第20話 ドアマット幼女、再び港町へ
本日は二本投稿しています。未読の方は19話へ戻ってお読み下さい。目印はダグラスさん視点です( ´∀`)
連載再開できて、ご機嫌な作者です。明日も複数回投稿しちゃいますよ!
皆さま、こんにちは。
エルシャ・グリーンウッド六歳です。
やっつけた誘拐組織の残党を連れて、港町へと戻ることになりました。もちろん悪者は縄でぐるぐる巻きです。
肩を撃たれた御者さんの代わりに、乗客のおじい様が御者席に座ってくれています。御者さんはかすり傷ですが、銃で撃たれた傷は浅くても熱が出たりするそうですよ。大事にして下さいね。
「いやぁ、隊長さんはさすがだね。まさかあんなに手際よく片づけちまうとはなぁ!」
「そうねぇ。お嬢ちゃんにも驚いたわ。調味料をあんな風に使うなんて」
旅芸人のご夫婦が言いました。お二人は、路上や広場で楽器を演奏しながら旅をしているそうです。旦那さんがユージンさん、奥さまがアリーシャさんです。
「肝が冷えました。馬車で大人しくしていて欲しかったですよ」
ため息をつきながら、ダグラスさんが言いました。
「二人とも大活躍だったよ。俺の命の恩人だ。ほんと……生きた心地がしなかった……」
わかります。御者さんはまだ顔色が悪いです。
「エルシャ……もう、ああいうのは勘弁してくれ。心臓が止まるかと思った。せめて相談して欲しい」
チリパウダー、事前に準備していたことですかね? 何か起きそう……と思ったこと。確かに相談するべきでした。
「はい……。ごめんなさい」
叱られたけれど、しょんぼりにはなりませんでした。だって心配してくれたの、わかります。相談したら止められた気がするけど、二人で作戦を練ったりも出来たかも知れない。
それって……なんだか、『仲間』とか、……か、か、か、『家族』……みたいだと思いませんか?
ニヤニヤが止まらないわたしを、ダグラスさんがジロリと睨みました。わたしにはそれすらも、『めっ!』ってされたみたいに感じました。
「ふふっ!」
つい、声に出して笑ってしまったわたしに、ダグラスさんがコツンとゲンコツを落としました。全然痛くないやつです。
「まぁ、今回は……正直、助かった。だが、あまり心配させるな」
「はぁーい……」
『は』と『い』の間を伸ばすお返事は、相手があまり怒っていないと確信した時に使うのです。エミリーが時々使っていました。ようやくわたしも、使える日が来ましたよ!
そうしてニヤニヤなわたしと襲撃犯人を乗せて、馬車は港町へと戻ったのです。
* * *
港町の警ら隊本部に犯人たちを引き渡して、馬車に乗っている全員が取り調べ官の聞き取りがありました。王都の警ら隊で言うと、エバンスさんです。
こちらの取り調べ官の方は、かなりお年を召したおじい様でした。白いおヒゲがキュートです。
「ほほう。その時、嬢ちゃんはどこに居たんじゃ?」
わたしの話に、合いの手などを入れてくれます。終始、和やかな取り調べでした。
聞き取りが終わっても、ダグラスさんはまだ帰れないので、わたしは先に港の近くの宿屋へ向かうことになりました。今日はきっと、またお泊まりですね。
宿屋では夕食の用意をしてくれていました。部屋ではなくて、食堂で食べました。悪い人はみんな逮捕されたので、もう警戒しなくて良いのです。
夕食は、うさぎのシチューとスコッチエッグです。スコッチエッグは子供が大好きなメニューです。わたしのために作ってくれたと聞いて、なんだかくすぐったいです。
テーブルに、わたしのためのお皿が並んでいるのは、とても幸せな光景です。もちろん、ほっぺが落ちるほど美味しかったです。
食後のお茶を飲んでいると、窓の外から楽器の音が聞こえて来ました。見ると、警ら隊の本部で別れた旅芸人のお二人でした。どうやら、路上で演奏会をはじめるようです。
ユージンさんの小さな蛇腹楽器が、軽快なリズムを奏ではじめました。『コンサーティナー』というそうです。ボタンを押すたびに違う音が出る、不思議な楽器です。
アリーシャさんが三日月型のタンブリンを、腰や肩でシャンと打ち鳴らして回ります。スカートが翻ってお花のように広がります。
あの蛇腹楽器すごいです……! あんなに小さいのに、たくさんの人で演奏しているみたい。明るい曲調なのに、どこか哀愁を感じさせる、深い音色です。
わっ、アリーシャさん、足のかかとでタンブリンを打ちました!
大胆なポーズなのに少しも下品じゃないです。ゆるい三つ編みにした髪がポンポンと揺れています。
アリーシャさんはタンブリンを高く投げ上げると、ポケットから銀色の小さなハーモニカを取り出しました。
落ちて来たタンブリンを受け取り、ダンッと地面を踏み鳴らします。ハーモニカと蛇腹楽器の相性は抜群で、連弾のように互いの旋律を引き立てています。
少しずつ集まっていた聴衆から歓声が上がり、アリーシャさんの足を踏み鳴らす音に合わせて手拍子がはじまりました。
わたしの目も耳も釘付けです! 素晴らしいパフォーマンスです! いつの間にかわたしも、窓から身を乗り出して手拍子を打っていました。
すると後ろから、ふっと抱き上げられました。
「エルシャ、そんなに身を乗り出したら危ない」
ダグラスさんです。戻って来たの、全然気が付きませんでした。
「お帰りなさい……。でも、あんまり素敵な演奏だったから……」
つい、言い訳してしまいました。
「ただいま。……ああ、確かに一見の価値があるな」
そうでしょう、そうでしょうと頷いてしまいました。ダグラスさんも視線を釘付けにして、うんうんと頷いています。
「見に行くか?」
「はい!」
時間にしたらほんの15分ほどの、短い演奏会でした。わたしはダグラスさんの腕の中という一等席で、最後まで楽しい時間を過ごしたのです。
こうして港町の、“平和な夜”が更けてゆきました。
読んで頂きありがとうございます。連載再開を待って下さった皆さま、感無量でございます。
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