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第3.5話「ぽちっとな」

『目標──「ダンジョン壁」厚さ3000mm、使用魔力30』

 ……………発破しますか? Y/N




「え? いや……?」


 え?


「……は、『発破』?」

 

 え、ええ?!

 い、いま、ステータス画面になんか出たような────?


 グリグリとチンピラによって壁に押し付けられるマイトであったが、そのわずかに見える視界越しのステータス画面にハッキリくっきりと、




 『発破しますか?』と、表示されている……。




 え?

 え?

 えええ?


「えええええええええ?」


 は、

 発破?


 発破って…………え? ええええええええええええ?


 発破って、



 あ、あ、あ、あ、あ、あの発破(・・)かよぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!




  ⇒「Y」 カチッ




 思わず、ポチるマイト。

 すると、


  ピー。

 『カウトダウンを開始します』


 途端に、ステータス画面が反応して、チカチカと点滅開始……。


(──は? カ、カウントダウン開始って、ちょ、ちょっと!)


「ああん? 何ブツブツ言ってんだよ、てめぇ? ついにイカれたか?」

「うけけけ、兄貴がイジメすぎたんですよ」


 ちっ。

「しょーもねー。もういい────殺しとくか?」

 据った目つきで恐ろしいことをサラリというチンピラ。

 しかし、マイトはいまそれどころではなかった。

 なぜなら……。



 『危害半径からの退避を勧告します』



「ちょ!?」


 き、危害半径って?! ちょぉおお!



 え? つーか、チンピラ君、殺すの──? マイトさんを?!

 いや、え? 危害するの?! 半径を?!


 え? は? え?

 どっち、え?!


「えええええええええええええええええ!!」


(いや、どっちもヤバいっつーの!!)


 そうだよ!

 どっちもやばいけど、そもそも、なにこれ────なんなの、ちょっとステータス画面さーん!!


 『カウントダウン開始────60 59 58』


 ちょ!!

  ちょっとぉぉおおおおおおおおおおお!!


(始まってる!! なんか始まっちゃってるぅぅうううう!!)


 そう言うことじゃないからぁぁ!


「ちっ、何をぶつくさと。あーめんどくせぇ。おい、暴れるんじゃねぇぞ! お前らはそっち抑えてろ、──衛兵にバレるとやべぇが、いっそのこと(ノド)をガバァっと、」


 いや! ちょ!

 そ、それ(・・)どころちゃうて!!


 カウントダウン始まってるがな!!


 っていうか、

 カウントダウンってなによ、カウントダウンって──!!


 『44 43 42 42──』


 あ、

  あかん!!

   あかんあかん!!

    減ってる減ってる! カウント減ってるぅ!!


     ……これ。多分、あかんやつ(・・・・・)や!!



 しかも、よくよく壁をみてみたら、なんか押し付けられてた所が赤く光ってるし、ピッ! ピッ! ピッ! とか言ってるし、

 奴らには見えてないみたいだし、そもそもカウントが減っていくしぃぃいいいいいい、ああああああああああああああああああああ、あと30秒ってどんだけぇぇえええ!!



「ひ、ひぃぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

「どわ!」「んな?!」「な、なんだぁ!?」


 ガバッ!!

 その日、その瞬間、その刹那。


 驚くチンピラの顔など見もせず飛び上がるマイトは、いままでの人生で一番の、恐怖と焦りとその他諸々を感じて、

 全ての力を出し切る積もりで、駆けだした!!


 その反動、その跳躍、その脱兎!!


 親が死んでも知らんとばかりに駆けだした!!

 それはもう、それまで好き放題にマイトを甚振っていたチンピラどもも、唖然とするほど。


 一瞬、マイトの服を掴んで止めようとしたがもはや遅い。

 むなしく空を切る手を振りほどき、マイトは駆け出すと、脇目もふらずに後へ後へ! とにかく、光る壁面から一国も早く!!


「ひぃ、ひぃ、ひぃ、()ぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」


 だがそれでも、もう遅い! とにかく初動が遅くてどうしようもない!!

 だって、カウントダウンは残り──10秒!!


「あひゃひゃひゃひゃひゃぁぁぁああああああああああああああああああ!!」


 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!

 よくわからんけど、多分ゼロになった瞬間、死ーーーーーぬーーーーーーーーーーー!!


 ──ドダダダダダ!


「な、なんだぁアイツ──」

「だからビビらせすぎっすよ──ん?」


 くんくん。


「んん、なんだぁ、この臭い──焦げ臭いような?」

「そういや……ん?」「屁でもこいたか?」


  9 8 7


「っていうか、な~んか、シンとしてねぇ?」

「そういや、鳥も鳴いてないっすね────」

「それに、なんか嫌な予感が……」


  6 5 4


「あ、あー……たしかに、こう──首筋がぞわぞわするな」

「あ、するッス、するッス──なんか、ぞわぞわーって。そして、出来ることなら、い、一刻も早くここから……」


 チラリ。

 なんとなく顔を見合わせるチンピラたちは、コクリと頷きあうと、


「「「に、逃げた方がい──────」」」



  3 2 1 いま!!




「へ?」「は?」「ほ?」



 キュィィィィィイイイ……!


「「「壁がなんだか光っ────」」」





  ──ズッッッッドォォォオオオオン!!





「「「(ぎゃあああああああああああああああ!)」」」

「どわぁっぁあああああああああああああ?!」


 背後で爆音とチンピラの悲鳴!

 そして、吹き付ける熱風に思わずマイトさんの口からも悲鳴が漏れる。


  グラグラグラ!!

   ビリビリビリ──!!


 そのあとから、凄まじい爆音と爆風と振動とぉぉおお!!


「な、なんだぁ?」


 …………チラリ。

 見なければいいのに、悲鳴と爆音が気になり──全力疾走中のマイトさんが振り返れば、その背後には真っ赤な炎が迫りに迫る!!


   ゴゥゥ!!


「…………おう、ジーザス!!」


 なんということか。

 ステータス画面のカウントダウンが0を指した直後に、とてつもない爆発が振動を伴って現れた。

 しかも、あろうことかその余波がマイトにまで迫りくるのだ!!


 ──それも、かなりの距離を走って逃げたはずのマイトを追って!


「いやいや! ちょっとちょっとちょっと。い、威力ありすぎでしょぉぉお!」


 そして、

 追いつかれた爆風に包まれるマイトの肌も、なぜかジリジリと焼かれていく。


「──あっつ!!」


 なんでぇ?!

 これマイトさんのスキルちゃうのん?!


 ぶわっぁぁああああ!! と押し寄せる熱風と瓦礫に驚愕!

 自らのスキルの産物だと言うのに、無敵仕様ではないらしい!


「あぢぢぢぢぢ!」


 ジリジリと肌が焼かれる感触に、嫌な臭い!

 しかも、服が溶けていくほどの熱量!


「じょ、冗談だろ?!」


 自分のスキルで死ぬとかシャレに────なんねんぇぇぇえええよぉぉおお!


「うぉぉおおおおおお────おおぉぉ、あそこに窪みがぁぁ……とぅ!!」


 幸か不幸か走り切った先には、ちょっとした地面の起伏!!

 そこにめがけて人生一の疾走を見せたマイトは、飛びこんで見せる!


 それは、まるで洋画の一場面のように、足先まで爆風が迫るギリギリをぉぉおおおおおお……!


  「伏せろぉぉおおおお(ヒット・ザ・ダァァト)!」

   ……(ミー)



 ドォォオオオオオオオオオオオオオオ────!



 転げるように起伏に伏せたマイトが、思わず見上げる空には真っ黒な岩盤と紅蓮の炎とグレーの粉塵!!


 そして、時々──ケツから火を噴いたチンピラどもが「「「ほげぇっぇえええ!」」」とか言いながらグルングルンと回転してぶっ飛んでいく!!


 つーか、チンピラ以外にも、なんか空からぁぁぁああああああああ!!

 黒いのが、

「──ふ、ふってきたぁぁぁあああああ!」


 おあわぁぁっぁあああああああああああああ!!



  ドスン、ドスン、ドコォォォオオオン!!



「あわわ、あわわわわわ、あわわわわわ…………」


 マイトめがけて次々に降り注ぐのは強大な岩の塊となったダンジョンの壁!


  そして、

  壁! 壁! 時々、チンピラ!!


 ズシンッ、ドスンッ、ベチャ!


 それらを寸でのところで全部交わしきったマイトの股間すれすれに、まさに最後の瓦礫が降ってくると、ドスンッ! と突き刺さる──。


「ひ、ひぃぃぃ……い、生きてるぅ」


  しゅー

   しゅー


「じ、じーざす……」


 ジョジョジョー……。


 最後に突き刺さった破片に浸み込むマイトの失禁。

 ……って、そりゃ漏らすわ!!


 濛々と立ち込める煙、立ち上る湯気、


 そして、

 舞い上がる土塊と、吹き飛ぶ岩石と、それが直撃してぺちゃんこになったチンピラと────……その先で、ぽっかりあいたダンジョンの出口……。



 って、




「ええええええええええええええええええええええええええええええええええ」


 ば、爆発したぁぁああ?!


「──ええええええええええええええええ!」


 もっかい言っとく。


「ええええええええええええええええええええええええええええええ!!」


 爆発したぁぁああああああああああああああああああ?!


  したぁぁああああ!?


   したぁぁあああ?!


「は、『はっぱ』って……」


 は、

 は、は、

 「はっぱ」って、「はっぱ」って、


「──『葉っぱ』じゃなくて、『発破(はっぱ)』かよぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」




  異世界召喚から数年たって、はじめてスキルを理解したマイトなのであった……。

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クラス最弱!ネタスキル「はっぱ」の覚醒〜一緒に召喚された皆は先に進み、ぶっちぎり雑魚認定されて3年間Lv1で放置されたけど、実はこのスキル最強でした〜

お読みいただき、ありがとうございます!


↑の『☆☆☆☆☆』評価欄↑にて


『★×5個』で、応援いただけると嬉しいですッッ!

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