第41話 未承認スキル
近くで見ていた、ロイは、
「龍と合体、あり得ねぇ……」
「これも、今後実装される、新しいファクターの一つですよ」
アイギスは、眉一つ動かさず、冷静にロイに語り掛けた。
「へへっ、サムスの野郎、面白ぇこと考えやがるぜ」
「属性も、現在の四属性から、新たに五属性を追加することで、ゲームバランスの抜本的な改革をします」
「属性もかよ。こりゃ、混乱するな」
そう言ったロイの表情は、新しい玩具を買い与えられた子供のように、瞳を輝かせていた。
「無論、今の私にも、その他、幾つかのスキルを先行して付与されています。クラウド殿が、全く知らないスキルも、ね」
「ほぉ、楽しみだな」
アイギスの言葉に臆することなく、さぁ、出せと言わんばかりに、ロイは、アイギスに好戦的な視線を向ける。
「貴方と言う人は」
アイギスは、ロイの好奇心と、期待が入り交じった表情を見て、この人には、逆立ちしても敵わないと、心の底から感服していた。
「どうした、ええ?」
「分かりました、存分に味わいなさい」
ロイの催促に、アイギスは、躊躇することなく、スキルを発動した。
アイギスを覆うように、全身から、白い水蒸気が沸き立つと、アイギスの姿が、鏡のように、もう一つ出現した。
地面に降り立つと、もう一体のアイギスは、無言でロイを凝視する。
「オーバーラップ・イリュージョン」
アイギスは、スキル名を名乗ると、半身が起動して動き出す。
「差し詰め、分身の術ってか」
「ただの幻影ではありませんよ」
アイギスが構えを取り、ロイとの距離を縮めると、半身は、蒸発するように消え、ロイの死角である背後に、瞬時に転移した。
「な!」
殺気を纏わない半身に、ロイは、目の端でその姿を捉えると、サイドステップで、慌てて距離を取る。
「まだ攻撃は致しませんよ、クラウド殿」
アイギスは、ウォーミングアップしながら、ロイを気遣うように微笑む。
その表情が、癇に触ったのか、
「調子くれてんじゃねぇ!」
ロイは、地面を勢いよく蹴ると、凄まじい衝撃が辺りを震わせた。
「前から言ってるだろ?過信は身を滅ぼすってな」
「ええ、耳にタコが出来るほど」
アイギスは、ロイの言葉に動じることなく、その言葉を受け止めると、
「ですから、一切の油断なく、貴方を倒しましょう」
アイギスは、深く呼吸し、精神を高めていく。
その目には、自身が言うように、過信を戒め、傲ることなく、目の前の壁を打ち砕かんとする、戦士の気迫が、その充溢としたオーラに宿っていた。
「へっ、相変わらずの堅物だな」
ロイは、その闘気を肌で感じ取ると、これから起きるであろう、戦闘をシミュレーションしようとするが、すぐに無駄であると悟り、思考を停止した。
全くの初見である戦いに、余計な頭脳労働は、無意味であった。
こうなったら、出たとこ勝負、今までのアイギスとの戦闘で感じた、己の勘を信じ、戦うしかない。
ロイは半身である、もう一体を極力無視して、本体であるアイギスに、重点を置く戦法に打って出た。
「さあ、始めましょうか」
「ああ、お互い、悔いの無いようにな。恐らく、これが最後の戦闘になるからな」
「ええ、私もそう思うます」
「勝つのは、俺だがな」
「……」
二人、いや正確には、三人の間合いが、互いのテリトリーを、侵食するように縮まっていく。
もはや、語る言葉は必要ない。
ただ、目の前の敵を討ち滅ぼす、その一点に、ロイもアイギスも、己の拳を、相手に向け対峙する。硬直した時間を打ち破り、最初に動いたのは、半身であった。
ロイの背中を襲うように、右中段突きを放った。
その攻撃が合図となり、二人は同時に動き出す。
「はぁっ!」
アイギスが、半身と、ロイを挟み込むように、同じように、左中段突きを放つ。
「見え見えだぜ!」
ロイは、ボクシングの選手のように、腰を深く落とし、ダッキングすると、先程まで、胴体があった場所に、二人の拳が空を切った。
一瞬の隙を利用して、ロイは低い姿勢から、水面蹴りを繰り出した。




