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プロローグ えらいこっちゃ……!

よろしくお願いします!

「ったく、()()?あなたは曲がりなりにもこのギルマン家に嫁いできた若奥様なんですからね?任地から戻られない旦那様の代わりくらいしっかり務めていただかないと困るんですよ?」


「あ、ごめんなさいっ、まだ貴族のしきたりとか全然わからなくて」


「ご婚約が成立して、そして結婚式を挙げられた時はまだ旦那様もただの平民騎士でしたから、奥様みたいな教養のない人でも奥方が務まる算段だったんでしょうがね。今や旦那様はご任地で武勲を立て騎士爵を賜った立派なお貴族様ですよ!しっかりして貰わないと旦那様にご迷惑がかかりますからね!」


「ご、ごめんなさい、頑張るわね」


婚家の下男に責め立てられながら、ジゼルは夫の叙勲祝いの礼状を必死に(したた)めた。




ジゼルは幼い頃から不遇な娘であった。

流行病で両親を一度に亡くし、父の実弟であった叔父に引き取られたはいいものの、従兄弟たちとは明らかに差別された恵まれない暮らしを強いられてきた。


着るものも食べるものも無いよりはマシというレベル。

国の政策で中等部まで義務教育は受けられたとしても「女に学問は必要ない」と言われ、それどころかメイドのようにこき使われて生きてきたのだ。


しかし十八の年に、叔父の勤め先の商店と取引のある騎士団から縁談が持ち込まれ、拒否権もないままにあれよあれよと嫁がされたのがこのギルマン家である。


ジゼルの夫となったクロード=ギルマンは平民ではあるが王宮騎士で、ダークブラウンの髪に深いブルーの瞳を持つ、長身痩躯の美丈夫だ。

本当にこんな綺麗な顔の人と結婚しても良いのだろうかと初顔合わせの日にジゼルは思った。


当時後継争いで王宮が荒れに荒れ、そのせいで多忙を極めていたクロードと次に会えたのは結婚式当日であった。


まだ一度しか会った事のない人物と結婚して上手くやっていけるのだろうかとジゼルは気掛かりだったが縁あって家族になったのだ、これから時間をかけてゆっくりわかり合えばいい。

そう思っていたのだが……。


結婚式の翌日、後継者問題の事態が急変。

夫となったクロードは騎士団からの緊急招集に応じそのまま登城。

そして第二王子ジェラルミン殿下の護衛騎士として避難先の地方都市へと行ってしまった。


そしてその避難先で数多くの刺客からジェラルミン殿下を守っただけでなく、首謀者であった第三王子が関与していた事を示す証拠を調べ上げたのだ。


その証拠品により第三王子は言い逃れも出来ず失脚、元々玉座になんの興味もなかったジェラルミン殿下は実兄である王太子に王位継承権破棄をしてもいいと告げ、恭順の意を表明した。

それにより後継者争いにピリオドが打たれたのである。


この件での功績が認められたクロードは一代限りではあるが騎士爵を賜り、ジゼルはいきなり貴族の奥方となってしまったのであった。


それだけなら虐げられていた叔父の家から抜け出した上に結婚した相手が大出世を遂げた、棚からぼた餅のラッキーなお話なのだがそうは問屋が卸さなかった。


後継者問題が片付き、ジェラルミン殿下は王都に戻ったというのになぜかクロードが戻らない。


騎士団からの使いの者の話ではジェラルミン殿下の命により、とある所用のために残っているのだと言うが……。

その所用とやらが終わればきっと帰ってくる。

きっともうすぐ帰って……。


しかしひと月が過ぎても三ヶ月が過ぎても半年が過ぎてもクロードは戻らなかった。


次第に元々はクロードの父に仕えていたという下男のドアンとキッチンメイドのダナ夫婦が、クロードが戻らないのはジゼルのせいだと言い始めたのだ。


生来大人しい性格で、叔父の家で小さくなって暮らしていた事により気弱な娘へと成長したジゼルがそれを否定する事も怒る事も出来ずにいると、夫婦は増長してジゼルを虐げるようになったのだ。


やれ旦那様は任地でご自分にもっと相応しい女性と恋仲になったのだとか、


やれ騎士爵を賜った事で平民の平凡な妻では嫌になったに違いないとか、


やれジゼルがこの家に居座る限り旦那様は戻って来ないだとか、

クロードが戻らないのは全てジゼルのせいだと言い立てる。


それに対しジゼルは、

「確かにあんなに見目の良い旦那様が私なんかが妻では不満に感じても仕方ない」

とか思って自分で自分を萎縮させてしまっていた。


そんな調子であるから下男夫婦は何かとジゼルに不遜な態度を取り続け、挙句の果てに嫌がらせ紛いに大量の洗濯物を運び足元が見えないジゼルに足をかけて転倒させたのであった。


「きゃあっ」


抱えていた洗濯物を盛大にぶち撒けてジゼルは派手に転んだ。


そしてその拍子に頭を強かに打ち、目の前に火花が走った。


その火花と同時に、ランプの明滅のようにチカチカと様々な映像がジゼルの目の前に現れる。


実際に見ているわけではない、

大量の記憶が洪水のように頭の中に流れ込んでくるのだ。

その記憶は“ジゼル”のものではない。

“ジゼル”だった前の“自分”の記憶だと、なぜか直ぐに理解できた。


そしてジゼルは全て思い出したのだ、


前世自分は()()ではない()()

日本という国の、

大阪という街の、

オバチャンというイキモノであったという事を……!



「えらいこっちゃ……」






───────────────────────





はじまりましたよ新連載。


ハジメマシテの方もそうでない方もよろしくお願いします!


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