8 閲覧注意(グロ描写に割と力入れたのでサブタイトル使って警告しようかと思います。ある程度の覚悟を持ってからクリックしてください)
「ごめんなさい、アルフさん。私の...せ...い」
そう言い終えた所で、喉という器官は失われた。
千切れた肉の一部分が飛散して、真っ白い骨が噛み砕かれる大きな音が聞こえて、地竜が腹を満たそうと顔を埋める度に血液の雫が跳びはねる。
地竜の口は大きくて、一口で内蔵を幾つか引っ張って丸呑みできるようだった。
喰われている腹部の上、激痛を味わいながら作られた笑顔を浮かべる頭は、美味しい箇所なのだろうか、取っておいてある。
「なんだろう、なんだろう、これ。俺、どうしたらいいんだろう。どうやったら一番、苦しみながら死ねるのかな。そうだよな、早く死なないと。死ぬことが俺の役割だ。死ぬために、俺はこの世界に産まれたんだ。この世界を生きる人間として、今、自分の使命を遂行するんだ」
アルフは、血の沼に沈むミネルの身体を眺めてから、自分の顔を殴って殴って、殴った。
「くそが...くそが...くそがくそがくそがくそが!なんでお前が死ぬんだよ!死ぬなよ!死ぬな!死ぬなあああああああああ!俺なんかが、お前の命と釣り合いが取れるわけがねえだろ!お前の命を捨ててまで、守るような存在じゃねえだろ!この星から溢れ落ちそうなくらいの、世界の脇役だぞ!一生、何の夢も可能性も与えられない、平々凡々とした荷物持ちだぞ!そうあり続けてきた男だぞ!今まで、自分の意志でパーティを脱することだってできたはずなのに、自分のわがままでお前を無駄死にさせた俺は、今、のうのうと生きているんだぞ!」
アルフは立つこともできず、自分に対する怒りを吐き出しながら、血の広がる地面を殴りながら、涙を撒き散らした。
「ねえ。あれは、ミネルなの?」
頭上から聞こえるエミリーの声。
絶句する彼女を見上げながら、アルフは大きな声を上げて泣き続けた。
「シャイン・バーニング」
淡々と魔法を生み出し、射出する右手。
地竜は捕食を中断しながら岩石を操作し、防御壁を築き上げる。
だが、その防御壁を極度の屈折を繰り返すことで躱した数本の光線は、地竜の肉体を貫き、四肢を抉った。
肉体の機動性を失ってもなお、無数の岩石が宙を舞って降り注ぐ。
しかし、エミリーは両手で光線を放出しながら薙ぎ払い、視界を埋め尽くす岩石の大群を空間ごと葬った。
地竜が魔力を切らしたのか、静寂が訪れた一瞬。
「死になさい」
エミリーの人差し指から一本の真っ白い光の筋が地竜の脳天を通り抜け、鮮血と共に砕け散った。
あの後、その他二人のパーティメンバーもエミリーに追い付き、合流した。
ミネルとラルクスの遺体は、そのまま置き去りにされた。
アルフはその時、気絶しており、当時の記憶も不確かだった。
目覚めるなり、エミリーに連れ出され、そして今に至っている。
「どうして、この暗く恐ろしい迷宮の奥深くで......私の仲間を見殺しにしたの?」
「見殺...し?」
「あなたは目の前で仲間が喰い殺されても平気な顔して、荷物だけ持っていればそれで私たちに貢献したつもりだったの?」
エミリーのその表情は、見たことの無い顔だった。
怒りと憎悪に燃えていた。
「平気...だって?お前には、あの時の俺が平気そうに見えたのか!そんなわけがないだろ!ミネルは大事な友人で!仲間で!俺はそいつのことを守りたくて!けど、できない。やろうという意思を持ったところで、やると決めて実行したところで、理想は理想のままだ。一生、現実になりはしない」
「それが、君の出した結論?」
肯定も否定も、口にする余裕は無く、ただ、腰に携えられていた剣の鞘から瞬時に抜かれた刀身がアルフの上体を通り抜けて、地面に削がれた左腕が落ちて、血飛沫が密室を赤く染める。
「君は産まれた瞬間からずっと無能だった。全てにおいて役に立てない。君はミネルとは逆の立場であるべきだった。だから、今からでも、君を魔物の一口サイズに斬り崩しておかないと」
激痛と血に汚れた記憶と、誰にも祝福されることの無かった一生が、黒く染まった視界の中で終わりを告げる。
これで第一章が終わりました。
ストーリー展開急いで考えないと詰みそうです。
これからも作品をよろしくお願いいたします。