっとお尻がそわそわしてしまいます。


「落ち着かないか?」


「はひ……」


 素直に頷きましたが、変な返事になってしまいました。油断すると涙が出て来そうなのです。どうしても馬車で見た悪夢が頭から出て行ってくれないのです。


 ダグラスさんが背中をさすってくれましたが、立ち上がってウロウロ歩き回りたい気持ちが収まりません。


 しばらくするとお医者様が来ました。


「診察は終わりましたよ。面会では、あまり患者に負担をかけないように」


「こちらへどうぞ。奥様がお待ちです」


 ソフィアさんの案内で、おばあ様の部屋を訪れます。


 おばあ様は、ベッドに半身を起こしてわたしを迎えてくれました。


「エルシャ……? エルシャなの? なんて可愛い子……! アリッサにそっくりね」


 おばあ様は真っ白なお髪を、三つ編みにして肩に垂らしています。顔色は悪いですが、お母様の面影があります。声もとても似ています。


 涙ぐみ、両手を広げてくれています。飛び込んでも……良いのでしょうか。


 後ろから、ダグラスさんが背中をトンッと押してくれました。もう我慢出来ません。わたしはおばあ様の元へ走り寄りました。


「会いたかったわ。こんな姿で恥ずかしいわ。それと……あなたが辛い想いをしている時に、何も出来ずにごめんなさい。でも良かった。今は笑っているのね?」


「おばあ様、わたしも、お会いしたかったです! 今は……はい、警ら隊に保護してもらって……あの、ダグラスさんです。わたしをグリーンウッド邸から助けてくれた人です」


「エルシャを救ってくれた、英雄さんなのね。私がお礼を言う資格はないかも知れないけど……でも、ありがとうございます。エルシャを連れて来てくれたことにも、心から感謝致します」


「いえ……。お孫さんが声を上げたんです。勇気のある強い子です」


 その後も、少しだけお話し出来ました。警ら隊の詰所での生活や、旅の間の出来事を話しました。港町で買った、貝細工のお土産も渡しました。とても喜んでくれました。

 馬車での悪夢が、石鹸の泡のようにシュワシュワと消えていきます。おばあ様の顔には暗い影ではなく、柔らかな陽射しがさしています。


「あの、そろそろ……。奥様が疲れてしまいますから。奥様、少しお休み下さいな。お客様は、私が丁重におもてなし致しますから」


 ソフィアさんが今度は、客間に案内してくれました。おばあ様は少しお昼寝するそうです。


「お二人の、予定をお聞きしてもよろしいですか? 奥様からは、ずっといて欲しいと申し使っております」


 わたしは思わずダグラスさんを仰ぎ見ました。


 わたしは予定どころか、今後の人生すら定かではない幼女です。何なら住所不定、無職です。でもダグラスさんは王都でお仕事がありますし……。


「手紙でもお知らせしましたが……。今回は捜査で来たので、俺はそれが終わったら王都へ帰ります。エルシャは、どうしたい?」


「えっ、」


 急に話を振られてしまい、すぐには答えられません。何となくこの旅でのわたしは、ダグラスさんの付属品だと思っていたようです。


 けれど、好都合かも知れません。わたしがこのままずっと、この家でお世話になれるならば、ダグラスさんや王都の警ら隊の皆さんとは関わらないでいられる。


 おばあ様はわたしを受け入れてくれましたが、わたしが物語を壊してしまったのは事実なのです。わたしとは関わらずにいた方が、幸せに暮らせるのかも知れません。


 わたしが何も言えずにいると、ダグラスさんが『エルシャに関しては、少し考えさせてあげて下さい』と言いました。


「わかりました。ではお二人とも、しばらく滞在ということで、準備させて頂きますね。それにしても……エドワード坊ちゃんがエルシャお嬢様に酷い仕打ちをしていたなんて……」


「坊ちゃん……父のことを昔から知っているんですか?」


「え、ええ、もちろん。エドワード坊ちゃんは分家の次男で、アリッサお嬢様の婿養子になった方ですから」


「父は婿養子だったんですね」


「ソフィアさん、その辺の事情に関して知っていることを話してもらえますか」


「はい……。実は奥さまから、捜査に協力するよう指示を受けております。私はグリーンウッド邸では家政婦長を務めておりました。何なりとお聞き下さい」


「エルシャ、すまないが席を外してくれるか? エルシャが知るべきタイミングが来たら、必ず全て説明するから」


「でも……」


 あの夜と同じです。


 たぶんダグラスさんは、わたしの心を心配してくれている。


「……わかりました。ダグラスさんの判断に任せます」


 ダグラスさんが『今は知るべきでない』というのなら。そう、素直に思えました。


「ではエルシャお嬢様は、牧場や果樹園を見ていらしたらどうですか? 夫に案内させますわ」


 すぐにソフィアさんの旦那さんが来てくれました。サスペンダーに中折れ帽子のふくよかな男性です。


「エルシャお嬢様、夏に生まれた仔馬がいますよ。果樹園のブドウも食べ頃です」


 ううっ……! なかなかに魅力的な提案です。ここは……六歳の幼女らしく、釣られるべき場面ですよね?


「はい。では、ダグラスさん、行ってきますね」


 わたしは二人を応接室に残して、男性……ベックさんに着いて行くことにしました。



読んで頂きありがとうございます。


しばらくは毎日更新します。これを機会にブクマや評価がまだの方、ポチッとよろしくお願いします。作者が小躍り致します・:*+.\(( °ω° ))/.:+


電子書籍もよろしくお願いしますね!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 悪夢の完全再現とならず、祖母の方にあたたかく迎えられ、メイドのソフィアさんからも捜査協力や子供への配慮ありの優しい提案がされたようでなによりです。  互いに快調とはいえないながらも、ひとまず良好な面…
お祖母さまが、お元気ではないにしても、笑顔で迎えてくれて、エルシャ良かったです。 前節の夢の意味がどんな伏線になるのか、物語的にはおいしい展開ですが、できればエルシャには早く幸せになってほしい、一読者…
あけましておめでとうございます。 更新、お待ちしておりました。 ------------------------------------------------ 暗雲がもう1つ2つ、湧いて出そうです。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ