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電子書籍化決定《連載版》ドアマット幼女は屋根裏部屋から虐待を叫ぶ  作者: はなまる


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謝恩SS 僕はピート

祝、累計100万PV突破、ブクマ10,000突破、感想100件到達です。ありがとうございます! 感謝のSS投稿、第一弾です。お納め下さい。

 皆さんこんにちは。


 僕は、西区八番街警ら隊員のピート十六歳。


 今年の春入隊したばかりの僕は、最近まで一番の新入りで最年少だった。


『だった』と言うからには、今は違う。


 何しろ、うちの警ら隊の詰所には、六歳の女の子がいるんだ。少なくとも最年少じゃない。


 別に新入りイビリなんてされてないけど、あまりにも子供扱いされるのが納得出来なくてさ。これでも学校では、『ちょっと頼れるピートくん』って呼ばれてたんだぜ。えっ、ちょっとじゃダメ? そっか……。


 西区の八番街警ら隊は、王都の警ら隊の中でもツワモノ揃いで有名なんだ。先輩たちはもちろん、なぜか事務方までもがイカツイ人が多い。


『おい、ピート、ヒゲは生えるようになったか?』

『ピートくん。肉、食ってるか?』


 なんて声をかけられちゃう。ヒゲは生えて来ないし、肉は食ってます。


 整列の時に壁のような先輩たちに囲まれると、自分が白アスパラガスになったような気分になる。だから母ちゃんに頼んで、パスタもスープも大盛りにしてもらってる。


 それなのにさぁ……!


 何度か現場にも出たけれど、街の人たちにも『坊主、頑張れよ!』とか『微笑ましいなぁ』なんて言われて正直ショックだった。


 せっかく憧れの警ら隊員になったのに、『僕が守ってあげられる存在』なんて、どこにも見当たらなかったんだ。


 そこへ来て、深い事情があって保護された小さな女の子の登場だ。僕は俄然(がぜん)張り切った。


 まず、僕の妹の着られなくなった服を一式差し入れた。隊長が言うには、とても喜んでくれたらしい。


 女の子の名前はエルシャちゃん。


 隊長が連れてきた時は、二週間ポケットに入れっぱなしのハンカチみたいだったけれど、次に会った時にはフランス人形になっていた。妹のお下がりの服が、別物みたいに上等に見えるから不思議だ。


 次に母ちゃんに頼んで、ちっちゃい子が喜びそうな焼き菓子を作ってもらった。これは直接僕から渡した。


 エルシャちゃんは少し頬を赤らめて『ありがとうございます。嬉しいです』と言って、受け取ってくれた。


 家にあった古い絵本を持って来て読んであげたり、簡単な計算を教えてあげたりもした。


 エルシャちゃんは、びっくりするくらい賢くて、僕の教えることがないくらいだったんだけどね。


 それでも『絵本を読んでもらったの、母様が亡くなって以来です』なんて言いながら、嬉しそうにしてる。


 ほんと、いい子なんだよなぁ……。


 気づいたら僕は『頼れる警ら隊員』じゃなくて、“世話焼きの兄ちゃん”になっていた。おかしいなぁ。


 でもエルシャちゃんに、デレデレになってるのは僕だけじゃない。隊長を筆頭に、隊員はみんなエルシャちゃんを眺めてほっこりした顔になっているし、近所のへそ曲がり医者のハドソン先生も用もないのに詰所に顔を出している。


 驚いたことに、堅物取り調べ官のエバンスさんまで、エルシャちゃんを見る目が優しいんだよ。あの人、すごい愛妻家で、早く家に帰ることしか考えてなかったのにさ。


 実は今、隊員たちが休憩時間にノコギリや金槌を手にして、内緒でエルシャちゃんのベッドを作ってる。いつまでもハンモックじゃ可哀想だからね。


『お姫様みたいなベッドにしようぜ!』とか、『くるくる回るやつも作るか?』なんて言ってる人もいる。オルゴールメリーのことみたいだけど、エルシャちゃんは赤ん坊じゃないからなぁ……。


 ずっと詰所にいてくれると良いなと思うけど、それが子供の幸せかと考えると違う気もする。


 どんな形でもいいからエルシャちゃんが、ずっと笑っていられるような暮らしをして欲しいなって、心から思う。僕に出来ることがあると良いんだけど。



 僕はピート。西区八番街警ら隊員だ。


 僕の仕事は悪人を捕まえることだけれど、悪人なんかいなくて、僕らの仕事がないような世の中になるのが一番だと思っている。


 でもそんなのはあり得ない。力の強い者が、弱いものを踏みつけて得をする。それが現実だ。でも、だから僕ら警ら隊は身体を鍛えるんだ。腕力で助けられる人なんて、ほんの少しだってわかっていても。


 せめて僕らの腕力が及ぶ人たちだけでも、力づくで引っ張り上げたいと思うから。


 エルシャちゃんの事情は、たぶん腕力では解決出来ない。隊長やエバンス取り調べ官に託すしかない問題なんだ。


 だから僕は、今日も腕立て伏せをする。


 少しでも筋肉を付けて、僕の腕の長さの及ぶ範囲の人を守るために。


 僕はピート。西区八番街警ら隊で、一番の新米隊員。五年後には筋肉もりもりの“本物の”警ら隊員になる予定の男だ。




読んで頂き、ありがとうございます。作者、ついこの間まで超低空飛行作家だったため、こんなにも読んで頂ける状況に『あれ、夢かな? 痛い……』みたいになってます。


溢れるほどの感謝を込めて、いつもの定期更新に加えて、ゲリラSS投稿やります。一応、第三弾まで予定してますので、ぜひ読みに来て下さいね!



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遅ればせながら、サンドイッチ・フランス人形問題。 エルシャ前世が記憶している英国風世界作品の中で、 現状エルシャもピート君も日本語を話している訳ではないので、日本人読者にイメージしやすい自動翻訳です(…
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