第35話「レベル上げ」
うぉぉぉおおおおおおおん……!!
ぎゃーぎゃー!!
再びの『エルフの古の山塞』──。
予定通り、朝までぐ~っすり休んで装備を整えた後、レベルアップとダンジョントライに向かい──いま到着しました。
そして、入口にて満載の装備や物資を下ろしたマイトさん達は、いったんそこで最終確認。
あれよし、これよし、指さし確認。
「「ポーション!」」
「よーし!」
気合たっぷり、ポーション満載!
レベル上げには怪我が付き物!
いえー!!
次は、
「「お弁当!!」」
「よーし!」
今日は朝かダンジョン、お昼を跨いで、夕方まで挑戦予定。
もちろんオヤツの時間もあってそれどれ銅貨5枚まで!!
メニューはサンドイッチと、おーにぎり~!
いぇー!!
次は、
「「予備の武器!」」
「よーし!」
そして、大事な予備の武器!!
以前のコボルドソルジャー戦の轍を踏まぬように気を付けて、しっかり手元の武器を用意。
とくにサイドアームは不意の時に無くさないように肌身離さず!!
レイラちゃんも、予備のシリンジャ―ナイフをもう一本。(※マイト購入)
おっぱ……は谷間がないので、それを右脇に逆さにするし──あべし!
……さーせん。
さらには、内ももに昨日の戦利品の苦無をバンドで巻きつける。
マイトさん?
マイトさんは、木の棒だよ!! 前みたいに『ダンジョン壁』タイプの木の枝でもいいけど、今のところそれらしいのはないので、いいのがあったらゲットするってことでひとまず市販(?)の木の枝を挿して置く。
ま。それよりも忘れちゃいけないのが、この「コルトネイビィ」──と、その予備弾倉だ。シリンダーごと交換するそれを、あらかじめ火薬とパーカッションと弾薬を詰めた奴を作ってポーチにしまっておく。
銃はパーカッションと火薬に数に限りがあるし、音が目立つからあんまし使わないようにしたけど、レベルアップとかでどうしようもなくなったら使おう。
扱いにも慣れとかないといけないしね。
──これで万全、
イェー!!
次に、
「「ファスト・ランの巻物!」」
「よーし!」
うんうんこれこれ。
何かあったときの脱出手段。普段は街への移動くらいに使うけど、マイトさんのパーティ(?)には魔法使いがいないので、これは貴重な一品です。
緊急時には迷わず使おう──!
イェェエ!
ラスト、
「「最後にマナポーション!」」
「よー……し、」
そう。これぞマイトさんを最強(?)たらしめるスーパースキル『発破』の要のマナポーーーーーション!
誰が作ったかあ、味を確かめたのか、そして、連続で飲むことを考慮したのか小一時間はと問い詰めたくなる世紀の大発明マナーポ~~ショ~~ン!
これがなきゃ始まんなーい!!
わーぃやったね。
い~ぇ~ぃ……。
……がっくし。
「って──ちょっと!? ど、どうしたの? これからって時に?!」
「いやね、うん……」
意気揚々と最終チェックを楽しんでいたマイトさん。
突然の下降っぷりに元気なレイラちゃんもびっくり仰天──。
……ごめんね急にテンションおとしちゃって。
でもね、うん。
これ見たらテンション下がるわー。
「えー……でも、必要なんでしょー?」
なんだよそのノリ。
TVショッピングか!
「まー、そーなんだけどさー」
──はぁ~。
「レイラちゃんや、これいるぅ。これこんなにいるぅ?」
こんなに────……そう、木箱ギッシリのマナポーションですけど、これ、いるかなぁぁ??
「いやー。いるもなにも、ないとダメって言ったのマイトじゃん」
「……そりゃ、言ったけどさー」
なんか、小さいけど、木箱にギッシリですよギッシリ!
FPSゲームにでてくる『弾薬補給箱』か!──ってくらい詰まってます、はい!
「しょうがないじゃない。ここのダンジョンの壁を吹っ飛ばすのに、最低7~8本はいるんでしょ?」
いるよ、
いるけどさー。
「これ、すっごい味なのよこれ?」
飲んでみる?
キュポッ!
「……うわ、くっさ!! あ、開けなくていい開けなくていい!!」
「そんな全力で否定しなくても──……俺これ飲むんだけど?」
場合によっては一回で8本まとめてー。
「あーうん。アンタそれ飲むときはなるべく離れてよね──色々危険だから」
「ちょっと、ひどくなーい!!」
YOUにかけたのは事故だよ事故!!
「いや、狙ってたわよね? そこに君がいるから──とか言ってたわよ!」
「……言ってません」
二コリ
「いや、言った!! 言ったから──アタシ聞いたからぁ!……もう、とにかく絶対アタシにかけるの禁止!」
「えー」
つーか、字面凄いな……。
レイラにかけるの禁止か──。
「……なに想像してんのよ、まったく──それよりもほら、確認作業も済んだんだからそろそろ行くわよ」
はーい。
「あ、でも──今日は特に飲む必要ないんじゃ?」
「は? なんでよ?」
なんでって……。
「いや、ほら。今日はレベルアップする日なんでしょ?」
「はー? 何言ってんのあんた。……そんなのうまくいけばよ? だいたい、まずは昨日行けなかったダンジョンの残りを探索するんでしょ。だいたい『どこが、うまうまか確認じゃー』って言ってたのマイトよ?」
うぐ……。
言ったっけ────……言ってたな、うん!
「そ、そうだけど──ほら、そういうのもレベルあがってからでもよくない?」
「別にいいけど、そんなに簡単じゃないわよ?」
え? そうかん?
「そーよ。魔物だって本気で殺しに来るのよ? そんな都合よくいくわけないじゃない」
そりゃそうだけどさ……。
「ほら、なんていうかこう──姫プレイみたいに、レイラさんがこう、魔物をフルボッコにしていい感じのところを俺がとどめを刺すとか、どっスか?」
「なによ、いい感じって──まぁ、言いたいことはわかるけど、それでも滅茶苦茶時間かかるわよ」
えー。
「いや、『えー』じゃなくて──いい? マイトってばほーんと雑魚なんだから、瀕死の魔物相手にも苦労するわよ。だから、一日でそう簡単にはレベルあがらないと思った方がいいわよ」
うげ!
ま、マジかよ……。
「あ! だったら、いっそほら──もっと雑魚の多い所とかさ」
ここって、意外とモンスターつよくな~い?!
「アンタがいいなら、それでもいいけど──結局は同じよ? それに安全な場所でやるなら、そもそもモンスターの数だってそんなにいないし、時間めっちゃくちゃかかるけどいいの? だいたい、そんなんじゃいつまでたってもレベルあがらないんだからね? それに、瀕死の魔物を倒すのもその『木の棒』でしょ?……マジで日が暮れるわよ」
うぐ……!
一気に、言いたいこといいやがって……。
だが正論だ。
たしかに、チマチマ弱らせた「レッサースライム」とか「大ネズミ」を倒していただけだといつまでたってもレベルは上がらない。
モンスターは一人で倒して初めて経験値が大幅に貰えるのだ。手伝ってもらったときのそれは微々たるもので──それが雑魚中の雑魚モンスターなら雀の涙レベル。
……うむ、たしかに日が暮れるな。
それに街中じゃそれほど魔物もいないしな──。
なにより、
この木の棒じゃなー。
ジッと見つめる手の中の『木の棒』──うん、無理だな。
「そーゆーこと。だから、不人気狩場でレベル上げが一番理にかなっているのよ──それで、人気がなくて、ダンジョンがあって、アタシでもなんとか護衛できるのが、のろまなモンスターが多いここなの。……まぁ、そっちの『こるとねいびぃ』ならもっと効率いいんでしょーけど、人に見られたくないんでしょ?」
レイラがそっちと指さすのは、懐にしまったコルトネィビィ。
「……あぁ、まーな。それに雑魚狩りで使うようなもんじゃないしな──なにより音が、ね」
発破しておいてなんだけど、銃はうるさい。
威力だけをみれば、この世界においても銃は強力で、さらにはこの世界の武器と認定とされていないせいか、推奨筋力が必要なくマイトでも扱えるのは優秀だといえる。
……しかし、いかんせん銃だ。
発砲音は目立つし、
弾数だって無限じゃない。
まぁ、『魔塔主』に頼めば、弾や火薬くらいはまた融通してくれそうだが、あんまりしょっちゅう頼むのもなー……。
早々に呼びつけていいような相手じゃないらしい。
……なんせトーダイの教授クラスですかなね! きょーじゅ! 東大の!
──とはいえ、本当に困ったときは、ちゃんとお金を払って買うつもりではいる。
無料でええぞー、とか言いそうだけど。そこは、ね。きっちりと──ね。
「何ブツブツいってんの?」
「いや、頭のいいブルマー女子について少し──」
はぁ?
「アンタそう言う趣味?」
「ねーよ!!」
嫌いじゃないけど、ねーよ!!
つーか、ぶるま知ってんのかよ!
「そりゃ、一時期流行ったもん」
「はやったんかーい!」
誰か知らんが、召喚者の奴……趣味全開だな。
だが、いい。許す──あれは悪くない、うん。
レイラちゃんがブルマか──……うん、いいんじゃなーい!
──ゴンッ!
「あだ?! な、なんでぇ?」
「なんでもよ!──いいから早く行くわよ。まずは、お試しにダンジョンの残りやっちゃう?」
「いや、レベルアップからおねがいしまーす」
やだよ!!
──なんで朝からいきなりマナポーションチャレンジから始めるのよ!
こうしてマイトたちは相変わらず騒がしくしながらも、まずはレベルアップにチャレンジするのであった。