12/25電書配信開始! 御礼クリスマスSS 前編
『屋根裏のエルシャ第1巻 ドアマット幼女は屋根裏部屋から虐待を叫ぶ』が12/25日に、コミックシーモアさんで先行配信開始です!
クリスマス当日ですよ! 作者へのクリスマスプレゼントですよね!・:*+.\(( °ω° ))/.:+
というわけで、浮かれた作者が『クリスマスSS』書きました笑 しかも前後編です! いつものエルシャよりも、ファンタジー盛り盛りでお届けですよ!
皆さんにも、素敵なクリスマスが訪れますように!
電子書籍の予約ページへのリンクは、活動報告に貼っておきますね。作者の名前をポチッとする→活動報告をポチッとして下さいませ!
皆さま、お寒うございます。
エルシャ・グリーンウッド六歳です。
寒さが本格的になり、王都でも初雪が降りました。夜に降りはじめた雪をダグラスさんとキッチンで、ホットミルクを飲みながら眺めました。
いえ、ダグラスさんはあまり見ていませんでしたね。大粒の雪がガス灯の灯りでオレンジ色に浮かび上がるのが、幻想的でとてもきれいだったのに。『朴念仁』という言葉が頭に浮かびました。あっ、これは走馬灯の知識です。
翌朝は溶けた雪で道が凍って、滑って転ぶ人が続出しました。実はわたしも二回ほど、すってんころりんしてしまいました。お尻がちょっと痛いです。
ハドソン先生にもらった湿布を、こっそり自分で貼りました。
そんな冬の、ある夜の出来事です。
その日の夜勤はピートくんでした。ピートくんはまだ夜勤に慣れていないので、わたしがしっかりしないといけません。居眠りしていたら起こしたり、書いた報告書の誤字をチェックしたりします。だからその日は昼間、たっぷりお昼寝したのです。
ピートくんが定時の巡回に出かけ、わたしはコーヒーを淹れる準備をしていました。ピートくんは普段、背が伸びなくなるからコーヒーは飲まない主義らしいのですが、夜勤の時だけは仕方ないと飲んでいます。
薪ストーブの上のやかんが、シュンシュンと音を立てはじめました。
そのときです。
窓の外から、ドサッと何かが落ちた、大きな音が聞こえてきました。
「うう、痛っ、いたた……やってしもうた……」
誰かが屋根から落ちたようです。
泥棒さん……? でも、警ら隊の詰所に入る泥棒がいるでしょうか。怪我をしたみたいですし……わたしは窓から顔を出して声をかけてみました。
「大丈夫ですか? どうしました?」
「腰を……、やってしもうた……」
弱々しい返事がありました。オイルランタンを掲げて見ると、赤い服を着たおじい様が腰を押さえてうずくまっていました。白いおひげがふるふると震えています。
「白いおひげに、赤い服……。もしかしてサンタさんですか?」
「ああ、そうだ。……いかん、こんな姿を子供に見せては、夢を壊してしまう……!」
「大丈夫ですよ。わたしはもう六歳ですから。サンタさんだってギックリ腰になるくらいわかります」
「そ、そうか。助かる……。その辺に、トナカイはおるか?」
「トナカイさん……」
オイルランタンでぐるりと周囲を照らします。あっ、いました。でも、足を痛そうにプラプラと振っています。
「トナカイさん、いましたけど、足を怪我しているみたいです」
「なんと! 困った……。これではプレゼントを配れない」
これは緊急事態です。今日はクリスマスイブなのです。
でも去年のクリスマス……。わたしの部屋にサンタさんは来なかったのです。エミリーのところには来ていたのに。だから今年も、期待せずにピートくんの夜勤に付き合っていたのですが……。靴下も吊るしていません。
だって、朝起きて……空っぽの靴下を見るのは嫌だったんですもの。
「サンタさん、去年は……いえ、なんでもありません」
根に持つようなことを言ってはいけませんね。去年も何か事情があったのでしょう。
「子どもたちが待っておるのに……」
サンタさんが、チラッとわたしの方を見ました。
「こんな大切な夜に、腰が痛くて動けんとは……」
また、チラッと見ています。
「……わかりました。わたしが代わりに配ります」
「いいのか!? すまんのう」
待ってましたとばかりに言いました。仕方のないおじい様ですね。
「立ち上がれますか?」
「痛っ、ううう。何か杖になるものを……」
掃除用のほうきを持ってきました。わたしも肩を貸して、ようやくヨロヨロと歩きはじめました。
仮眠室へと案内して、横になってもらいます。腰に、ハドソン先生の湿布を貼ります。
「おお、スーッとして気持ちいいのう」
「ハドソン先生の湿布は良く効きますよ」
わたしのお尻も、一日でずいぶん良くなりましたから。
サンタさんが落ち着いたので、今度はキッチンでトナカイさんの治療です。足は折れていない様子ですが、関節が腫れています。こちらも、ハドソン先生の湿布を貼ります。湿布、今日は大活躍ですね。
トナカイさんの治療をしていると、ピートくんがキッチンへ入ってきました。いつの間に帰って来たんでしょう。気がつきませんでした。
「エルシャ……。仮眠室のベッドで、赤い服の爺さんが寝てるんだけど……だれ?」
「サンタさんです」
「ええっ? じゃあ、そ、そのトナカイは?」
「サンタさんのソリを引く、トナカイさんです」
ピートくんが呆然と立ち尽くしています。
「サンタクロースって、本当にいるの? 僕の常識が間違ってる……?」
「それよりピートくん。大変なんです。サンタさん、屋根から落ちて、ギックリ腰だそうです。トナカイさんは足を痛めています」
「大惨事だよ!」
「なので、わたしが代理でプレゼントの配達に行きます」
「えっ、もう決定なの!?」
「緊急事態ですから」
ピートくんは、“エルシャはなんでそんなに冷静なの”とか、“本物? そんなのあり得るの?”とかぶつぶつ言っていましたが、急に真面目な顔で言いました。
「エルシャ、聞いて! こんな夜に、小さい子が出かけるのはダメ!」
「えっ、でもクリスマスイブですよ?」
「クリスマスイブでも、ダメ!」
「プレゼント、配らないと……」
「僕が行く!」
ピートくんの目がキラキラしています。きっと“だって楽しそうだもん”って思ってます。わかります……わたしもちょっと、そう思います。
「ピートくん、夜勤はどうするんですか?」
「あー、そっかぁー。仕事だもんなぁー。サンタの爺さん、夜勤代わってくれないかな?」
「ギックリ腰ですから……」
ピートくん、すっかりサンタさんの存在を受け入れています。さすがはピートくんです。
「ダグラス隊長は?」
「昨日夜勤で、今朝帰ったばかりですよ。かわいそうです」
「でもエルシャひとりで行かせるのは、やっぱり心配だよ」
ピートくんがぐぬぬと唸っています。確かに幼女が夜中にウロウロするのは、危険かも知れません。世の中には悪い人もいますから。
「おーい、嬢ちゃんの身の安全なら、保証するぞい」
サンタさんの声です。ピートくんと仮眠室へ向かいました。
「このサンタ服は、着ると悪いやつには見えなくなる。つまり、わしを見つけられるのは、清い心を持っている人間のみなんじゃよ」
「えっ、じゃあ、わたしとピートくんは?」
「うむ! 二人とも清いぞ!」
「そう、かな……えへへ」
何となく照れくさくなって、ピートくんと顔を見合わせて笑ってしまいました。
「しかも、じゃ! このサンタ服は誰にでもフィットするフリーサイズじゃ! お嬢ちゃん、着てみてごらん」
サンタさんが、赤い上着を脱いで渡してくれました。汗くさくないでしょうね?
半信半疑で袖を通すと、シャルルルルと縮みました。膝丈のワンピースみたいです。
「すげぇ!」
ピートくんが叫びました。わたしの目もまんまるです。サンタさんって、すごいんですね……!
「さっき、サンタの里に連絡して、代理のトナカイを頼んだんじゃが、あいにく子供のトナカイしか来られんのじゃと。どっちみち、そっちの兄さんは重量オーバーじゃよ」
つまり、わたしが行くしかない状況……ですね!
「わかりました。任せてください!」
最初は成り行きで引き受けましたが、だんだん楽しみになって来ました。不思議なサンタ服を着て、子供トナカイさんの引くソリに乗って、プレゼントを配るのです。
「いいなぁ、エルシャ! 最高のクリスマスじゃん! えー、僕、夜勤なんかしてる場合じゃなくない?」
「いいえ、ピートくんは夜勤をしっかり勤めて下さい! わたしは……ふふふ! 幼女サンタになります!」
後編に続く。ちゃんちゃん!
読んで頂き、ありがとうございます。
本編では、エルシャは秋の終わり頃に辺境へと旅立っていますから、少し違う世界線のお話になります。
そして『屋根裏のエルシャ』、実はコミカライズも決定してます! 続報をお待ち下さい。
クリスマスSSなので、後編は12/24のイブに投稿予定でーす!




