作業場の男
「お前は今日から、ここで一日十時間の労働をする。逃げれば即刻死刑、抵抗すれば同じだ」
吐き捨てるようなその声に、透の喉が乾く。周囲の視線が突き刺さる。年齢も性別も様々だが、全員がくたびれ果てた表情をしていた。
澪が立ち去ると、代わりに現れたのは、背中に無数の傷跡を持つ大柄な監視役の男だった。片目に眼帯をつけ、声は低く、重い。
「新入りか。名前は?」
「……霧島透です」
「透? ……三日持てばいい方だな」
そう言って、男は無造作に分厚い作業服を投げ渡す。透が袖を通す間もなく、近くの列に並ばされる。目の前の作業台には、異様な機械部品が山積みされていた。どうやら能力を封じる装置の部品らしい。
「一つでも壊せば、お前の首も飛ぶ。理解したか?」
頷くしかなかった。金属の打音が、透の耳を支配する。時間の感覚が薄れていく中、背後から声がした。
「お前、新入りだろ。長く生きたいなら、目立つな。ここじゃ能力なんて何の役にも立たない」
振り返ると、やつれた青年がいた。年齢は透より少し上だろうか。彼の瞳には諦めと、ほんのわずかな光が同居していた。
「俺は晴久。……まぁ、そのうち分かるさ。この作業場にも抜け道があるってことをな」
そう言い残し、宗方は再び黙々と手を動かす。透の胸に、小さなざわめきが生まれる。
抜け道...?一体何のことなのだろう。そんなことを考える暇はなく透は仕事に取り掛からなければならなかった。