第37話「レベルアップ」
「──で、いまいちだったのね?」
「はいすー、はいすー」
レイラさんにはたかれて平謝りのマイト。
よく見ればいつも通りに顔パンパン……。
べちっ!
「普通に答える! もういいから」
「はい、レイラ様の言う通りでして────あの、そろそろ解毒剤を」
あ。
「……ほ、ほら。腕出して」
「ちくっとしないでー」
ちくっ
「あいだー!」
「まったく、ほら、解毒剤飲んで──」
あ、どーも。
「……って、飲み薬かーい!! 解毒剤は飲み薬なんかーい!!」
じゃなんだよ、さっきチクっとしたの!!
「針」
「針かー……って、それは知ってるっちゅうねん!! なんの針やねん?! なんの液体をいれたんだよ!!」
にこっ
「ニコッ! じゃねーよ!!」
空気か!
空気入れたのか!!
「もー、うるさいわね。話が進まないわよ──あー、鼻が痛い」
「それはホントゴメンなさい」
いや、もうね。さっきレベルアップの高揚感で、少~しだけレイラちゃんといい雰囲気になってたんだけど、なんかこう──ステータスの上昇タイプがあまりにもショック過ぎまして──。
はい、思わず、くるくる回ってるところで手を放しちゃいました──はい、猛省してます。
「ふんっ!……で──それはそれとして、ステータスの上昇率が戦士系だったのね?」
「あ、はい」
「……ということは魔力が上がりにくいってこと?」
「そうなりますね……」
正座したまま、おずおずとレイラちゃんに絆創膏と塗り薬──そして、ポーションも差しだしちゃう。
彼女の可愛い鼻が赤~くなって、ちょっと鼻血のあと──ありゃー痛いわ……。そりゃー怒るわ。マジさーせん。
「ありがと──塗り塗りっと。……でも、いいじゃない。筋力が上がれば装備できる武器の幅も増えるわよ」
「それはそうなんだけどね」
元々の予定は一人でもレベル上げができるように魔法装備を手に入れることだったけど。
今となっては、そこまでこだわりはなくなっていた。
……なにせスキル『発破』は思った以上に優秀で強力だった。
そのおかげで、なにも直接攻撃せずともモンスターを倒せる術を見つけることができたし、そうなってくると、今必要なのは、武器を装備できるだけ筋力よりも、効率よくスキルを扱える魔力ということになる。
つまり、今のマイトは魔力が欲しかったのだ。
主にマナポーションが飲みたくなくてね!!
……だというのに、今回のステータスUP率(※戦士系統)はこのありさまだ。
そりゃ~、がっくりもくるというもの。
「まー。そればっかりはどうしようもないわよね。……でもほらっ! もっと頑張ってレベルをあげれば少しずつでも魔力は伸びるんでしょ?」
「それはまぁ──うん」
『ゼロ』というわけでもない。
一番低い時の上昇幅はたしか「+1~2」だ。
ゲームのように、リセットマラソンできない以上、『+2』を求めて何度もやり直すことはできないので、1~2の上昇は完全に運頼みとなる。
……ま、
「最悪は、自由に割り振れるステータスポイントもあるから、それを振って最大『+3』だな」
「ふーん、悪くないじゃない」
んむ?
そうかな?
「……そうかも?」
むむ、言われてみれば確かにそうかもしれない。
魔力のことはさておき、それ以外のステータスはそこそこに優秀な上昇率である。
なにより、筋力と体力がそこそこ上がりやすいと言うことは、こと生存にだけ焦点を当てれば中々優秀といえる。
なにせ、『発破』だ。
そもそも、『発破』が異常なくらいに強い。
だからこそ、こんな制約になっているのかもしれないけど──なんにせ、ダンジョンの壁をぶち抜けるスキルだ。しかも、応用で武器にもなる。
それに、使い勝手の点でいえば、「発破」は接近戦を強いられることが多いため、ある意味肉体系ともいえる。
たしかに、筋力や体力がなければこれを使いこなすのは難しいだろう。
そもそも、マイトの使い方がおかしいだけで、連発するようなスキルでもないしな……。
「ふーむ、なるほどなー」
「そうそう、やり方次第よ。なにより、ここの適正はだいたいLv25前後だし──そこの魔物を低レベルで一撃で倒せるスキルなんて優秀よ? そりゃー苦労して当然と思わなきゃ! そもそも、マイト、あんたまだLv2なんだしそんなもんじゃないの?」
な、なるほど。
言われてみればたしかに……。
「そっか、そう言う見方もあるのか──あれ? もしかしてレイラちゃん、慰めてくれてる??」
む、むが!!
「そ、そそそ、そんなわけないじゃない!! あ、アタシとあんたはほら──ビ、ビジネスパートナーみたいなもんだしぃ。お、落ち込んだままは困るのよ!」
「はは、レイラらしいなー」
ま、お金は稼がせてあげてるしね。
──なでりこなでりこ
「き、気安く撫でんな!!」
あはは!
かわいいかわいい。
「しかし……なるほど。それはさておき──ここでなら、だいたいLv25まではあげられるのか」
「まー、25前後ね」
ふ~む。
とすると──。
「え~っと上昇幅が1~2の+1だから、2~3の×23として──……だいたい46~69の魔力上昇が見込めるのか」
「あらま、計算はやいわね」
舐めんな。
こちとら、元高校生やぞー。……いや、一応今も、か?
……っと、それはさておき。
「今が魔力34だから、あとで+1するとして35……」
ブツブツ。
「レベル25の時で、魔力は81~104か」
ふむ。
ふむふむふむ……!
「あ、悪くないな──」
「でしょ。まぁそれまではマナポーションで凌ぐしかないけどね」
それは言うなよ……。
がっくし──。
「まーまー。今日のところはマイトでもモンスターが倒せるってわかっただけでも儲けものじゃない」
「むー。それはまぁ、うん……」
「でしょ! それに魔力が30以上あるなら、まだまだ余裕でしょ?」
「まーね」
ぶぅぅうん……。
言われるままに、試しにステータス画面を呼び出し、転がっている板壁を手にして発破のスキルをかける。
そして、それに発破をかけて。一時中止しての、時短で1~2秒にセット。
あとはこれをモンスターにぶつけるだけ。
即席手榴弾の完成──……なるほど、簡単といえば簡単だ。
少々手順があるけど、魔力「1」であの威力なら大したものだろう。
大型のモンスターに効くかどうかはわからないけど、小型のモンスターなら十分に倒せる威力だ。
「……うん、そうだな」
「でしょー。じゃ、次もいく?」
パンパンッと腰の埃を払って起き上がるレイラ。
「──お? いいのか?」
「もっちろんよ──サクサクレベルあげして、残りのダンジョンも探索しましょ」
にっこり。
「はは、レイラは前向きだな──ダンジョンのほうはあんまし乗り気じゃないけど。ん……よし、レベル上げすっか」
「そうこなくっちゃ!」
綺麗に笑うレイラが手を指し伸ばす。
それを素直に受け取ってマイトは次なるモンスターを倒す決意を固める──。
よーし
やるぞー!
「「おー!!」」
その日、午前中一杯を使ってマイトはモンスターを狩りに狩りまくった。
そして、午前中だけで、レベル5にまで上昇──かなり順調に成長していくのであった!!
※ 大名舞人のレベルが上昇した ※
※ 大名舞人のレベルが上昇した ※
※ 大名舞人のレベルが上昇した ※
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L v:5(UP!)
名 前:マイト
職 業:冒険者
スキル:発破Lv1
取得済:Lv1「壁面発破」
●マイトの能力値
体 力: 15⇒27(UP!)
筋 力: 25⇒43(UP!)
防御力: 20⇒39(UP!)
魔 力: 34⇒39(UP!)
敏 捷: 18⇒31(UP!)
抵抗力: 11⇒15(UP!)
残ステータスポイント「+1」→「+4」(UP!)
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