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そして事が起きた

妻に夢中のクロードの目から客観的に見ても、アイリス王女は美少女だとは思う。

(ジゼルが一番可愛いが)


タンザナイトの髪にアメジストの瞳、類まれなる美貌に苦労して暮らした日々が窺える控えめで謙虚な性格。

聞けば相当な苦労を強いられてきたらしく、女官長の話では全身に無数の虐待を受けた傷があるという。


そんな辛い日々の中で生きてきたにも関わらず、アイリスの性格は心根の優しい清い泉のようであった。


虐げられてきた影響で自分の意見を伝えることが苦手で相手の言われるがまま。

すぐに物事を諦め、ただ成り行きに身を任せる……そういった部分もあるのだが、クロードとしてはアイリスのおかげでなんとか泥の中に埋もれてしまった王家への忠誠心を見出すことができているのだ。


まぁだからといって専任に指名されるほど気に入られるのは有り難くないのだが。


そしてクロードがアイリスを良い娘だと評するように(ジゼルには及ばないが)、王城に勤める他の者たちもアイリスのことを好意的に感じていた。


そしてその好意がいつしかアイリスに対しての恋情に変わっていく者が続出した。


大概の者は側に近づくことを許されぬ王女へと羨望の眼差しを向けるだけなのだが、手を焼くのが王子たちの側近や近衛騎士や侍従を務める貴族令息連中である。


奴らはアイリスに懸想し、その恋情を隠そうともしない。


王女とはいえ平民の母を持ち、長く市井で暮らしていたアイリスの出自なら国王は家臣へと降嫁させるのではないか。

彼女を妻に望めるのではないかと一縷の希望を見い出し、虎視眈々と狙っているのである。


しかし彗星の如く現れた超絶美少女の異母妹を猫可愛がりする王子たちはそれが気に食わない。


アイリスはどこにも嫁がせない、などと勝手に明言しその無体に異を唱える令息たちとの冷戦が繰り広げられていた。


「……アイリス殿下へのあからさまな依怙贔屓、それをビオラ殿下が面白くないと感じられるのも無理はない」


クロードの上官であり、今は共にアイリスの専属騎士として任に就くサブーロフがそう言った。

クロードはその言葉に頷き返す。


「ええ。皆がこぞってアイリス殿下に懸想し、それを良しと思わない者たちとの軋轢が生じております」


クロードがそう言うと、サブーロフは大きく嘆息した。


「アイリス殿下に非はないが……全く困ったものだ」



そしてそんな中、とうとう事が起きてしまう。


第一王女ビオラの外祖父である筆頭侯爵がアイリスの侍女の一人を生家の借金帳消しを餌に抱き込み、その侍女に術式が仕込まれた魔道具を使って襲わせたのである。


その場にいた護衛騎士はクロードを含め三人。


皆、示し合わせずとも自らの役目を瞬時に判断して行動に移した。


侍女の側にいた騎士はその身柄を確保し、クロードは外部から更なる討手(うって)の侵入を防ぐべく部屋への入り口を封鎖してアイリスに結界を張った。

そしてもう一人の騎士が魔道具が発動する前に回収を……しようとしたが、アイリスに懸想する側近と侍従が我こそがアイリスを守らんと(いき)り立ち、その騎士の動きを妨害した。


「っ…なにやってんだっ!!!」


それを視認した瞬間、クロードは足を踏み出す。


しかし術の発動を防がねばと動くも時すでに遅しであった。


「くっ……!」


その魔道具に仕掛けられた魔術が何か分からぬ以上迂闊な真似は出来ない、出来ないが動かねばこの場の全員が犠牲となる可能性があるのだ。

クロードは全魔力を解放して術の相殺を試みた。



───ジゼル……!


その瞬間、脳裏に浮かんだのは愛しい妻の面影。


クロードは二度とジゼルに会えないのではないかという恐怖に駆られながらも己の務めを果たすべく魔力を解放し続けた。

魔術騎士とはいえど、魔術の無効化という高度な術の経験はないクロードは自分の持てる魔力で対応する他(すべ)はない。



そして、結果として術式の発動は間一髪で食い止め、

その場にいる全員を救うことができたが………



クロードは全魔力と言ってよい程の魔力を一度に放出したために急性魔力欠乏症に陥り、意識不明の重体となってしまったのだった。





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アルファポリスでご覧頂いている皆さま。

作者、鬼の撹乱により戴いた感想に返信出来ず申し訳ないです。





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