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お食事中の方、これからだという方には、不向きな内容かと……

じゃあ、食事時にあげるなよ! って話ですよね。ごめんなさい。

時間をおかれるか、進路を変更してくださいませ。


 


 ゴックン ゴックン ゴックン


「ぷっはぁぁ! 暑い日の冷えた牛乳、サイコー! 生き返った〜。ハァァ」


 天井を見上げたまま満足していると、先ほどまで一緒に遊んでいた友達の顔が浮かんできた。


「……今さらなんだけど……今日の修行はちょっとやりすぎたかな? 過去一だったんじゃない? みんなよくついてこられるよね? さすがだわ〜」



 修行と称したへんてこな遊びを思いつくたびに、子分──友達を巻き込んで楽しんでいるねーちゃんが、腰に手を当てて牛乳を飲み、独り言を言い出した。

台所の椅子を並べて寝転び、漫画を読んでいた僕は目に入らなかったらしい。


 ちなみにそのへんてこ遊び、家での被害者は僕だ。

なので……ちょっと脅かしてやろう。


「どれくらいヤバかったの?」

「うわわっ!? びっ、くりしたぁぁ。ちょっとー、脅かさんでよ!」


 残念……タイミングがずれちゃった。牛乳を吹き出したら面白かったのに。


「脅かすつもりなんてなかったよ」


 堂々と嘘をつく。


「それで、今日はなんの修行をしたの?」

「あのね! マンホー────いやいやいや。よい子が真似するといかんから、教えられんわ〜」


 ……うん、相当ヤバかったらしい。そして、ニヤニヤしてるのがとても怪しい。

これ以上ヘタに聞いたら再現させられそうだ。逃げよう。


「じゃあいいや。僕、遊びに行ってくるね〜」


 あっ、逃げられた。外はすっごく暑いから、優しいお姉ちゃんが家で一緒に遊んであげようと思ったのに。外はほんとに暑いんだよ?

ボスにゃんだって、今日は暑いって泣いてるんじゃないかなぁ……

そうだ! 冷たい牛乳を持っていってあげよう!



 ▷▷▷



「おーい、ボスにゃ〜ん。ここに牛乳置いとくからね〜。飲んでね〜」



 激怒して、当たり散らすように突き刺してくる日差しを避け、風の通り道となっている軒下の草陰で昼寝をしていたら、すずの小さな猫なで声が聞こえてきた。


 んなぁ? なんだってぇ?


 声がしたほうへ耳だけクニャンと動かすと、潜めた声を裏切るような、ギシッギシッと、その存在を主張したがる音が耳に滑り込んでくる。


 ンッウ〜ン……なんだぁ? ありゃ解体した小屋の上を歩いてる音、か?

クワァァ〜……ま〜たなんか罠でも仕掛けたのかよ。この暑いのに、ご苦労なこった。そう何度も引っかかるかってーの。


 それでなくても、こちとら昼寝の────牛乳が、なんたら言ってたな? 

……とりあえず、遠くから見るだけ見てみるか。


 隣ン家の渡り廊下のハリに登って見てみると、確かに牛乳らしき白い液体がお椀に入って、廃材の隙間に隠すようにして置いてある。


 本当に牛乳かぁ? 絵の具を水に溶かしただけじゃないだろうな?

あのチビザルならやりかねん!

んー……でもまあ、廃材で足場が悪いから、すずが戻って来る前には余裕で逃げれんだろ。


 どれ、近くに行ってみるか。




 おお! マジで牛乳じゃねーか! やるときゃやるサル。それがすず!

けどよぉ……こ〜んな上等の椀を屋外に放置していいのかよ。まぁた怒られんぞ?


 しかしまぁ、怒られ損になったらかわいそうだからな。仕方ない、飲んでやるか。


 ピチャピチャピチャ


 うほぅ〜♪ こりゃ冷たくてうまいなぁ。たま〜にいい仕事すんだよな、あいつ。

にしても今回は、気前よすぎだろう。いくら冷えててうまいからって、こんなに飲めるかよ。


 そうだなぁ……ニケたちにも教えてやるとするか。




 しかし──

じーさんとこまで出かけた俺は、ニケたちがくすねてきた尾頭付きの焼き魚を、穴場だという涼みどころでご馳走になったあと昼寝まで貪ってしまい……

目が覚めたのは、もう夕暮れのこと。

それでも一応、なんのために今日ここへ来たのかを説明した。



「てなわけでよう、牛乳を飲みに来ねーか? って言いに来たはずだったんだけど……尾頭付きで吹っ飛んでたわ、ハハッ。どうする? 今からでも来るか?」


「いやぁ、やめといたほうがよかろう。こんな蒸し暑い日に外へ放置されたままの牛乳なんぞ、とっくに腐れとるに違いない。悪いことは言わん、お前さんももう飲まんほうが身のためじゃぞ。わかっておるとは思うがの、ヨーグルトなんかにはなっておらんからな?」


「へッ、当ったり前だろ? そんくらい知ってるっつーの。じゃあ、またな。尾頭ごちそーさん」



 ▷▷▷



 よーし! 夜の見回りも終わったし、腹具合もいいし、昼に結構歩いたから今日はもう寝るか。昼寝もちょこっとだけだったしな。


 «いや、がっつり寝てたよ»


 あっ、牛乳……は、いっか。どうせ飲めねぇだろうし──


「箱っ面兄ちゃん! 小判は? ッス!」


 ……ま〜た妙なことを……まあいいけどよ。もうツッコむのもめんどいし。


「よぉ、コッポ。こんな時間になんの────おい! お前まさか、牛乳飲みに来たんじゃないだろうな!?」

「違うッス! ヨーグルットッス! ハッキングもあってうまかったッス!」


 はぁ? ハッキング? えっ、ヨーグルトを!? こいつにそんな能力──あるはずないな。そもそもできんだろ。ヨーグルトをハッキングとか。

あっ……もしや、トッピング、って言いたかったのか?


 って、違う違うそこじゃない。ヨーグルトだ。ヨーグルト。

コッポの言うそれは、元牛乳が腐ったもので、共通点は酸味。だけのやつな。

けど俺が飲んだときは、トッピングなんてなかったけどなぁ……

ま、どーせ葉っぱかなんかが入ったん──


「チョコっす!」

「……チョコ?」

「ちょこっとじゃないッス! でっかいチョコっす!」

「言ってねーよ!」


 てか、今日のようなカンカン照りだと、牛乳はアイスからホットになっただろうから、もし本当にチョコだとして、溶けたらそれはホットチョコ。

それがトッピングだと勘違いするほど形が残ってたってんなら…………


 おいおいおいおい! まさかまさかまさかっ!?




 コッポを先に行かせ、後ろから腰を落としつつのぞき込んで見たら……



 ギャアァァァ! ややややっぱり! ジジジ《G》じゃねぇか!!

腐った牛乳にGのトッピングって! おっ、おま、お前──


 キュウゥゥゥ ゴロゴロゴロ〜〜


 うおっ!? こっ、これは;……これは;────

カミナリ! うん。カミナリ、だな! 


「ひゃー! お腹がゴロッピーッスゥ!」

「ちっ、違う違う、そうじゃない! そりゃあカミナリの──」

「だめッス! トイレはだめッス! 禁止ッス!」

「あっ! そそそうだ! 俺のシマでトイレはだめだ! ましてやそんなゴロゴロいってる腹でよぉ、絶対だめだぞ!! ほほほほら、さささっさと帰れ!」

「ひぃぃ! だだだだめッス! おおおお押し売りはだめッ──ピギャッ!? ッスゥゥゥ!」

「ニ゙ッ!? ギャアァァァ!! やっ、やめろぉぉぉ!!」



 ▷▷▷



 数日後──


「あら〜? おかしいねぇ。どこいったかねぇ」

「何が〜?」

「お椀がひとつ、ないとよね。知らん?」

「お椀? 知らな〜い。ばあちゃんとこじゃないと?」


 ヤバい! 忘れてた!!


「じゃろかぁ? まあ、足りてるからいいけどね」

「いっぱいあるもんね。あっ、わたしまぁちゃんとこに遊びに行ってくる」

「はいはい、気をつけて。遅くならんようにね」

「は〜い」





 まぁちゃんちはお隣さん。

今なら期間限定で庭を突っ切って行ける。


 庭を抜け、まぁちゃんちの解体された小屋の上を歩き、お椀の回収────



 ひっ!? ぎゃあぁぁぁぁ!!



 大っっっっっ嫌いな《ソレ》を目の当たりにして、恐れおののく。

二、三歩後ずさるも……このままにはしておくわけにはいかない。


 が。回収もムリ! 絶っ対ムリ! ヤダ! シヌ!


 手頃な廃材を拾い上げると、ありったけの勇気を振り絞り、薄目にへっぴり腰、ガタガタブルブルと震える手で──証拠隠滅をはかった。



 危うく吐きそうになったけれど、これで家族の健康は守られる。

笹にぶら下がった短冊にも、家内安全が第一と書いてある。


 «第一とは書いていない»


 よくやった! わたし!



 数種類の吹き出た汗を拭いながら、やりきった満足感とともに、まぁちゃんちへとスキップをしながら向かった。




夏の午後 椀に廃材 そっとのせ


お母さん、お椀さん。ごめんなさい。


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