第19話 ドアマット幼女と港町事件簿 その肆
お久しぶりでございます。お待たせ致しました!
大人の事情が解消したので、連載再開します! 作品じたいは、ほぼ完結まで書き上がっていますので、安心して読み進めて下さい。
最後までお付き合い、よろしくお願いします!
《ダグラス視点》
馬車を飛び降り地面へと転がる。車輪を背にして、息を止めて様子を窺う。
『パン!』
再び銃声が響いた。煙が流れ、火薬の臭いが鼻を刺す。
くそっ、やっぱりつけられてたか。
銃を構える影が三つ、距離は十五ヤード。狙いは悪いが素人ではない。
気配を消したまま、小石をひとつ、茂みへと放る。
――ガサリ。敵の一人が顔を向けた。
よし! 今だ!
一気に踏み込み、相手の手首をはじき上げて銃口を逸らす。間髪入れずに膝を蹴り潰し、脇腹を警棒で振り抜く。
呻き声とともに男が崩れ落ちた。
(まずは一人!)
少し離れた場所から、撃鉄を起こす音がした。
『パン!』『パン!』『パン!』
反射的に身を沈め、そのまま転がって距離を詰める。
低い姿勢から足を払い、倒れた相手の上から腹に膝を落とす。
(二人目……あと一人!)
だがその最後のひとりは御者へと走り、羽交締めにして頭に拳銃を突きつけた。
「動くな! 武器を捨てろ! こいつの頭が吹っ飛ぶぞ!」
チッ……これは言う通りにするしかない。手を挙げてゆっくりと立ち上がる。
「お前が王都の警ら隊長だな? お前のせいで……! 拳銃を拾え! 自分の足を撃てよ! 両足ともだ!」
青白い顔に歪んだ笑みが浮かんだ。
「御者がどうなってもいいのか? 英雄気取りの隊長さんよぉ!」
「組織は壊滅した。もう諦めろ」
話を逸らし、男の意識をこちらへ向けさせる。――少しでも隙を作らなければ。
「お前がっ! お前さえいなければ上手くいったんだ! あとはガキ共を連れて港を出るだけだった!」
「自首して罪を償えばやり直しも出来る」
「綺麗ごと言いやがって……! 捕まればどうせ縛り首だ! お前も御者も、全員殺して逃げてやるさ!」
「なぜ馬車を襲撃した? あのまま逃げれば良かっただろう」
「それは……港は厳戒体制だ! 馬車に乗るのも身分証が必要だった! 全部お前のせいだろうが!」
「……確かに、それを指示したのは俺だ」
「だからお前の乗った馬車を狙ったんだ……。まさか拳銃でも勝てないなんてな!」
男の意識が、徐々に御者から外れてゆく。あと少し……ほんの2秒の隙さえあれば……。
視界の端で――馬車の扉がかすかに開くのが見えた。小さな影が、扉から顔を出している。エルシャ……か?
背筋が凍りついた。
ダメだ、戻れ! 馬車の中へ戻るんだ!
声は出せない。視線さえ向けられない。
「……わかった。言う通りにしよう」
大袈裟な仕草で自分の足へと銃を突き付ける。奴の視線が釘づけになり、口元が愉悦に歪んだ。
次の瞬間。エルシャが、何か小さな袋を男に投げつけて叫んだ。
「御者さん、目を閉じて!」
――幼く澄んだ声が、張りつめた空気を裂いた。
「ぎゃああっ! 目が……目がぁ……!」
男が顔を押さえて倒れ、のたうつ。
みるみるうちに顔が腫れ上がる。
エルシャは何を投げた? だが、考え込んでいる暇はない。
地面を蹴って間合いを詰め、男の顔に思い切り拳を叩き込んだ。身体が宙に浮き、そのまま仰向けに崩れ落ちた。
男の銃が転がり、御者がその場に座り込む。見ると御者の髪にも俺の拳にも、赤い粉末が付着していた。
「赤い……チリパウダー、か?」
思わずつぶやく。馬車の方を見ると、エルシャが満面の笑みでピョンピョンと跳ねていた。
「エルシャ……頼むから、馬車で大人しくしていてくれよ……!」
思わず、存外情けない言葉が口から漏れた。
お前に何かあったらと考えるだけで、俺の足はいとも簡単に震えるんだ。それをわかっていないのか?
読んで頂きありがとうございます。
本作第1巻は『屋根裏のエルシャ ドアマット幼女は屋根裏部屋から虐待を叫ぶ』とタイトルを変更して、電子書籍が配信してされています。活動報告にコミックシーモア様のリンクが貼ってありますので、ポチッとよろしくお願いします。そちらでレビューや評価など頂けますと、作者が泣いて喜びます笑
本日は21時に、港町事件簿の後日談『第20話 ドアマット幼女、再び港町へ』を投稿します。




